2024年建築学会 学術講演梗概集から 3 番外2023年の選抜梗概から 夏型結露 

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昨日、一昨日とここの研究室での内容にハマったといったが、その最もハマった論文がこちらである。よって2023年と昨年の梗概集からであるがご紹介したいと思う。きっとカビ、リノベーションに興味がある人はハマると思う。

私は9年前の2015年から「家の寿命はカビできまる」との仮説を唱えているが、その一つのエビデンスとなるような研究内容である。誤解しないように先に申し上げるが、この論文の対象建物は一般的な建物であり、特別な高気密高断熱ではなく、少し気密性能がよいくらいであるから、なおさら今のストックされている家事情に合致している。

家の結露や高湿問題は夏と冬に発生する。冬の結露問題は戦後から起こっているが、日本では古来から夏の高湿問題は存在するので気候条件による根幹的なことと私は思っている。

まず研究の背景だが・・・

外気の露点が意外と低く、先回の実測をした新潟県ではこれより10%は高く過酷だった。また冷房時間も12時間/日だったのでこれより多い冷房時間で夏型結露が起きやすい条件だった。

ここでも見て取れる通り、従来の外皮(主に外壁と小屋裏など)における夏型結露問題は当ブログで何度も伝えている通りほぼ解決されていた。一方今回のように特別な箇所で見た場合やヒートアイランド現象、さらにエアコンの長時間使用によって夏型結露のリスクは高まっているとのこと。これは私も同じ認識である。特に高気密住宅ではない木造建築物では、間仕切り壁の上下が外気につながっていることは普通にあり、この場所の高湿化や結露はカビ臭の発生原因として危惧している。そこで研究目的は・・・

赤線はこちらで引いたもの。

完全に同意である。非居住空間(間仕切りや一階と二階の間の階間)こそ掃除や意識できない空間であり且つ木造住宅ならではの有機物も構造的に多く、ここにカビが生えたら居住者では対応できない魔のメンテナンス空間である。ただし、目的として私なら夏型結露防止ではなくダンプネス防止といいたい。仮に結露してもカビが生えないまたはカビが生えても居住空間に影響がなければカビも許容しないと、エアコン内部のカビ、木の外壁の表面にある許せる範囲のカビも許容できないことになる。私は仮に結露してもカビが生えなければ問題ではないとの認識である。具体的にいえば窓ガラス面の一時的な結露は他の場所の結露とは違い許せるということ。

で、いつものようにいきなり結論である。

わかっていることだが、気密測定をするような建物以外は外気につながっているような間仕切り空間をもつことが木造住宅として一般的。そのような建物では間仕切り空間などで夏型結露を及ぼす可能性は高い。つまり結露までいかなくとも高湿化によってカビ指数があがり、時間が経過すればカビが爆発的に増えることになる。

また従来建てられてきたような非気密住宅において第三種換気は、夏型結露に対し不利であるとのこと。私は最近全くそのように思う。ここでいう非気密住宅とは気密測定をしないような建物のことで、近年私はそうような建物(築70年以上)に週末宿泊しているが、第三種換気で住んでおらず第二種換気または第一種換気で且つ給気過多の風量設定を意識している。これは外皮で気密維持していないため、この研究のように夏型多湿問題とともに、壁内や階間の空気清浄度を信用していないためである。時間が経過した壁内では、カビやほこりをはじめ虫の死骸や虫の排泄物などが多く混じっているのを数多くの建物解体で知っている。だからその空間の空気を室内に取り込みたくない。そのため屋外空気の給気は強制で室内にとりいれ、室内を正圧にすることで壁内、階間(一階と二階の懐内)の空気を排除している。

次は実験の概要である。

実験条件をみてわかる通り第一種換気と第一種換気過多、そして第三種換気として4パターン。この区分けも実務者として大変うれしい。やはり発表者が大手ハウスメーカー勤務のためだろうか・・・私もここが知りたいので同じ。

この意図もわかる。差圧が間仕切り壁と居住部でどのくらいつくのか・・・。床下エアコン暖房なら5Pa程度だったが、それより桁低い。それも影響が出るのがまとめで伝えられている

図10でわかるとおり、間仕切り壁内などの環境は第一種換気で給気過多のほうが室内空気に近い。つまり室内側を正圧にすれば間仕切り壁内にい屋外湿気が入りにくく、カビ指数が少なくなりカビリスクを低減できる。

現代の住まい方はエアコンを使って長い時間を室内で過ごすことに習慣が変わっている。昔のように通風で暮らす住まいの常識があてはならない。昔は暖房時を考え壁内結露およびエネルギーロスを少なくする意図(室内から屋外に通過する熱をこの壁内(隙間)からはいる空気に熱移動させる)があったが、夏型結露防止からみれば第一種換気でしかも給気過多がよいことになる。つまり高気密住宅でない家で夏季にエアコン冷房を長時間する場合は第三種換気より第一種換気のほうがリスクは少ないとのことになる。

新潟県の平場ではすでに赤いグラフの条件に外気はなっている。結局ほぼ全文を載せたがそれだけ私のとってはタイムリーで面白い結果だった。

最後に・・・現代の住まいには冬季はむろん夏季も気密性がとても大事になる。古い家のリノベーションが最近もてはやされているが、その際に換気は第一種換気で給気過多をお勧めする(いわゆる第二種換気)。私が現在の週末にお邪魔する住まいも第一種換気で換気過多にしているが、階間や壁内の空気が室内に入りにくいので築70年であるがカビ臭がほとんど感じられない。仮に最近の高気密住宅であっても、気密層の屋外側は、30年も経てば拙宅の外壁解体でみたように虫の死骸やそれを苗床にしてカビが生えているかもしれないが、この第一種換気でしかも給気過多なら室内にはその汚染空気も匂いも入ることが少ないのでやはりお勧めである。

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