家庭汎用エアコンの特性が変わったのか・・・

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2年前から再熱除湿を止めるエアコンメーカーが増えてきております。これは先回2016年のお勧めのエアコンでご案内したとおりです。そして「緑の家」にお住まいの皆様から最近このような話を多く聞くようになりました。

「主冷房用エアコンを冷房運転にすると湿度が下がりにくい・・・」と

梅雨時に除湿運転で使って頂いたエアコンですが、梅雨明けで盛夏になると顕熱負荷が増えるので、エアコンの部分負荷率が上がり冷媒温度が下がることでSHFが下がり湿度もしっかり取り始めます。ですがこれは今までのエアコン(3~10年前の東芝製品等)で、最新のエアコン(日立、2年前のパナ、三菱)では思うように湿度が下がりません。ですので盛夏になっても除湿運転をする事になります。確かにここ数年は温度だけでなくRH(相対湿度)にも関心が高くなっており低湿度高温冷房が話題になりますが、その意識変化を考慮しても実際冷房時に湿度が高くなる傾向は有りそうです。

これを私なりに分析すると、

「近年APFを上げる手段が殆どないので顕熱比SHFを上げた」

と言うことではないでしょうか。

図は赤林ラボの論文から抜粋

画期的な冷凍サイクルの改善が10年間ないなかこの2年でもAPFが0.5も上がっております。どうやってAPFを0.5も上げているのか・・・?

何時も申し上げるとおりAPFは計算で求められる「見かけの効率」なので、その計算方法において一番効果が上がるようにエアコンのCOP設定すればAPFは高くなります。

APFとは実際の通年の消費エネルギー効率ではなく、あくまでもある条件で計算した仮定効率で、その計算方法は定格COPや中間COP等の数点のCOPを式にいれAPFを計算で算出するものです。ですのでその数点以外の効率部分は、APFと一切関係がない・・・つまりその他の効率や内容がどうであろうともAPFにはには関与しないので好き勝手にできるのです。そこを頭に入れながら次の事お聞きください。

下の図は2013年頃実測した事務所のエアコンです。消費電力の出力別にどのくらいの吹き出し温度であるか?またもし吹き出し温度を冷媒温度だと安全側に仮定したときその時の吸い込み温度の露点温度との差から除湿できる冷媒温度範囲かどうかプロットした図です。

低出力時でも高出力時でも冷媒の温度があまり変わりない制御だといえる(2011年製エアコン)。この頃の東芝製はAPFは良くなかったがよく除湿する。

消費電力が小さい=出力が下がっても除湿のできる冷媒温度であり且つ出力が大きい時と同じ冷媒温度まで下げていることがわかります。このようなエアコンは冷房出力が低い状態(部分負荷率が小)でもしっかり除湿できております。このときのAPFは今より0.5以上低かったですね。

そして最近のエアコンは先日の論文からみると少々違って見えます。それが下図右側です。

グレー部分は暖房時なので必要無いが、見出しや誤解がないように載せた。ピンクの楕円のなかに注目してほしい。P社もME社も除湿し難い冷房運転時がある。冷房出力が3から2に下がっても風量は一定。つまり冷媒温度が上がったと思われる(もしくは断続運転による湿気戻りも)。

この図は先日ご紹介した論文の抜粋ですが・・・
冷房中のグラフ右中のピンクの楕円に注目ください。風量自動なので、メーカーレシピ通りの運転モードです。その中で冷房定格の1/3~1/2の弱運転時では、P社もME社も風量が出力に関わらず同じです。普通に考えると冷房出力と風量は比例するほうが自然ですが、なぜか風量が出力変化に関わらず固定されております。風量が多くなっても低い冷房出力を得るためには、冷媒温度を上げる必要があります。つまり意識的に顕熱比(SHF)を上げているのです。ところが冷房定格の1/2から2/3までの間は、風量が比例して増えます。つまり冷媒温度が固定で風量を増やしているように見えます。更に2/3以上では風量が増えずに出力が増えている・・・つまり顕熱比が下がる傾向で除湿量が増えるます。この理由でずいぶん前から冷房運転は一台で負荷集中(定格運転付近)が良いと申し上げております。
今回の問題は1/2以下部分の制御で、この範囲で運転すると除湿量が少なくなりますし、2/3の部分でも除湿量は多くありません。

今までの実測で新潟の夏の外気は、昼夜の絶対湿度(露点温度)の変化が少なく、一方気温の変化は大変大きいことがわかっております。また室内の湿気発生量も終日の変化は以外と少なく、逆に顕熱の変化は昼間が夜間に比べ大変大きくなります。ですのでこのピンク部分の冷房定格の1/2から1までの制御は理にかなっております(除湿量は変化しないが)。

しかし1/2以下の出力になると風量が固定で冷媒温度が高くなる傾向がみられると感じました。この1/2以下の運転範囲に入ると顕熱比SHFが上がり除湿効果がなくなります。

これが最近のエアコンモードの特徴ならば、これはもしかしたら無理矢理APFを上げるために、夏期の夜間12時間に発現しやすい部分負荷時で冷媒温度を下げない=湿気が取りきれないと考えられます。だから除湿運転にしないと、思ったよりRH(相対湿度)が上がるのでは・・・と考えることができます。超高断熱住宅で日射遮蔽の完璧な「緑の家」では、カビや快適性に影響するRH(相対湿度)の意識が高いので一般の家より工夫が必要です。

今回は同じメーカーの検証ではありません。エアコンは機種、メーカーによって様々な特性がありますから上のことは一機種だけの事だともいえますが、APFを無理矢理高くするため冷房時でも除湿できないという10年以上前のエアコン特性に戻りつつあるのでしょうか。

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