住宅こそS造の勧め その2「緑の家/S」 長寿命

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1997年に締結された気候変動防止の京都議定書から急速に大型建築物の木造化が進んでいる。近年は従来S造であった中規模倉庫までも木造化が目立つようになった今、なぜ「緑の家」はそれに逆行するように住宅にS造を勧めるのか疑問に持つ人も多いと思う。その2ではその根本的な背景、そしてS造のメリットその3「世代を超える自由さ=負の遺産でなくなる」について説明したい。

現在行政ではカーボンニュートラル(地球温暖化気候変動防止)の実現を目指し10年間で150兆円(官民)を投じる政策を行っている。この施策としてカーボンニュートラルに有利な木造建築化政策が推し進められている。
そもそもS造と木造では新築時においてどのようなCo2排出量であるのかというと、住宅建築での資料は見つけられなかったので、下の店舗建築で簡単におさらいすると・・・

・・・とコンクリートと鉄骨工事で大きなCO2排出量となる。一方実際の耐用年数は様々な要因で比較はできないが、税務上の法定耐用年数としては、木造が22年で、S造で34年となる。おおよそ1.5倍である。単純に考えれば、仮に新築工事にかかるCo2が2倍であってもその寿命が1.5倍なら、Co2排出総量は木造に近づく。さらに建築が取り壊される時に鉄骨工事の材料ほぼすべてが廃棄することなくリサイクルして再びS(スチール)として再利用可能であるが、木造の木部においてはその大部分が焼却、埋め立てされるので(但し熱として再利用されることはある)更にその差はなくなる。特に私がS造のスチールに惹かれるのは、屋根で使ったガルバニューム材の廃棄の時に実感した。このようによくよく考えると特別木造がカーボンニュートラルで優れているわけでない事が巷でも少しづつ気づき始めている↓。

あるウエブ記事の見出し。木造ビルは特に環境保全にもならないとある。私も強くそう思う。

鉄(スチール)の優位性で一番わかりやすいのは屋根。現代の屋根材は大きく分けると瓦(コロニアル含む)と金属と石油製品(シングル)になる。この中でリサイクルが実質有効なのは、金属(ガルバニューム)しかない。他の素材は埋めたて以外コストが合わない。金属屋根だけ産廃業者さんが買い取ってくれる。つまり絶対的に価値がある素材が金属。このことは100年以上変わっていない。これを物理学的にはエントロピーが低い素材として価値があるということになる。

スチール(鉄)は太古の昔に地中に埋まって散らばって酸化してしまったものに、大量のエネルギーを与えエントロピーの低い状態に還元する。だから価値があるのであり、木材も同様に空気中に散らばっているCo2を太陽のエネルギーで還元してエントロピーの低い状態をつくる。一方木材は数億年前から地球上に存在する素材であるため、それらを食べる(分解する)虫やバクテリアが存在し、生物によるエントロピーの増大がおこる。一方S(酸化していない鉄塊)は人が作り出すまでは自然界に存在せず、人がSを還元できるようになってからまだ数千年であるため、Sは自然サイクルに組み込まれず、ほぼ化学反応によってのみエントロピーは増大する。つまりSの化学反応による劣化さえ抑え込めば、耐久性は高い素材である(生物劣化はない)。Sよりさらにより大きいエネルギーを与えエントロピーが低い素材としてアルミニュームがあり、廃棄時には当然Sより高値で売れる。つまり人の世界では還元するコストが常にその材の価値基準となるので、Sが鉄骨工事でたくさんのCo2を出しても、人の世界では価値は高いと評価されリサイクルが可能なのである。一方木材は燃焼処分が一般的で木としてはもう利用しない。どちらがリサイクルとして有効なのかといえば当然Sだろう。Co2をある程度の時間固定化するといわれる木であるが、その建築寿命が短ければ何の意味もない。

そこで「その①」でも申し上げたとおり、築50年経過したS造の建物もでも、酸化さえしていなければ主要構造部材は当時と変わりなく価値がありそのまま使えるという事になる。特に耐震設計の成熟した現在では、今後さらなる大きな耐震設計の進化は必要ないのでより対応年数が高くなる。一方木造の構造材の最大の欠点である生物劣化においては、アメリカカンザイシロアリのように範囲を広げつつあり益々リスクが増大し今後減ることはあっても対応年数が増えることはない。これは長期優良住宅であっても同様で、イエシロアリ、アメリカカンザイシロアリの活動範囲が広がっている実情から見ても同じ事が言える。ここまで前置きで説明するとお勧めする理由の③がわかりやすい。

3.世代を超え自由に変化可能なS造

1.長寿命の条件は設備更新の簡便さ

私が住宅の設計に携わって40年でいえる事。それは住宅の長寿命化は物理的だけの長寿命では難しいという事。長寿命の住宅建築を考えた場合、それは柱が太いく耐震性が高いとか、温熱性能が高いことが大事ではない。長寿命住宅建築の条件は、その家に想いを持ってもらえて且つ維持管理更新が気軽にできることに尽きる。今から20年ほど前の私の主張は、家に「想いを持って貰えること」が唯一の長寿命の条件だと思っていたが、維持管理更新で特に「更新=リノベ、リフォーム」が簡単にできないと、次世代の人にとっては価値が低くなり、いくら想いがあっても結局は取り交わすことになると数年前に気づいたのである。

