超高断熱住宅には必須な熱交換型換気システム・・・。その中でも全熱交換タイプが旬と取りざたされておりますが、本当にそうでしょうか?
今年の2月にご紹介した表です。
なぜCFを設置しないと役たたずな第一種全熱交換換気の復習をします。
換気方法の種類
熱交換には全熱型と顕熱型
コアな読者さんにはもう説明する必要は無いと思いますが、熱交換には全熱交換型と潜熱交換型換気扇があります。
顕熱交換タイプとは、空気温度だけの熱交換を行います。「乾燥空気」の成分はほぼ3種類のガスで出来ています。窒素>酸素>アルゴンです。このガスの持っている熱だけを交換します。ここで「乾燥空気」としたのがみそで、私達は子供の頃この乾燥空気の成分だけを学びます。しかし地上部分の大気にはアルゴンより大きな成分を占める「水のガス」が含まれております。つまり私達の廻りにある空気の成分は窒素>酸素>水のガス>アルゴンになるのです。
その水ガスは大気中の体積比であれだけ騒がれているCO2(二酸化炭素)の約100倍にもなるといったらよくわかるでしょう。
よって常に水のガスを意識するとこれからの説明がわかりやすくなります。
全熱交換タイプの換気は空気の熱だけでなくなんと・・・水ガスの交換までするのです。
空気中の湿気は水のガス
水のガスまで交換する全熱交換型換気扇は顕熱型換気扇と全く別物です。熱は熱伝導率の高い銅やアルミを使うとスムーズに移動する事が可能であることはご存じのとおりです。凄く簡単な仕組みです。しかし水のガスは所謂分子レベルの話になりとても表現不可能な話になります。それでもその模式図を下に示すと・・・
なります。
よって分子レベルの穴が必要な全熱交換型の換気システムはとてもデリケートであり、そのため他のガスが混じりやすいトイレと浴室の換気を通常はできません。最近はガスバリヤー熱交換素子でトイレの排気を全熱交換型換気できるメーカー品もありますが、ガスは分子と考えられ、その水分子の直径3オングストロームがとおる穴があいていると単純に考えれば、最小粒子の水素が1オングストロームですから如何に小さなの隙間かがわかります。その隙間を長時間維持して水分子だけ通過させその他は遮断が本当に出来ているか・・・大事をとればトイレとお風呂の換気は全熱交換しないほうが長い目で見たときに「無難」です。
そこで全熱交換型換気扇はトイレやお風呂の排気を取り扱わないことが多いのです。
お風呂やトイレ、厨房の換気の割合
簡単に申しあげるとCFを使わない全熱交換型換気システムは意味がないといえますね。これなら顕熱にして、夏の除湿を頑張れば良いのかな・・・と考えます。温暖多湿地にはCFは大変効果があります。
なぜこんな結果が普通に出回らないかというと・・・
キッチンの調理排気や、建物の自体の漏気換気、お風呂などを無視して考え、熱交換換気システムの都合の良い条件しか考えないからです。もっと厳密には出入りの玄関戸開閉も必要かも・・・。
下は上の表の算出条件です。
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青字が熱交換されない空気。但し漏気量は温度差で変わる。
「緑の家」 (トイレ1箇所 都度換気)
30坪で4人家族の時の熱交換換気扇 20m3/h×4箇所×24h=1920m3/日
トイレ 86m3/h※×1.5h/日(1日5分が18回)=130m3/日
お風呂 0m3/日 CFを使用
キッチン 300m3/h×1h/日(朝20分、夜40分)=300m3/日
漏気(C値0.4cm2/m2で温度差20度の家)600m3/日
合計 2950m3/日
全体に対する熱交換換気量は1920/2950=0.65→65%
つまりお風呂やトイレ、厨房の換気は割合は35%
※常時換気しないため短時間大風量換気量とする。
一般的な全熱交換システムの家 (トイレ1箇所常時換気として)
30坪で4人家族の時の熱交換換気扇 20m3/h×3箇所×24h=1440m3/日
トイレ 45m3/h×24h/日=1080m3/日 熱交換の代わり1個分
お風呂 75m3/h×24h=1800(1200)m3/日 UBメーカー純正を使用
キッチン 300m3/h×1h/日(朝20分、夜40分)=300m3/日
漏気(C値0.4cm2/m2で温度差20度の家)600m3/日
合計 5220(4620)m3/日 総換気量が多いのは個室の換気量を大きく減らす事ができないので
全体に対する熱交換換気量は1440/5220(4620)=0.28(0.31)→28%(31%)
つまりお風呂やトイレ、厨房のの換気割合は72(69)%
( )は16時間で留めた場合
一般的な全熱交換システムの家 (トイレ1箇所都度換気として)
30坪で4人家族の時の熱交換換気扇 20m3/h×4箇所×24h=1920m3/日
