原村の家では床下エアコン暖房の新たな試みとして、床下ではなく一階の倉庫天井を貼らずに暖めることで2階の床を暖めるという応用を行っている。
土地の斜面を生かしてカーポートを一階に設け、その他は倉庫と床下にしているこの基本プランは、建て主さんが考えた。「緑の家」建て主さんはこのように発想が柔軟で素晴らしい方が多い。一方合理的な発想であるが、床下暖房が出来ない空間が半分にもなり快適感が減る。しかし倉庫を擬似的に床下内と見立て少し温度を上げて暖房することで2階の床下暖房としている。実はこの発想も建て主さんである。「倉庫の天井を省けば床下暖房と同じくらいの床温度になるのでは・・・」と打ち合わせ時にご提案頂いた。確かにそのとおりである。
擬似的な床下暖房を含めると2階の床下暖房は2/3をしめ、ちょうど床下暖房の必要がない寝室やクロークがその区画から都合良く外れる。
全体を示すと2階の床下暖房のある部分は上のような構成になる。
さてその床下暖房と疑似床下暖房および床下暖房をしていない部分の実測結果を下の写真で紹介する。
ものの見事にその効果は見て取れる。1度ずつ床温度が変わるのが熱画像からはっきりわかる。意外だったのが床下暖房を行えない床下が外気であっても壁と床の温度が同じ23.8度の床温を維持していること。このあたりは床下にセルロースファイバーを400mmと分厚くいれた効果がでている。
このサーモグラフィーの実測撮影時間は朝8時で、まだ陽が建物に入る前のころ。外気温度は氷点下6度と通常氷点下10度以下は当たり前である長野県原村にしては冷え込みが緩いが、一般地域と思えば参考になるだろう。
そんな原村の家での床下エアコン暖房の実力も見ていこう。まず一番床が暖かったのがユニットバスの床で29度。
ユニットバスで床に断熱材が入っていないのを選んでおり、樹脂一枚の熱貫流率は高いのでこのような結果になる。風呂CFが無くとも床だけはすぐに乾く。
続いて家族の間のタイル床。このタイル床は日中の蓄熱に大変有効であり暖かいが、このような陽が14時間も入らない明け方ではどうだろうか。
スポット1と2がタイル部分温度でそれぞれ24度と22度。木の床部分は23度となりほぼ床と同じ温度になっている。実際上を歩くと逆に暖かい感じがある。温風吹き出しのスリットは24度で温風がでて他の部分より温度が上がっている。
次はこの家で最も温熱環境が厳しく、更に撮影時にはこの部屋の暖房である温水パネルヒーターが灯油切れで運転していなかった部屋。
暖房機が一切無い部屋で床面が20度、壁面が21度、サッシ下部で15度であるからやはり超断熱Ua0.16w/m2kの効果が出ている。暖房機無しの外気氷点下6度で且つ天井・床下を含め5面が外気隔壁になるとても厳しい温熱条件の部屋であるが、20度を維持する。
次ぎにやはり厳しい条件の玄関ホールのタイル床。
玄関のタイルは24度、連続する居室タイルは25度と快適な温度維持する。
理由はこの吹き上げる温風である。建物の最も隅にあたるこの玄関でこの温風が出てくるのが「緑の家」の床下暖房の静圧方式。
さてここまでは通常の床下暖房を主として写真をご紹介したが、その2では初試みの疑似床下暖房の写真を紹介する。