2012年建築学会論文発表から その2

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2012年建築学会論文発表から

先日のその1に続きその2です。

さて長い間、太平洋高気圧によって南から湿った空気に覆われていた新潟県ですが、今週の末(金曜日)からこの暖かい湿った空気から解放され始めます。予報によると今週末から明け方の気温は22度までに下がり、戸を全開で寝ている人は寝冷えに注意が必要です。気の早い「緑の家」にお住まいの方は、24時間空調から昼間だけの空調にされるかたもいます。

私は明け方の外気温が20度以下が3日間続けば、全館24時間空調を止める時期になったかな?と判断しますからもう少し先です。

さてこの20度という温度はとても大事で、通常のエアコンが弱で運転しているときの吹き出し温度は約20度で湿度約100%です。つまり明け方、朝露があり(つまり湿度100%)気温が20度なら、町全体が弱冷房の空気に包まれている事になります。また20度まで温度が下がると言う事は、太平洋高気圧からシベリア高気圧に勢力が変わった事をしめすので、日中の気温は30度まで上がる事もありますが、湿度がないので意外と汗はかきません。ですので「緑の家」は真夏(7月上旬~8月下旬)は通風を期待しないで、24時間全館冷房をお勧めし、明け方の外気温20度以下になったときに通風に切り替える事をお勧めしております。

このような事を先に説明しそれを頭に置きながらこの論文を見てください。

著者(発表者)は高気密高断熱の立役者鎌田研究室。

Q1sの断熱、遮熱性能が「緑の家」のSSプランに相当します。冷房負荷が断熱性Q1sと遮熱性μが低いほど小さく、冷房エネルギーが少なくてよい事を表しています。

そしてこの図4・・・が衝撃的!(専門家にはごく普通のこと)
通風有りと通風なしの場合の冷房エネルギーをシミュレーションしてみると、7月の上旬から9月の下旬まで通風をしないほうが「潜熱負荷」が少なくなっております。これは2年前のこのブログで申し上げておりますが、潜熱負荷はエアコンが取り去るの半分相当の「熱」に相当します。顕熱負荷は通風有りの方がどの時期であっても負荷が少なくなりますから、この両方を合わせると7月の中旬から8月の下旬までは確実に通風無しで冷房した方が負荷が少なくなることを示しております。図5はまさにそれを示した表で、前橋(新潟県の都市は無く比較的に近い前橋とした)でも7月中旬~9月中旬まで、外気の総熱量であるエンタルピが、快適温湿度のエンタルピ60kJ/KGを超えていることを示しております。新潟県は海による影響で更に潜熱が高いのでもっと大きな期間でこのようになるのでは無いでしょうか?

この論文のまとめには

「中間期(4月~6月、10月~11月)には通風が有効」とあって今まで自然派住宅論者の夏は通風をとはかなり違った印象で、私は大変好感が持てます。

また「潜熱負荷が通風を行うと逆に増える期間が冷房期間とする」には賛成です。これでようやく正しい通風が行われると思います(エアコンがある時代=現在)。

ただこの論文は査読論文ではないので計算間違い・勘違い、条件不適切あることが考えられますので、各個人で一読しご判断ください。

手前味噌ですが、論文が後追っかけになるので設計実務者としてはうれしく、また楽しいです。また評価ツールを公開して頂ける鎌田研究室には感謝と敬意を表します。

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