トイレ 86m3/h※×1.5h/日(1日5分が18回)=130m3/日
お風呂 75m3/h×24h=1800(1200)m3/日 UBメーカー純正を使用
キッチン 300m3/h×1h/日(朝20分、夜40分)=300m3/日
漏気(C値0.4cm2/m2で温度差20度の家)600m3/日
合計 4750(4150)m3/日
全体に対する熱交換換気量は1920/4750(4150)=0.40(0.46)→40%(46%)
つまりお風呂やトイレ、厨房の換気は60(54)%
( )は16時間で留めた場合 ※常時換気しないため短時間大風量換気量とする。
一般的な顕熱交換システムの家 (トイレ1箇所として)
30坪で4人家族の時の熱交換換気扇 20m3/h×3箇所×24h=1440m3/日
トイレ 45m3/h×24h/日=1080m3/日
お風呂 75m3/h※×24h=1800m3/日
キッチン 300m3/h×1h/日(朝20分、夜40分)=300m3/日
漏気(C値0.4cm2/m2で温度差20度の家)600m3/日
合計 4320m3/日 総換気量が多いのは個室の換気量を大きく減らす事ができないので
全体に対する熱交換換気量は4320/5220=0.82→82%
つまりお風呂やトイレ、厨房の換気割合は18%
※本来もっと少ない事も多いが上と条件を同じくした。
結局何が良いのか?
「緑の家」は夏の快適性(低湿度が可能な空調)を考え、2/3がCF設置+全熱交換型換気扇による換気を標準としております。このCF(循環ファン)設置とトイレは都度換気を考えないと、どんなに高性能の全熱型換気システムも絵に描いた餅のような換気になります。
結論は・・・高温多湿地では全熱交換型(CF含む)を、そうで無い地域は顕熱、全熱どちらでもOKだと考えております。
コメント
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batap様
コメントありがとうございます。
>この記事を私のブログで紹介させてもらってもいいですか?
はい、特に問題はありません。良い家が出来る事を願っております。
Asama様
ありがとうございます!
ちなみにこのCFはどんなものを選んだらよいのでしょうか?1.25坪の浴室なので風量が少し大きめのものがいいのでしょうか?
それと、私の場合スティーベルのダクトレス換気扇(24時間換気:風量15~50m3/h)を脱衣場に設置する予定なのですが、CFを運転すると24時間換気とケンカすることはありませんか?
よろしくお願いいたします。
浅間です。
ピンバックを頂き感謝します。内容を読ませて頂きました。
CFに対して夏の事を勘違いされている感じです。お風呂場のCFは実は夏の室内RH(相対湿度)を下げる為に考えられた事が主です。こちらの湿り空気線図以降をお読み頂ければ理屈がわかると思います。↓
https://arbre-d.sakura.ne.jp/main/column/1-2/
但し無論夏期に24時間家中空調された住宅に設置する事が前提です。夏期通風生活住宅ではメリットはありません。
>ちなみにこのCFはどんなものを選んだらよいのでしょうか?1.25坪の浴室なので風量が少し大きめのものがいいのでしょうか?
一般のUB排気換気扇(75M3/h)の倍で相当大きめ(風量で150M3/h以上は欲しい)を選んでください。
>CFを運転すると24時間換気とケンカすることはありませんか?
CFは換気扇では無く固定された扇風機のようなものですから換気扇との併用は問題ありません。
回答ありがとうございます。
なるほど!通常の排気換気をすると排気した以上に湿気の高い空気をとりこんでしまうということですかね?だから浴室の湿気なんてたいしたことはない。解釈あってますかね?
大変勉強になります。これからも読ませて頂きます。ありがとうございました。
>だから浴室の湿気なんてたいしたことはない。
というより、浴室の湿気はその桁が2つ少なくなります(問題にならないくらい)。床壁面を濡らした液体の水は気化熱(と潜熱)、凝縮熱(と顕熱)で差し引き0ですから、単純に浴室内の空気9M3にある湿気と24時間75M3/h=1800M3の外気の比較です。
因みに・・・「緑の家」でも排気用換気扇は残してあります。これは主に、冬期CFと全熱交換型換気扇を使うとRH(相対湿度)が50%を簡単に超えるので、その湿度下げる為の装置となります。冬期に湿度が上がりすぎて困るのが(贅沢な悩み)CFのデメリットです。
初めまして!今回の記事は目から鱗でした!なので、今建築中の新居の浴室にもCFを採用しようと思います!
この記事を私のブログで紹介させてもらってもいいですか?