床下エアコン暖房の熱の伝わり方を推測する。

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アフターメンテナンス中の建具屋さん。冬の乾燥気味で変形した建具の調整。既製品の建具でなく手作りの建具だからこそ、直すこともできる。

今日、熱流量測定中の「緑の家」でその電池交換に伺った時に丁度建具屋さんもいらっしゃっておりました。

その道具と姿があまりにも職人美だったので思わず写真を撮らせて頂きました。

持参してきた道具も職人さんそのもの・・・。今時大工さんは電動道具しか持っていないので、カンナや鑿、罫引きなんてお目にかかることはありません。また敷物が泣かせます。普通はブルーシートや毛布が多い中・・・この敷物・・・。確かにこのほうが使い勝手がよいのです。これ欲しいなーと思いますが既に手に入る物ではありません。

さて本題です。

昨年から普及に勢いのある床下エアコン暖房・・・。

超高断熱の家なら床下にエアコンの風を吹き込むだけで2階を除く家の殆どを厳寒期にも24℃くらいに維持できます。また床下エアコン暖房を行うと1階床面が24℃から27℃に暖められます。そこで床下暖房時、家の熱の移動はどのように行われているか考えた事がありますか?殆どの人はそんなことを考える前に、やってみたら暖かかったのでそれでよし・・・でしょう。それではオーブルデザインらしくないので、今回床下部分につけた熱流計でその熱移動経路を推測します。

熱流計とは・・・

有る物体を通過する熱ベクトルを測る器機です。ベクトルとは量とその向きで、つまり熱流計をせっちした面(物体)がどの向きに熱がどれだけ流れているかがわかります。これを上図の緑色部分に設置します。

エアコンは床下内に温風を吹き出すので、床下エアコン暖房が1階空間の室温に影響を及ぼすためには上図のA(空気による熱の運搬)とB(床を伝わってくる熱が床面から放出される)の2つの経路になると思われます。この時Bは床面だけでなく下部が塞がれていない間仕切り壁の半分も含むとします。

2月の熱流計のグラフは下の通りで、

絶対値が正しく、また設置も正しければ平均熱流量が2.3w/m2。

平均熱量は床下から1階方向へ2.3w/m2となりました。但し熱流計を設置した場所は床温が最も低いと思われる部屋なので2.3w/m2→3w/m2で計算します(正確な測定は難しいとのご指摘有り)。

1階の床面積が72m2で内壁(半分)が36m2ですからBの合計熱量は324W。

・・・少ないです。あっ天井面と2階の床面もつながっているので多少影響があるはず・・・。

とうことで1階の天井と2階の床面の熱量を先ほどの単位熱量の2/3として計算すると270w

Bの合計が594wになりました。

さてここで計算による比較です(今まではこのような計算が頼りだった)。

1階の床合板+木の厚さが43mmで木の熱貫流率で計算。

床下の温度が32℃で1階の室温が24℃で差が8度。この時の伝わる熱量は15w/m2。

うーーn 実測3wと計算では15w。何が間違っているのか。

確かに床43mmはコアではなく、ヒノキ15mmと合板28mmの間には空気層が3mmくらい僅かにあります。それを差し引いても5倍もちがう理由になるのか?

測定器機の精度問題か・・・。

何はともあれ先ずは器機が正確に動き測定方法が間違っていない事を前提に3wで話を進めます。

2月の実測から平均外気温は3.4度。

測定建物の旧Q値は0.87w/m2Kであるので2月の平均熱損失量は2716Wh/h・・・。

又2月のエアコンの実測した平均消費電力750wで、平均COP3.6となりこの数値は過去の調査から妥当な数値。

となると2716Wがエアコンの暖房出力とするとAの直接風による熱は2122Wh/hになります。

ここでエアコン吹き出し温度が40度でスリットからの温度32度ときの風量は880m3/hとなり風量強運転の数値として妥当な風量です。

つまりA:Bは 3.6:1となり、Aが3/4以上の熱を床下から1階に運搬していることになります従来の計算値である15w/m2を使った時は全く逆の比になります。ということは私の考えるスリットからの風量が間違っていたのか?

しかし、スリットから風量880m3/hがでている実感がありません。

実際のスリットの風速を測定し風量を計算すると約250m3/h・・・これは計算値15w/m2時なら辻褄が合いますが、実測値では数値が合いません。

約500m3/hはどこに行ったのか?その答えは・・・たぶんこの写真に表われていると思います。

トイレ内部の床を撮影。明らかに巾木廻りだけ温度が高い。

スリットがない巾木と床の間を中心に温度が高くなっております。つまり意図しない様々な隙間から吹き出していることがわかります。

家の内外では気密がしっかり行われるのに、家の内部は気密施工はされません。残りの500m3/hは家のいたる所からでていると思われます。そのように考えればBが3w/m2の辻褄が合います。

実測からでも床下暖房時は屋内部分もある程度の気密が必要な事がわかり、大きなスリットは必要ないというより好ましくな事もこれで理解できます。

しかし予期しない隙間を理論的に組み立てる事は相当困難と思われます。Bのような間接的な熱移動は精度の良いシミュレーションソフトでわかる可能性が高いと思いますが、AはCFD解析でも相当難しい。なぜなら施工による意図しない隙間が多すぎるから。床下エアコン暖房が盛んになっている今、学会でこんな実測や理論が解明される事を期待します。

PS
幾ら快適性が高く均一な温度分布な「緑の家」であっても、乖離した計算と実測結果では「完成された床下暖房」と宣言するには少し弱いので、今後この言葉は使わないことにします。大変失礼いたしました。

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コメント

  1. オーブルの浅間です。 より:

    赤林先生へ

     助言ありがとうございます。定休日はパソコンを触らないので遅くなってしまいすみません。

    >熱流計が室内側についているのか床下側についているの分かりませんが、逆につけて計ってみてはいかがでしょうか。

    わかりました。
    そのように試してみます。
    ありがとうございます。

  2. 赤林伸一 より:

    熱流計が室内側についているのか床下側についているの分かりませんが、逆につけて計ってみてはいかがでしょうか。

  3. Asama より:

    赤林先生
    コメントありがとうございます。

    >熱流計が正確な値を計っていないこと(放射の影響)、

    絶対値はそのとおりの可能性がとても高いと考えております。

    >計算に使用している表面の総合熱伝達率が実際と違うことが原因では無いでしょうか。

    現在のRiとRo(表面熱伝達抵抗値)はともに0.11m2・k/m2としておりこれと放射が原因とのご指摘だと思われます。そのとおりだと思います。R値の実際はもっと高いのでしょうか。

    やりは実務者が行えるところはここまでです。せめて両面の温度を測るようにセンサーを取付けたいと思います。

    ご指摘頂き、ありがとうございます。

  4. 赤林伸一 より:

    熱流計が正確な値を計っていないこと(放射の影響)、計算に使用している表面の総合熱伝達率が実際と違うことが原因では無いでしょうか。床の表と裏の表面温度を測定する必要があります。