
この4月から一般の木造建築物の法規制の審査(申請)が厳しくなった。特に構造系の審査がようやく構造まで行政がタッチするようになったため、困る事業所も多いだろう。しかし構造審査は概ね2種類から選択でき、その1つの仕様規定の方はまだまだ甘々で、仕様規定で構造審査をお願いすれば、伏せ図の添付は必要ないという・・・。確かにこれでは構造の審査ではない。一方構造計算となる許容応力度設計や現場検査は逆に厳しくなるだろう。
その話題の前に連休中である1から3日の3日間で事務所内の人数が2人から4人と変化することがあったので、人数に応じて換気が上手に作動しているかの実測データが↑。事務所の換気は「緑の家」で使っている換気システムと同じ機器を使っている。本来なら事務所のような空間は住宅より人数が多めなので、大きい機械を使う事が一般的だが、当事務所の人数は多くないので、家庭用の換気システムで事足りる。いずれもCo2濃度が1000ppm未満におさまっているところから、一応規定を満たしている(複数の規定でオフィス等のCo2濃度は1000ppm以下と定められている)。但し人数に応じて換気量はマニュアルで変化させているが、4人時でもMAXの半分程度の設定位置でOKなため、6人程度までは十分この換気システムで行える。住宅の空気質で特にCO2濃度の規定はないが、私感では1200ppm以下がよいと考えている。
さて本題である。
木造住宅であっても基礎は通常鉄筋コンクリート製である。鉄筋コンクリート施工にも様々なルールがあり、その一つが鉄筋の定着と継手である。ご存じのとおり鉄筋コンクリートの名称のとおり、鉄筋とコンクリートでつくられる基礎だが、鉄筋の施工がこの部材の品質の要となるため、瑕疵担保保険でも必ず現場検査が行われる。建て主さんが聞いたらぎょっとすると思うが実はこの鉄筋の施工ルールにおいて一般的に曖昧な点があると私は感じている。
その最たるところが立ち上がりの主筋の事。主筋はその名のとおり最も大事な鉄筋である。そのためその鉄筋の継箇所と端部処理はとても重要になる。継箇所を我々は継手(つぎて)とよび端部処理を定着(ていちゃく)とよぶ。
継手と定着は当然役割がちがい、継手とは本来一本の連続した鉄筋で行いたいが、施工効率及び運搬上長さが決まっているので、どこかしらで継ぐ必要があり、ビルのような大きな建物は「溶接、カプラー」等で一体化するのが当たり前だが、住宅程度で使うD16程度までは重ねることで一体化とみなす重ね継手となる。一方定着とは一つの部材の末端にある鉄筋端部を他の部材に入れてコンクリートの一体化を図るための措置。鉄筋コンクリート造は一体化することを前提に応力解析されているので、この定着も大事な施工要素。この定着と継手は違う事なのだが、住宅の基礎施工では混同して施工されていること多い。
まず下に公につかわれている(社)日本建設連合会の鉄筋コンクリートの共通仕様書からの抜粋をしめす。
◇最初に継手と定着の規定から


とあるが、この仕様書では梁や柱の主筋の継手は重ね継手を認めていない。また認められた継手方法でも応力が最小となる箇所での継手としている。つまり連続した梁にあっては一般的にスパンの1/4の部分。
◇次に木造住宅の基礎に使われる仕様書では重ね継手で主筋の施工を行うことを否定された文献を見たことがなく、使ってもよいことになると理解している。下に一般的に使われる住宅基礎の鉄筋コンクリート仕様の継手、定着を示す。

建て主さんには上の図があっても何のことはさっぱりわからないだろうが、簡単にいうと通常鉄筋はSD295、Fcは21であるから継手は40dとなる。この時dは鉄筋の径なのでd13の時の継手は520mm。「緑の家」ではFcを24N/mm2で計算している。

通常定着のほうが継手より短い長さであるが、特別な部分の定着は継手と同じL1を採用するとあるので、主筋の定着は40dで継手と定着の長さが同じくなる。この特別な定着部分になるのが立ちあがりの主筋である。つまり基礎の主筋は定着も継手もD13の鉄筋は40d=520mm、D16なら640mmとなる。
ここでようやく曖昧な部分と私が思っているのが下の部分。

この矢印部分は立ち上がりの部分で梁とみなせる箇所。よって直行する梁がぶつかる部分だから本来の鉄筋コンクリート造なら柱が来る箇所であるが、住宅の基礎には柱に相当する部分がないので壁式鉄筋コンクリートとみなして考えると、先述の公に使われる仕様書での鉄筋の接合では・・・

とあり、シングル配筋時の壁の交点は上のいずれかになる。左はL1だから継手とみなしてその長さを規定しており、真ん中は直行する壁への定着とみなしてL2の少し短い長さになる。右は当然継手でなく定着とみなして短い継手である。ここで左図だけ継手で行っているが、ここに図に注釈があるとおり、同じピッチの時とある。これは梁と梁が真っすぐに連続した時には(下図)、まず鉄筋が真っすぐ連続して通すことを原則としているとおり、直角に梁が接合しても鉄筋は通してコンクリ―ト構造の一体化を図ることから当然だと思われる。

つまり住宅の立ち上がりを梁から見立てても直行していても主筋径が同じで本数が一緒なら連続して通すことが当たりまえで、もし切れるなら柱部分がないのでは梁上で重ね継手L1を取ればよいという解釈が成り立つと思う。また柱部分がないので壁としてとらえて継手、定着両方が可能とも解釈できる。もしそう解釈する事ができなければT字部分(下図)の連続させた主筋ができなくなる。

さて話を住宅基礎写真に当てはめると

この部分は定着としてとらえている施工現場が多数であり、時折継手としてとらえている現場もある。当然継手なら

でよいし、定着なら

でよい。でも特別継手定着だからL1=L2と同じくなり、住宅の基礎では定着と継手がごっちゃになっていることが多く面倒なことは考えず施工が可能。ここまでは良いのだが、L1なら継手という考えでもよいはずだが、なぜか両側から定着する考えだけが良しとされるのが私から見ると?となる。元々梁同士が連続しているところは一本の通し筋が最もよく、それができないので鉄筋を継ぐことが許されるならL1の下の納まりでOKだと解釈している。

もし建築関係者がご覧になっているなら皆様の見解をコメントとして聞かせて頂きたい。できればその時にはその根拠(ソース source)も載せてほしい。
さてこのように構造に絡む部分はたった一つの事だけで、とても専門的なことを要求する。これを私たち建築士は工事監理と称して検査に行くわけであり、この難しさは断熱気密という性能規定の施工や検査より大変に気を遣う事項である。