押入れには布団がつきもの。この布団や衣類が高性能の断熱材となる。
布団をいれている押し入れ・・・。
どこの家でも見る光景・・・
ここが床下の次にカビ発生となる場所です。
定説の北側ほどその可能性が高くなります。
ですがどうして押入れがかびるか深く考えている家の設計者は大変稀です。
なぜ押入れがカビやすいかを考えると床下のこともはっきりとわかります。
下の図は典型的な夏季(梅雨)の環境です(実測から数値)。
雨が降っているような外気が26度でRH(相対湿度)が85%の時に、リビングではまだRH(相対湿度)70%であっても、押入れはすでにRH(相対湿度)が90%近くになっております。
なぜかは今までの1から4をお読み頂いた方にはもうお分かりですね。
基礎断熱の場合は、床に断熱材がないのでリビング温度よりも床下の温度の影響を受けます。これはリビング側の温度は分厚い布団=高性能断熱材になり、床下が低い温度であればその温度に強く影響を受けるのです。
しかしこれだけなら実はあまり問題になりません。押入れにはもっと厄介な問題があります。それは吸放湿材としてこの布団や木材が機能するからです。
「えっ・・・吸放湿がだめなの?」
その通りです。良いところも多いですが、悪いところもあるのが吸放湿材です。
吸放湿材は空気中の湿気の多い時に、その空気から湿気をガスのまま吸着します。逆に空気中の湿気がなくなると、吸着していた湿気をガスのまま放出する・・・すごい素材です。
しかしもっと細かく見ると、湿気の吸着するときにはあまり問題にならないのですが、放出するときにその素材の表面付近には高湿の場所が吸放湿材がないところより長くできてしまいます。湿気はガスなので拡散は早いのですが、それでも数時間という長い時間がかかります。しかも外気温がピークの時に普通では逆になるはずのRH(相対湿度)がピークになります。そのため4でお見せしたグラフになるのです。これではカビが生えやすいわけです。わかりますか?温度とRH(相対湿度)が同時に上がるというカビにとって最も都合のよい環境になるのが吸放湿材で囲まれた部位の特徴なのです。ですので吸保湿材は怖いのです。
下の吸放湿の模式図 を見ていただければ、吸放湿する材の周囲は他の部分より湿度があがり実際湿気量もおおくなるイメージが湧くと思います。
実際は分子レベルの話なのでこの図の布団のイメージは間違いである。
「緑の家」が吸放湿材を積極的に使わない理由が実はここにあります。
吸放湿材とカビは表裏一体で、最強の吸放湿材のデシカ(ダイキンさんの除加湿器)の素子は防カビ剤で完璧に守られており、この防カビ剤効力がなくなるとカビが生えるといわれております。これはデシカだけでなくほとんど吸放湿材はそうなります。
「えっでも昔の土壁や杉などは吸放湿材でつかわれているよ」
と思われた方・・・よい想像力です。
土壁の表面は何でできていますか?土壁のほとんどは漆喰で塗られており、漆喰は強アルカリ性でカビの発芽や増殖を防いでおります。これはコンクリートと同じですね。
杉は材のもつ防カビ剤がある期間は強力にカビを防ぎますが、ある一線を越えるRH(相対湿度)90%以上が続くとやはりカビは急に生えます。
下は事務所の今年乾燥させ中のミカンで、ヒバの木の上において失敗した例です。
ミカンから常時放出され続ける湿気で机の木がかびだらけ・・・。ミカンが吸放湿材になったのですね。
上のグラフは「緑の家」以外の基礎断熱M邸です。一方下のグラフは「緑の家」でも特に湿度管理に重要ポイントをおいた家のRH(相対湿度)の変化です。
これならカビとは完全に無縁の世界で、なんとRH(相対湿度)40%台とまるでデシカをつかったようなRH(相対湿度)です。
特殊なエアコン稼働状況とはいえこの時期に普通のエアコンだけでこのRH(相対湿度)とは見事の一言。
あまりにも説明することが多くて、その4でお約束した・・・
「この押し入れのカビ防止は昔からある方法がとられており、それによってカビ害を防止しておりました。これはその⑤で説明します。」
はその6に続きます。
しかしとにかく新潟県の環境では夏季(梅雨時)の通風はカビの発生を多くするということが理論的にわかったのではないでしょうか。
「緑の家」は事務所設立から19年間、通風を薦めたことがありません。これは当HPを見ていただければわかります。30年以上も暮らす住宅で大事なことは、今のことでなく過去からお伝えしていることが一貫しているかということです。