驚き!スラブ中央部から逃げる熱を熱流計で実測。その4 まとめ

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

そろそろまとめます。学術的な事でなく、実務的なことでのまとめです。

条件は・・・

新潟県の砂丘地及び水はけがよく、建物下に水みちがない土地において

  1. 基礎断熱のスラブ中央部から熱流量は、スラブ下断熱材無しでも極わずか。
  2. 基礎内側断熱では、コンクリートが床下の熱を屋外へ運ぶ最大の要因となる。よって床下暖房を行ったスラブ外周部は、スラブ下ではない新たな断熱対策も視野にいれるべき。

です。

まとめ1の件は「スラブ中央部から逃げる熱・・・シリーズの1から3」を見て頂ければ同意されるはずです。問題はまとめ2の件です。

実測の結果、「緑の家」のAグレードであっても基礎外周部から外部に向かう熱流量は少し大きいなと感じました。1月の平均値でたぶん30w/m2hですから単純に外周長×巾1mとすると、1000w/hと、窓に次ぐ外壁並みの大きな熱損失です。仮に0.5mの巾でも500w/hですから目をつむる訳にはいきません。出来る対策と言えば・・・やはり外側断熱の強化です。

地中への熱流量は、日本海側特有の降雨(雪)に大きく左右されない事がわかりました。よって対策は熱をストロー状に運ぶ基礎外周面です。特に気温が下がる地域では対策が必要と感じましたので、既に着工している伊達の家(対策済み)、現在実施設計がほぼ終了した山形県の「上山の家」も↓のような対策をします。

5632

私は何時も運がよい。ほしいと思った情報が欲しいときに出てくる。今回の実測と解析は直ぐに活かされる。緑色→が露出部分。
これなら熱橋対策も楽で素直な納まり。状況に応じて内外部スカートを追加する。配管貫通部は「緑の家」ならではの処理をするが今は未公開。

こちらが1月の最低外気温が新潟市より約5から10℃低い「緑の家」のAグレード基礎です。シンプルに美しくまとまりました。美しいのは理にかなった設計である証拠です。

87210

湿潤環境ではスタイロフォームが一番性能が高く実績もある。吸水性が一番少ない断熱材。

基礎外周に断熱材を厚くさせたいのですが、実績の高いスタイロATの厚さが50mmなので50mmを外側に打込み、内部も今までどおり断熱材を設置しますが、120mmから60mmに。

767532

13年前に行った古民家移築の設計で、基礎外周が石で覆われた家の白アリ対策の図面。過去HPにあったが引越しがうまくいかなかったようで、当サーバーにあったファイルをプリントスクリーンした。なるべく早い時期に新サーバーにアップしたい。赤丸が露出部。

上図であるとおり白アリ対策は10年前に考案した外部基礎一部露出です。図では基礎上部50mmをコンクリート打ち放し面を造る事で蟻道を直ぐに確認出来るようにします。今までの内断熱よりここまで白アリが上がってくる確率は高くなりますが、外気温が低い土地は白アリの活動も低い事からペイオフと考えております。

さて・・・

今回の上山の家の基礎を標準かするのかと問われると、

新潟県の平野部では行いません。

なぜか?

「緑の家」の基礎内側断熱の理由を振り返ると、

  1. シロアリの予防と
  2. 基礎仕上げ感触とコスト

ですね。

シロアリの予防は上の方法があり、古民家移築時や今回の土間キッチンの家で実践しております。よっては今のところ2の理由が大きいです。

2を説明すると

基礎はほぼ100%コンクリートで造られます。よってはそこに何かがぶつかっても壊れることがないとほとんどの人が直感的に感じます。ところが基礎外断熱工法になると、柔らかい断熱材が基礎を覆うので蹴っ飛ばすと割れます。また長時間経過するとヒビも簡単に入ります。割れないほど頑強な仕上げにすると今度はコストが嵩みます。

