「緑の家」では耐震性※がまず始めにありきで次に耐久性、温熱環境、デザイン(仕上げ材含む)の順番になります。決してデザインや温熱環境(超高断熱)が最優先ではありません。
そして上の中に「耐火性」や「類焼性」などが入っておりません。なぜか・・・。
※・・・この耐震性は積雪1.0~2.5mで耐震等級2以上の個別構造計算による確認の事。感覚や経験で耐震性が高いという評価では無い。
実は「緑の家」では耐火性や類焼性は特に法律以上の事を考えておりません。よって事もあろうに殆ど家で採用されている通気工法が類焼性に弱いとは聞いた事もなかったのでこの論文は少し衝撃的でした。
つまりご紹介する論文は・・・
普通に通気工法の建物を造ると、この通気層に炎(高熱)が入って小屋裏に燃え広がる可能性があり、その実験結果が載っている論文です。
結論の表から紹介します。
巷でスタンダートな高断熱壁構成
充填+付加外断熱(ボード状)。そもそもこのマイナーな壁構成でよく実験してくれたと思う。
「緑の家」はこの表の「実験No11」に該当し、この構成では類焼を74分耐える事になります。一方巷で多いGW充填断熱工法では「実験1~2」に該当し、類焼を59分耐える事ができます。よく板状断熱材を使った外断熱、外付加断熱はその板状の断熱材が熱に弱いため安全性に難があると言われますが、この実験結果では逆の結果になっている事に注目です。なぜGWより燃えやすいフェノールフォームの方がよかったかと言えば、
「イ 「外張断熱」について、外張断熱材として使用した
フェノールフォームが火源の火熱により膨張し通気
層を塞いだため、通気層内の延焼を抑制し、類焼要
因発生時間が長くなったと考察した。」
とまとめにあります。
高断熱支持者に多い、「板状断熱材(フェノールフォーム)が火災時の燃焼ガスが危険だ」という、そもそもPB等の防火材に囲まれた壁内部の断熱性が燃えるまで避難しない考え方は、その前提が間違っていると思います。どうして恐怖をあおり屁理屈をとおすのかそこがわかりませんが話を論文に戻して・・・
この論文のように火災に対する安全性は様々な角度から調査されており、今回通気層がその防火性能を弱めるとは初めて知りました。
ですが・・・
やはり現時点では通気工法(通気層)を止めるつもりはありません。確かに火災には少し弱い面があると思いますが、火災になったら早めの避難が王道で、火災報知器やセンサーが発達した今、それらによって早期避難が期待できるのでそれでよいかと思います。どうしても木造は火災対策に限界が有り、対策をすればするほど、木が表面から遠ざかり、不燃材に囲まれた家になります。火災は早期避難、保険による復旧が一番だと思います。そうで無ければ「緑の家」が薦めている木の外壁なんてもう町から消えてなくなります。それを皆さんが望むなら仕方ないですが、私は早期避難で確実に安全性が担保できれば家が燃えても仕方ないと割り切ります。そもそも火災でなくなる方の8割は煙に巻かれる窒息死で、焼死ではありません。つまり外部からの類焼では無い原因が殆どです。ただ弱者(避難が出来ない人)だけは建物が耐火構造でないと安全ではないと言えます。このように様々なケースがある家の類焼性は賛否両論あり議論になるところです。
論文は長いのでこちらにリンクは貼りますので興味がある人は全文をお読み頂き評価してください。
http://www.tfd.metro.tokyo.jp/hp-gijyutuka/shyohou2/50/50-2.pdf
http://www.tfd.metro.tokyo.jp/hp-gijyutuka/shyohou2/50/50-3.pdf