ウッドサッシ(断熱木製サッシ)の劣化により気密性が完全に破壊された。
矢印パッキンが機能していない。
先週講師として「住まいと環境 東北フォーラム」の勉強会に出席してきました。
その時に使ったPDFを参考に少し超高断熱住宅の弱点を何回かに分けてお話しして参ります。
相勉強会で説明しているところ・・・。
この「住まいと環境 東北フォーラム」は25周年を迎える地域密着型の有志の集まりですが、率いていらっしゃるのは現建築学会会長の東北大学の吉野先生です。よって講師としては大変緊張しました・・・もうドキドキでしたが何時ものようにしか出来なかったので、話し始めたら緊張はどこ吹く風・・・しっかり話してきました。ただしこれから説明するその時の内容はオーブルデザインの文責で、一切東北フォーラムとは関連ありません。
1991年に超高気密住宅としてR2000は世の中に新聞などで紹介された。
最初の話は、
今から28年前に建築された超高気密住宅であるR2000の23年後の気密性です。
結論から申し上げると・・・
気密測定できないほどの気密性の悪化が見られました。
原因は・・・ウッドサッシの劣化です。
主にウッドサッシのパッキンがボロボロになったのです(冒頭の写真)。
室内圧力を減らす気密測定をすると内側に大きく膨らむウッドサッシの覆い。
仕方無く、窓に気密シートをはり密閉してもう一度測ると今度は1.3cm2/m2を計測しました。つまりウッドサッシ以外の部分は、この10年に震度5、5強に見舞われたにもかかわらず殆ど劣化は無かったのです。
実は私もウッドサッシには痛い目にあっております。18年前に設計したA邸のウッドサッシが8年目に腐っており、この時にはすでにサッシメーカーと施工会社共に廃業しており、対処に大変苦労しております(設計者は製品自体には実質責任がないが選択責任のため後処理をおこなった)。
赤い矢印部分の黒い色が腐ったウッドサッシフレーム。
どのサッシにもあるガラスを抑えるビートが歪んで水が浸入。
直接の原因はサッシのパッキンの不具合ですが、もしかしたら庇が窓上にあれば8年で腐る事が無かったかもと思うと残念でなりません。ですので今はウッドサッシは必ず庇を設けるようにしております。
屋根の軒の出が120cmもあるのに条件が悪ければウッドサッシは腐る。
ウッドサッシ(木製サッシ)は欧州でシュアーが30%もあり、特に庇などついている事もありません。ではなぜこんなに早く新潟では腐ってしまったのでしょう。
木が腐るのは腐朽菌に犯されたから。その腐朽菌は気温20度で活発化する。
実は新潟県は木の腐朽菌活動が活発な20度以上の温度を夏季中維持出来る環境だからです。北海道や欧州の殆どはこの外気の平均気温が20度に届かなく、木の腐朽菌活動が穏やかなので、多少木に水分が多く含まれる環境でも腐り難いです。が、新潟の夏は亜熱帯気候ですから木は環境が悪くなれば一気に腐ります。ですので・・・昔よく流行した普通の木で造ったウッドデッキは無くなったのです。
ホントの無くなった直接の原因は、専門家である設計者が新潟では木が腐ると体験したから薦めなくなったのですが・・・。
例えば専門家が今でもまだ「腐らないから杉でデッキを作りましょう」と強く勧めていれば、まだウッドデッキは造られ続けます。つまり大事な事はその専門家が「正しく材料や地域気候」を理解しているかどうかです。
専門家の言動はとても大事です。ですから私の仕事の誇りは・・・
ブログやHPの過去を削除しない事です。
専門家である自分で決めたこと、薦めたことは一定の責任がある・・・と考えております。
コメント
ぴか様
コメントありがとうございます。
>東京で展開しようとしたのは、㈱藤和という会社です。
それは大変失礼いたしました。
修正したいと思います。
>10年以上経過した時点でも腐朽には至っていませんでした。
おっしゃるとおりで、
2棟が腐朽したから他も腐朽するとは思っておりません。気候の他、方位、周囲の環境、そしてこの木製サッシの構造(アルミクラッド)や施工、加工精度等が絡み合って腐朽すると思っております。そこでどこまで安全率を上げるかが設計者の判断だと思います。で・・・まず気候条件がその入り口でしょうか。
R2000住宅を、東京で展開しようとしたのは、㈱藤和という会社です。89年まで、その会社に勤務していましたが、現在はその会社はありません。20以上前では、高断熱・高気密について、首都圏では需要がなかったのでしょう。私は郡山近郊で、自宅に木製サッシを使用しましたが、10年以上経過した時点でも腐朽には至っていませんでした。やはり、新潟に比べて、平均気温が20度を超える期間は約半分程度のようです。