さて長寿命とはいったいどのくらいを考えているか?それは概ね50年以上で80年程度である。この期間で決して長寿命とは思えない方もいるだろう。この50年という年数は多くの建て主さんがその家を建てた時が30才とすると、既に80歳になっている。もしお子さんがいらっしゃれば当然20歳のお孫さんもいる年数。今までの日本の伝統どおりお子さんがその家に引き続き住んでいこうと考えた時、新たな世帯主としてその家について真剣に考え建て替えか、他の場所での新築か、そのまま何もしないかの結論をだす。現在はまだ性能の低い時代に建てられた一戸建て住宅が多いので、親が亡くなるまでそのままとなる例が周りに多い。親が無くなったあと、縁あってそこに住む条件(通勤等)にしてもその際にネックとなるのが設備類の更新と慣習と技術の変容なのである。特に設備が顕著で給排水や電灯などのほとんどの設備類が壁や天井内に設置されている。一度天井や壁を全て剥がさなければ更新は難しい。確かに「緑の家」長期優良住宅認定では給水給湯をさや管等を使って給水給湯管の更新を壁を剥がさないようにできる仕様になっているが、電灯線は全てNG。また新建材の建具、クロスによる内装仕上げも概ね30年から40年仕様となっており、それ以上使うことが一般的に考えられていない。必ず何らかのリフォームがいるが、次世代の人はそれが簡単ではないことに直面しあきらめ、解体にいたる。

2.長寿命建物は次世代の決定である

近年の30年は過去の60年に匹敵するほどその変容のスピードは速いといわれる。30年前はスマホが人々の情報の中心となると想像していた人はいないし、TVがこれほどシンプルになりただのモニター的な要素になると想像した人も少ないだろう。30年前のTVといえば、液晶TVが浸透してきたが、録画装置はVHSというカセットタイプ。当然地上波がほぼすべてであったが、今は録画装置を必要とせず全てネットのアーカイブという人が多いだろう。30年前はTVとその周囲に付属装置が必要なプランを考えたが、今は壁掛けモニター(TV)だけでOK。すごくシンプルになった。そのうちプロジェクターがもっと進化して30年後には空中に映すことが可能になるかもしれない。となると映像を映す壁もいらなくなるかも。そのくらい文化が変容することを考えた時に、今の価値でつくった内装や設備で子供たちが暮らしたいと思うだろうか。やはりインテリアや設備を一新したいと思うはず。そこでS造のメリットがいかされる。S造で2階建てで重量鉄骨とすると、外壁有スケルトンリフォームが簡単に計画できる。スケルトンリフォームとは主要構造部である外壁と屋根と床と階段を残してあとは全て撤去するリフォーム。当然このほか柱と梁は残る。この時に重量鉄骨なら内部は全て空っぽにできる。この点が木造と違うことろ。そしてこの時のポイントが、外皮である窓を含む外壁と屋根は残しても新たなリフォームで問題になることが大変少ないのである。これは重量鉄骨がラーメン構造を基本としており、内部間仕切り、外部開口部の位置が自由に更新できるからである。つまり簡単に次世代の人がその時代に合った文化基準に内部を更新できる。

3.スケルトンリフォームが簡単なS造は負の遺産になりにくい

建物の最も根幹となる大事な性能は

「雨風を防ぎ安全であること」

に尽きる。

この「雨風を防ぎ」が外壁と屋根に相当し、「安全」であることが耐震劣化の少ないS造の柱と梁と床なのである。快適性の設備をはじめ断熱材や気密材はこの雨風を防ぐ外皮と安全と別物の性能である。この点で「緑の家/S造」では「雨風を防ぎ安全であること」と快適性を全く別に考えることができ、リフォーム時に更新や性能アップする事が簡単にできる。そしてこのスケルトンリフォーム状態でも制約の多い確認申請を提出する必要がない。これは大変大きなメリット。一度プランをほぼすべてリセット可能※。特に2階床は鉄筋コンクリートにも匹敵するデッキプレートの上コンクリート製なので、新たな2階のプランにほぼ自由に対処できる。これなら30年後の生活の変容にも対処できる。つまりもし運悪く仮に血縁でその建物を維持しなくとも、次の新たなオーナーが自由に改変できる。もし用途が同じなら確認申請も原則必要ない・・・つまり将来に負の遺産になりにくい構造となり良いことづくめなのである。
※原則階段のみ固定位置となる。

