個別3条申請の木の外壁の家
「緑の家」は木の外壁がとても多いです。そして近年(平成21年以降)の瑕疵担保保証の設計施工基準において、外壁のシーリング※の扱いが明確になったので以前のブログで紹介したとおり、開口部のシーリングを完全に止めた25年以降の「緑の家」から個別3条の申請を設計図書に書き込んでおります。※シーリングとは ・・・
まず個別3条申請は何か?
住宅建築に実質的に義務づけられている瑕疵担保保証の中に、原則守るべき設計方法があり、その方法から逸脱した設計・施工で瑕疵担保の保険適用を受ける為の申請です。例えば土壁塗りの昔ながらの家は、原則この個別3条を取得しなければなりません。
土壁塗りの家は、その外壁仕上げが土と木で覆われる事が多いので設計基準に該当しないことが殆どです。その設計基準とは何か・・・。
これが国で定めた設計基準(木の外壁も準用)。青印アンダーラインでは、サッシ周囲と外壁はシーリングしなければならないと記されております。
所が、そのシーリング材を販売する工業会発行の「シーリング防水の保証と補償範囲の考え方」施工マニュアルには、
シーリング材工業会発行の「シーリング防水の保証と補償範囲の考え方」から抜粋 そもそもワーキングジョイントの表がないのでノンワーキングの表としている。
素材の対象に木はありません。つまり木はシーリング対象物と想定していないということになります。
なぜ想定していないか?・・・
あまり古すぎる例であはあるが、多くの木はこのような特性がある。
木は水分による伸び縮みが大きい事、木の樹種、部位によってその現象も違うことからシーリングでは10年施工維持出来る事が難しいからです。まあ冷静に考えればわかりますが、昔ながらの家(サイディングが普及する40年以上前)では、木の外壁を貼るときにシーリングなんて物は使いませんし、使おうとも思っておりません。そもそも安価なよいシーリングもありませんでしたがそれでも家は建築できました。
よって昔の家は豪雨・暴風の時には雨漏れすることが当たり前で、今と違い豪雨・暴風の雨漏れは仕方無いと考えておりました。しかし今はそんな事では瑕疵担保法は守れないので、木の外壁の家でも二次防水層を設け数十年間の雨漏れ対策を行っております。
さてここで二次防水という単語出てきました。二次防水があれば当然一次防水があります。その2つを説明します。
一次防水とは・・・水の建物内侵入を防ぐ最初の防波堤部分。また同時に太陽光等の化学的負担や台風等の物理的負担を担う。
外壁の場合は、屋根の軒の出、外壁およびサッシ類とその取り合いを含むシーリングで造る膜を一次防水と呼びます。
二次防水とは・・・一次防水では防ぐ事ができなかった水や現象に対する防御。ここでは化学的防御や物理的防御は負担しない事が多い。
外壁の場合は通気工法による通気層、透湿防水層による防水紙とその取り合い(サッシツバの防水テープ)。
の事です。通常この2つがセットで機能すると防水性が長期間確実に機能します。
開口部に全く防水性が期待できない格子戸でも室内に水の侵入が無いのは屋根の軒の出のおかげ。
さて・・・
屋根の軒の出が一次防止の中に入るのか・・・との意見もありますが、シーリングなどがない60年以上前は、屋根の軒の出を長くすることで、大抵の雨が外壁にかかる事を防いでおりました。そこをしっかり受け止めれば、屋根の軒の出は壁の一次防水に確実にはいります。この軒の出がデザイン上とれない場合は、2次防水をより確実に行う事が重要でしょう。
2014年竣工の木の外壁の家。深い軒の出と庇が特徴(個別3条申請)
木の外壁は魅力的ですが、同時に様々な配慮が必要だという事は否定できません。つまりシーリングが効果的な一次防水になりにくいので二次防水などでその点を補うことが必要で、且つ更にそこに軒の出がない場合は、特に配慮が必要ということになります。