なぜ新潟県では夏期通風をしないのか 実測編2

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外気のRHは60%~99%まで幅広く変移する。但し概ね2/3の期間でカビの最適生育環境になる。

その1では梅雨時でもほとんど時間でリビングの方が外気より湿気が多いことを説明しました。この2は露点温度にかえてRH(相対湿度)でお話しします。

RH(相対湿度)は天気予報で単に「湿度」と呼ばれております。
上のグラフはM邸周囲の外気のRHの変化を示しております。

予想通りRHは高いところを維持しますが時折急に下がって波のように上下しております。ピンク色はカビが胞子から発芽できる環境で、この環境を72時間維持すると発芽急激に起こります。つまりカビの増殖準備が整ったということです。外気ではその累積時間が1/3程度で72時間維持している部分はありません。カビ生育環境であるRH80%以上となると、累積時間は全体の2/3を占めるので、一度発芽すれば増殖はたやすい環境であるといえます。
このように考えるとRH90%が72時間以上維持可能な、有機物上にはカビが生えますが、有機物でも乾きやすい所はカビが生えにくいことがわかります。

カビはRH80%が一ヶ月続くと発芽

まずいつものおさらいです。

文科省のカビ対策マニュアルに記載されているカビの発芽環境です。発芽とは空気中に漂っている無数のカビ胞子(目に見えない大きさ)が着地して、その胞子からどのくらいで菌糸(目に見えるのでこれをカビと呼ぶ)を延ばすかまで時間で、菌糸がでたカビは湿度が多少低くても(RH65%以上)ゆっくり増殖します。ですので発芽させないことがカビ防止になります。さてグラフのAwはRH/100ですからAw0.8=RH80%で、RH80%の環境が一ヶ月続くと発芽します(防かび物質がないとき)。さらにRH85%以上なら8日で発芽・・・通風が好きな人でもここまでは同意できますね。

基礎断熱の床下はRH80%が1ヶ月以上続く

高断熱を作る建設会社さんで基礎断熱工法が多くなった本州地域ですが、以前から基礎断熱工法は諸刃の剣と私は言っております。

上のグラフはM邸の基礎断熱工法で通風を主体とした家の外気とリビングそして床下内のRHの比較です。オレンジ色の○で囲んだ線が基礎断熱内の床下のRHです。

見事でしょう・・・。RHが常に90%以上あります。測定ポイントはスラブ(コンクリート床上)30mmですからもう少し上なら90%前後になるでしょう。スラブは強アルカリなのでカビはこの環境でも生えにくいですが、スラブ上に虫や木くずがあればそこにはカビが生える環境です。

M邸の基礎断熱床下内風景。床の高さから「緑の家」ではない事がわかる。矢印部分に虫の死骸あり(但し足だけになっている)

スラブ上30mm付近の温湿度を計測。隣にスラブ上に何か置いた時のカビの痕が残っていた。

このように通風主体のM邸床下はスラブ30mm上でRH90%以上が容易に3日以上続き、発芽環境としては最適な場所です。これは実測ですから同意されると思います。

床下はリビングより湿気がないがRHが90%以上

床下の露点温度は外気やリビングの変化と相関が低い。つまり通風にはほぼ影響を受けないことになる。

その1でご紹介したグラフをもう一度見てみましょう。

グラフは露点温度を表示しておりますが、露点温度=空気中の湿気の量なので露点温度が高いと言うことは湿気が多いと言うことです。
リビングが床下内より湿気量が多い時間は2/3を超えます。つまり床下は本来リビングより乾いていると言うことです。ではなぜ床下内が湿っぽい(RHが高い)のか?それは床下内がリビングに比べ常に数度低い温度だからです。

床下内はリビングより常時4℃以上低い

基礎断熱床下内温度は外気やリビングの影響をほぼ受けない。

基礎断熱の床下内はずいぶん前から外気や家の居住部に比べ数度低いことが数々の論文や研究、(当ブログでも)でわかっております。そこでM邸でも再び実測しました。すると・・・
従来から言われているとおり、直上のリビングに比べ4から5℃低い所で安定して推移しております。これは地中内の平均温度の影響を受けるためです。

さて最初のまとめです。

 

通風では床下内は乾かない(高RH維持)