これがゆるせるならば基礎外側断熱も新潟県において視野に入れていきますが、何しろあの美しい基礎打ち放しによる意匠性が・・・残念ですが見られなくなります。

さて・・・

一般的な条件で基礎スラブ中央下(家の中央真下の地面)に断熱材が要らないことははっきりしましたが、外周部はホントに必要なのか・・・。

基礎外周部の熱流は、

A.基礎コンクリート立ち上がりから空気中へ

B.基礎地面下から地中へ

の2つがあります。

基礎外周の熱流と外気の温度変化から、空気中へ逃げる熱と同様に影響を与えているのが地面の水分です。

アメダスの天候を使って測定した熱流の変化と比べると・・・

雨や雪が降ったあと遅れて熱流が少し増えている感じがあります。

土は湿っていなければ優秀な断熱材ですが、液体の水が地面に含まれると熱貫流率が大きくなります。これは以前から地面の熱貫流量の式でもありましたから業界ではわかっていることです。

ではなぜ「緑の家」はその熱が逃げる場所(外周部際500mm程度のスラブ下)にあえて断熱材を入れないかというと、もう何度もお話しておりますが、

生物劣化が怖いから・・・

たかが劣化、されど劣化です。

もしあなたが基礎のスラブ下にコンクリートより圧倒的に柔な断熱材が挟まっているところを常に見ることができたなら、どう思いますか?

たぶんほとんどの人が、

違和感がある

とのことでしょう。

人は見えなくなると途端に危機感がなくなります。

あの柔らかい断熱材、木をぶつけただけでも壊れ凹むあの断熱材が、家の真下の一番大事な基礎を支えているなんてことが常に目に入ってくると初めて恐怖を感じるはずです。

私は逆にそれが常に目に見えていればまだ安心ですが、地面に入ったまま30年もその断熱材が無事であるという感性は持ち合わせておりません。

ですので断熱材を敷かないことで多少のエネルギーが地面から大地に奪われても(年間暖房費5000円アップでも)仕方ないことと考えます。特に外周部は家の不動沈下として一番大きな影響ある部分ですから、ここの地盤はとーっても大事にしたいです。もし新潟県で断熱材を入れるなら生物劣化で空洞になっても大きな影響の起こりにくい50~60㎜までで、それ以上の時は2重スラブにしてその真ん中に断熱材を入れる計画にしたいと思っております。これがこのシリーズの結論であり、「緑の家」の考え方・・・つまり家の安全性がまず一番というまとめです。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする


コメント

  1. 新潟G3男 より:

    ありがとうございます‼️
    そうなのですね。
    安心しました。
    白蟻予防はこれまでの記事でも勉強させて頂きました!
    カビが生えるような熱橋というのは具体的に解説されている記事はありますでしょうか?

    • Asama より:

      熱橋でのカビ事例が当事務所にはないのでそのブログはありません。カビのことはカテゴリーの「カビ 通風」でカビの発生原因を見ればわかると思います。

  2. 新潟G3男 より:

    玄関土間断熱についてご教授下さい!
    外張り50㎜パフォームガード
    内側立ち上がり100㎜ミラフォームラムダ
    内側土間上50㎜ミラフォームラムダ
    という仕様で施工しました。
    本来は土間上も100㎜の予定でしたが50㎜になりました。

    ここでお聞きしたいのですが、100㎜が50㎜になった事で、体感できる程の温度差は玄関土間の地面の隅っこ等に出るものでしょうか?
    外周部からの熱の逃げが大きいとの事でしたので、このL字の部分の厚さは大事なのでは?と思って不安です。

    是非ともご教示くださいませ。
    どうぞよろしくお願い致します。

    • Asama より:

      その程度なら一般的に体感でわかることはありません。そもそも玄関に長時間いることもないので窓の断熱性の低さと比較すると、そこが気になることはまずありません。しかしながら大事なことは、カビが生えるような熱橋を造らない事、白アリ予防等なので、これは材料の組み合わせだけではわかりかねます。