シロアリは殆どの方が嫌いな虫だと思うし、出来れば出会いたくないと考える人が大多数だと思う。その嫌われ者の白アリの中でもヤマトシロアリであればまだかわいい虫であり食害も穏やかである。
地下水位400mmという極浅い地域に135年も前からあるこのotomo vie centでは、当初からこの浅い水位だったとは考えにくいが、いずれにせよ裏山からの水脈で随分前からこの浅さになっていると思われる。そう思うのは、周囲は田んぼや畑で有り、その土地の高さはどう見てもこの水位のある高さより更に低い。そのためこの建物真下の浅い水位は、裏山の影響だろうと考えるのが妥当となる。
当然水位が高ければ床下内は湿り、木の腐朽やシロアリ被害が大きくなる。このotomo vie centでも数回床の張り替えを行なった部分の工事跡もある。
そのotomo vie centの主構造は石場建ての軸組だと考えられるのだが、何度かの改修の時に、時代に合わせた改修になっている様で、土台の上に柱がのっている形態も散見される。
この柱元納まりは当然現在のような布基礎があるわけでもなく、石場建てと土台のある地組との中間のような納まりである。当然地面に近く、そうなれば湿気にやられることも多いしそれが原因でシロアリにも食害されるが、被害に遭う樹種は杉と松であり、ケヤキなどの堅木は殆ど無傷だからケヤキのその耐久性に驚く。
その食害にあった杉の土台をカットしてみると食害の多くが辺材のみとなっている。心材までは食害が及ばない。また湿気のあたる下側において食害は集中しており、ヤマトシロアリだからだと思うがこの状態で自然に消滅している。自然とは言っているが、田舎では天敵のクロアリも多くそれらも自然と言える。これがイエシロアリなら全部食べ尽くされていると思うと、北国だからのよさもある。
上の写真のように殆どが辺材のみの加害で、心材はなんとか持ちこたえているため、ある程度の構造的性能の低減はあっても破滅的な性能劣化には至らない。これはこの頃の構造接合部がピンではなく、太い柱と太い梁による半剛性のある接合部であるため。ピン構造なら釘の保持力が食害で殆どなくなり強度を維持できない。古民家で怖いのはやはり瓦の雨漏れによる被害で、こちらは小屋梁でもシロアリの食害跡がある。瓦は素材としてとても優れているが、古の施工方法は釘など使わないので、瓦が雪でズレることは多くありそれに気づかないと雨漏れが起きる。よって定期的に屋根に登り目視によるメンテナンスは欠かせない。瓦を雪や風でズレない様に釘で全数打つ現在の方法は、30年間以上は瓦が動くことはないが、無数の釘が防水層を貫通し、穴の空いた防水層になっているので、その防水層の劣化で雨漏れが始る。これが大体30年から35年で、どちらがよい方法なのかは時が決めるのだろう。それで一般住宅から瓦がなくなることもあり得るのだろう。