S造の2階の床の下地は原則鉄筋コンクリートと思えばよい。自由に間取りをリフォームできる。

4.自身の将来のライフプランにも簡単に合わせられ、簡単な貸事務所も可能。

現在の超高断熱高気密性能もスケルトンリフォームなら自由自在に変えることができる。仮に30歳で家を建て、当時は子供2人で計4人暮らしの建物のため床面積が110m2(33坪)必要だったが、子供も独立して66m2(20坪)あればよいと考えた時に、減リフォームを簡単に行える気軽さがS造にはある。例えば2階と1階をつなぐ階段を界壁で仕切り、外部に2階専用の階段(10m2以内)を新たに外部に設ける事で2階は別の世帯が住める長屋または貸事務所へと簡単に変える事ができる。これが木造の木床であればNG。S造だから簡単にでき、この改変に原則確認申請はいらない(建物の延床面性が200m2以下(60坪)の時)。この手軽さがあるので建物有効利用が可能である。つまり2階建てS造は小さなビル形式になると考えればよい。確認申請が原則不必要な改変ができることは、大変メリットがあり余計な資金も労力も必要ない。1階と2階を分けるリフォームなら住みながらで可能。特に階段を塞ぐ工事を先行で行えば日中の工事音だけ我慢すればよい。将来直ぐに借り手が見つかるような街中ならこのメリットは更に大きい。

5.入り子構造なら負の遺産にならず断熱性能や間仕切りの可変ができる。

先ず入り子構造についてはこちらで説明している。

20代で家造りをする方もいらっしゃるだろう。その時は小さくつくって、将来必要となった時に大きくすることも可能。これも2と同様であるS造ならでは簡易さが魅力。特にDIYでも可能なところがよい。

またS造でも平屋で200m2以内の建物なら、最初に大きく倉庫のような建物つくる。その中に居住部を小さくつくり10年ほど住む。空いているところは当初はガレージでもよいだろうが(内装制限に注意する)、当初は倉庫使いが最もコストが抑えられる。

その一例を下に上げるが、例えば一例で入り子タイプのS造平屋をつくる。これが原型0(ゼロ)とする。

外皮と構造骨格だけをつくる。昔はこれでトイレとキッチンがあればとりあえず住めた。戦後から内風呂が必須となり最低外皮と設備は完成。ここから快適設備を計画。

重量鉄骨でつくるので、間仕切りはななく外壁も自由に開口をあけられる。

この中に断熱空間をつくってスタートとなる。この新築時は建て主さんの年齢が30歳で当初2人で住む場合の最小居住部分を確保するしたのがAとなる。

入り子の特徴を生かして土間を広く取り趣味やアウトドアー的な生活ができる。断熱空間はフリー室と居住部との2つに分けては最小で光熱費も安価なる。

10年後、建て主さんの年齢が40歳でお子さんが2人生まれる予定で計4人で住む場合の最小居住部分を確保するしたのがB。個室1は非暖房空間を通っていくことになるが、子供ゆえ問題はないだろう。この時は親のスペースは最小となるが、外で働く時間が増え最も家にいない時期。

新築から25年後、子供は独立していなくなり再び間仕切りをとって、里帰り時の宿泊スペースにするつもりで間仕切りをとりAに戻す。よって普段は断熱空間から切り離して光熱費や掃除を最小にするCプラン。

新築後25年から発生する設備の更新や補修、又は断熱補強等もできるのがこの入り子構造の良いところ。また新築後35年では建て主さんは65才になっているので、多くの人がリタイヤ。その時にフリー室があれば趣味の部屋や寝室が別々が良いとのご要望も満たせる。そして人生が終盤が過ぎ次世代に引き渡すが、その際お子様たちは既に別の所で住居を構えているので、建物自体を引き継ぐ必要はない。壊して誰かに貸すか、孫が住めるように新たに完全リフォームするようにS造の骨格(屋根、外壁)を残し全て空っぽにできる。それがDで、つまり当初の原型0に戻す。人生の終焉となる新築後50年経つと、自分は80歳で子供も50歳、孫も30歳。既に他の人生を歩む子供が家に帰ってくることは低い確率となり、空き家は負の遺産となるが入れ子構造のS造なら全て内装を取り去ってまた一番最初のスケルトン状態に戻して維持管理を簡単にする。
最近のSGLの折板屋根なら50年くらい張り替える必要もなく、仮に修繕するにも重ね貼りで確認申請もいらない(現法では)。木造であれば内部に柱が残り空っぽにもできずまた生物劣化も気にしなければならないが、S造なら生物劣化は皆無で、錆の原因となる雨漏れだけに注意をすれば、劣化は最小となる。

尚参考としてフリー室がない最小断熱空間であるEも下に置く。

このように孫が自分の時代の文化にあった内装や設備を自由に選べ、且つ構造にかかる無駄な価格を最小に抑えられる。通常は40年後の屋根の重ね貼りが最小の修繕工事となるため、S造の主体工事費がいらない。つまり負債ではなく資産となる建物になる可能性が木造よりとても高い。参考にA~Eまでの参考コストを近々ご案内したいと思う。

6.入り子S造なら断熱性のアップと気密性の維持が簡単

入り子構造にすると50年後でも断熱材の更新、気密性の維持がとても簡単。

S造は入り子構造にするとその良さが維持管理、更新などで発揮されると4では書いた。その他に断熱性のアップと気密性の維持も簡単に可能。これについてもその3でお伝えしたい。

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