もう一度今回の事実関係を整理してみます。

・梅雨時はリビングより外気のほうが湿気が少ないことが多い
・従って通風はリビングの湿度下げるには有効
・リビングより床下内のほうが湿気が少ないことが多い。
・しかし、温度が低いのでRHは常に90%を超える。
・よってカビ発育には最適な環境となる。

通風をどんなに行っても半密閉される床下内は、地中の温度の影響を受け温度が低いので床下内のRHを下げることができません。基礎断熱床下内はカビが発芽し、生育するには最適な環境となるわけです。

よく・・・
「換気経路の一部を床下に入れているからこの状況よりはいいよ」

と聞きますが、

床下内空気の露点温度がリビングより低い(低絶対湿度)時間が2/3を占める。

この実測値で明らかなように、床下内の空気は元々リビングの空気より湿気が無く乾いております。よって床下内に換気のRA(リターンエアー)口があると、リビングの湿気が多い空気を呼び込む事で更に湿気が多くなります。

また生の外気を床下に入れても、床下内の空気より湿気が多い時が半分以上あるのでこれも同様です。つまり床下入る空気に何らかの人為的加工(除湿)された空気を入れない限り全て悪い方向になります。
少しよくなるのは床下の温度が若干上がることと湿気流入との条件によりわずかにRHが改善される時があることです。また生の空気でなくとも換気は全熱方式でも顕熱方式でもあまり状況に変化がないことは上のグラフを見れば技術者なら直ぐにわかります。

どうでしょうか?ここまで同意できますか。

ではその3に続きます。

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コメント

  1. 水野 より:

    浅間様

    おはようございます。

    >基礎断熱の床下内はずいぶん前から外気や家の居住部に比べ数度低いことが数々の論文や研究、(当ブログでも)でわかっております。

    基礎内断熱と外断熱の違いはあるのでしょうか•••拙宅は基礎外断熱(スラブ下にスタイロフォームAT100mmで50mm超えています(汗))で室温とほぼ同じ25℃です。。。湿度計が正確ではないかもしれませんが、築1年という環境で、1階リビングダイニングより少し相対湿度が高い印象です。。。

    • Asama より:

      えーーっと・・・

      条件によって違いはあるのが普通です。25℃も正しいと思います。ただそれも条件でかわります。床下のどの場所で測っているのか?中央、高さ、等々。自分の家を取り巻く環境・・・。
      下の論文ではUBの下あたりがRH(相対湿度)が高いことが報告されています。

      https://arbre-d.sakura.ne.jp/blog/2017/08/03/post-12522/

      『「緑の家」と自分の家はちがうな~。なぜだろう?』で良いと思います。そこからその原因をまず自分で推測してみてください。多分水野様の家は情報のない私にはわかりません。

      • 水野 より:

        浅間様

        いつも御返信ありがとうございます。

        拙宅の水蒸気のinとoutを考えると、

        inは、換気扇と隙間からの流入にプラスして人体、洗濯物等からの供給があり、

        outは、換気扇とエアコンによる除湿

        が思い付きます。。。

        エアコンの機種選定と設置場所と運用で水蒸気量をある程度コントロール可能とは思っています。。。

        総2階の拙宅には1階LDKに松尾和也氏流(?)半分床下床置エアコン(ダイキンS40RVRV)があり、2階の二部屋にコロナの2.2kwのエアコンがあります。

        夜は2階の2.2kw1台だけを稼働させている為、冷気は1階に落ちていき、1階と2階の空気の循環がいくらかある印象です。朝の絶対湿度は低い順に①2階②1階③床下で冷房除湿を行っているエアコンからの距離次第といった感じで、この朝の絶対湿度の印象から床下の相対湿度が1階より高いという思い込みがあったと思います。あとはコンクリートからの水蒸気の供給も床下にはまだ多少あるでしょうか???

        起床後は、1階ダイニングの半分床下エアコンを稼働させています。半分床下エアコンの除湿は床下より1階の除湿をしている印象です。。。

        浅間様が、
        最新エアコンの除湿を知る・・・その2
        https://arbre-d.sakura.ne.jp/blog/2016/09/29/post-7756/
        で、「吹き出し温度が19度」、「所詮19度・・・ですからこれが続けば寒いでしょうね。」というのを体感した事はあります。半分床下エアコンから足元に冷たい気流を感じた事が今夏ありました。。。