2023年建築学会梗概集からの 論文④ 床下暖房その1

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選抜梗概となる論文。筆者は床下暖房と全館空調の実測では第一人者となる井口先生らである。

特記を除くこのブログの文と図は全てこちらの論文からの抜粋である。

特徴は3年くらいの実測であり、特に地中内に温度センサーを入れて計測しているので、建物は最初からこのような実測するために造られている。その目的であるが・・・

上の通りYUCACOシステムではない一般的な床下暖房の実測なので、ある意味参考になる人も多いだろう。選抜論だけあって内容は盛りだくさんとなる。まず当初から実測する目的があった建物だったようで下の通り複雑にセンサーがある。

クリックして拡大してご覧ください。

図1の通り2階の床下用に階間にもエアコンを設置して2階の床下暖房を積極的に行っている。図1の書き方だけかもしれないが、1階の床下のスラブの床面が周囲の地面より相当下がっているように見える。もしそうならこれは特殊な環境内と言って良く、通常の条件ならわずかな基礎のヒビで床下内に水が浸入する事があるまず行わない計画である。但し図2を見ると通常の基礎のように記載されており、この点はどちらが正しいのか・・・つまり地中内に埋め込まれるように基礎があるときの熱の移動は、通常の基礎とは違うので、図においてGLの位置はデータの条件や特に実務では大変重要である。たぶん図1は概念図でGLは図2の方が正しいのだろう。

条件は4つであり、熱交換換気メーカーさんが加わっているのでSAの位置を変えて(基礎区画も)測定しているのが目あたらしい。

基礎内(床下内)の基礎立ち上がりを追加してそのときの温度変化を取得しているが、このときの重要なファクターの基礎のU値(とスラブと断熱材の仕様)の記載が知りたい。基礎のU値は基礎内温度変化に影響をおよぼし、また持論であるがスラブの配筋も熱流に影響があると思っているので、このスラブの厚さと鉄筋量のなど記載があるとありがたい。鉄筋は35倍ほどコンクリートより熱が移動しやすく、面積と量によっては影響が倍ほど違う。つまりスラブ内にD13が@100未満も入る鉄筋コンクリートになると鉄筋が熱橋となり、条件によるが熱を運ぶ量が@200より相当増える。ところが一般で表記されるλの表はコンクリートが1.6でセメントが1.5とほとんど変わらない。スラブのように横方向に鉄筋が入っていて且つスラブ下が熱を逃がしにくい構成であると、スラブ下地面が断熱材となり鉄筋量が多ければ、スラブ面内ベクトルで熱が移動する(熱橋)と想像しているが、その鉄筋断面が増えれば外周からその影響長さが大きくなる。そんな鉄筋によってλが変わるはずであるが、そのような論文を見たことがないので知っている方がいらっしゃればお教え願いたい。

話は論文に戻るが、まずは最も興味がある地中内温度である。

クリックして拡大してご覧ください。

論文には竣工年月日、助走期間(暖房を始めた年月)の明記がなく2019年9月から暖房を開始とあるので、このあたりで竣工して暖房を24時間行い始めたとする。基礎断熱の床下内とその接している地盤は、上部家屋の影響を受けるが、竣工から数年程度は安定せず特に竣工後一年目の温度が低いと公的マニュアルに記載があるので、この影響が2019年の12月~2020年3月まであるとして図4を見てもよいのか疑問となるが、そのまま受け取るとして・・・

やはり初年度(2019年)の床下及び地面の温度が少し低いように見受けられる。他の因子もあるだろうが、この図だけをみると単純にそのように受け取れる。しかし論文の測定条件では、第三回目サイクルとなるが2022年1月にスラブ中央部の断熱材を撤去したとあるので、その撤去の影響となっている。スラブ上に断熱材があったのは約2年だから、さきのとおり地中内温度変化の推移は数年間は安定しないとのことが正しいなら、断熱材が撤去された次年冬以降で再びどのように変わるかが大事で、このまま数年サイクル後の長期データーに期待したい(因子の整理として)。

また暖房をOFFしたときから2週間後の4月の中旬のbとdの温度巾を見ると(ピンク矢印を加筆させて頂いた)、2022年の4月が最も大きな巾がある。しかしこのスケールでは意味がないかもしれない。日ごと、時間ごとの変化を細かく見る必要がある。論文ではスラブ中央部の断熱材を撤去した後は、aとdの差が大きくなったとある。興味深いデータである。私も以前地中内温度測定スラブ熱流を実測したことがあるが、熱電対ではないので絶対温度の確からしさは自信がなく今回のデータは大変参考になる。

僭越ながらわかりやすいようにこの図だけ私が勝手にピンク線の手を加えさせて頂いた。

紹介の「その2」では床下と室内温度に目を向けたい。・・・選抜論文にふさわしく様々な事が詰め込まれている。

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