パッシブな暖房で考える伊達の家 2 構造

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太平洋側気候に近い福島県中通りの梁川では冬期の日射も多く期待できる。しかし日射が極小になる厳寒期の2月~2月中旬を除く冬期は如何に蓄熱を有効利用できるかがポイント。そこで家の中に温室を造りオーバーヒートを見込んで蓄熱し、夜間にできる限りその日射熱を利用するように計画した。

伊達の家では当初「夜間17度くらいの無暖房を目指す」としておりましたが、超高断熱の「緑の家」にお住まいの方をみると、当初はできる限り暖房温度を低くして暮らすと考えていた方達も、住み始めるともっと暖かい方が良いので、暖房費を特に気にする事無く(少しは意識するが)、設定温度24度以上で暮らしている人が殆どです。そこで寒さをちょっとでも我慢して無暖房をするより快適に過ごす事を優先するので、「無暖房を目指す」という表記は取りやめました。

さて、上の断面図に有るとおり伊達の家では小屋裏を利用しておりません。これは家の半分の面積を占めるほど大きい吹き抜けと共に大開口部で耐震等級2を確保するために、2階の梁上で水平面剛性を強くする必要が有り、28mmの合板を全面に張っているためです。無理の無い構造計画が建物の耐久年数を高めるので、あえて水平面剛性が下がる勾配天井は取りやめております。確かに大空間のある立派な古民家・寺院を見ても、小屋裏は構造材でびっしりということが多く、勾配天井は住居でない倉庫や蔵、小規模空間などに採用されていた経緯があります。

その家の半分ほどを占める大きな吹き抜けと大開口を可能にした木質ラーメン接合は、金物メーカーであるストローグさんが関与しないと国の特認にならないので、構造設計協力をして頂きました。ラーメン接合の基礎は↓の通り木造とは思えない地中梁形と配筋です。

1階床が地面に近いので基礎は殆どが地中梁となる。

一方パッシブ暖房のため大開口部だけを作ったとしても、そこから入る大量日射で厳寒期以外は必ずオーバーヒート(室温急上昇)します。日射を遮るのでは勿体ないのでその暑さを軽減するバッファーが必要です。これが蓄熱体とよばれ今回の伊達の家の床は、石張りで重さは700kg/m2で面積63m2、その厚さ280mmのコンクリートなどの蓄熱層があります。

このように、日射を大量に室内に導くためにはただ単に窓を大きくすれば良いと訳ではなく、まさしく水面下(地面下)で様々な配慮と構造的根拠・コストアップが必要になるのでおいそれとは提案できません。それが可能になったのは「その1」で申し上げたとおり建て主さんの想いがあったからです。

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