オーブルデザインの「緑の家」の白アリ施策は、世間から
羮に懲りて膾を吹く・・・
といわれるかもしれません。
「緑の家」は今から16年ほど前に、白アリ被害を受けたことは何度かご紹介しているので知っていらっしゃる人も多いでしょう。近年では他の理由で二件で白アリの若干の発生があり、20年で3件の何らかのヤマト白アリ食害事象があります。
この16年前の事がトラウマか、はたまた今後の指針なったのかわかりませんが、
やっぱり・・・
「温暖地でのべた基礎スラブ下の断熱材には抵抗があります」
こちらは現在施工中の伊達の家の基礎工事です。
下は建物総重量 260トン(2600KN)を支える地業です。
地盤改良して掘削して砕石を転圧します。
この写真を見る限り、転圧された砕石は260トンが乗ってもよい構造体です。
260トンといっても1m2当たりでは2トン以下です。しかしまず総重量が260トンあると理解してください。
キッチリ転圧された砕石のうえに0.2mmの防湿フィルムを敷きます。フイルムは構造材とはいえませんが、厚さが0.2mmの為、四枚重なった部分でも1mm未満ですから、これが何らかの理由で腐食しても上部260トンを支えることに何も心配はいりません。
続いて断熱材を敷きます。伊達の家では床スラブ=居住部の床で、何時もの床下暖房をしていない家で且つ、太平洋側特有の冬の日射をこの床に蓄熱させますから、僅かな地中への熱の漏れも大きく影響します。よって上の防蟻処理済みの断熱材を敷き込みます。無論断熱材は水溶性でない防蟻性があるスタイロフォームATです。耐圧力は5トン/m2となりますから、先ほどの2トン/m2の2.5倍の余裕があります。
その断熱材を敷き込んだ様子です。これが上で案内した土や砕石と同じ長期間安定した構造材に見えますか?
温暖地において260トンを50年間に渡って支える構造体になりますか?
確かに・・・何もなければ5トン/m2の耐力がありますが、もしこの防蟻剤に耐性をもった虫がこれを食べたりすると、空隙が生まれます。また50年間で地中の何らかの要因で化学変化による劣化が起こった場合、同じように空隙が生まれます。
薬剤デートのように蚊に30年間も有効な嫌避薬剤もありますが、ゴキブリやネズミの駆除ではある薬剤成分を使って初期(10年)は駆除可能ですが、それ以後は耐性をもった種がでてきて薬剤の成分改善を日々研究している・・・と聞きます。
特に温暖地では地中内の微生物の活動が盛んであり、この辺りは北海道や東北等と大いにちがう環境です。
ヤマト白アリは乾燥材を食べないという情報を信じて25年前に基礎断熱を始めましたが、食害にあいそれから生物系の情報は信用しておりません。だからこそ乾燥材でもヤマトシロアリは食べるという認識に変わりつつある今、数十年間地中で200トンもの重さを支える断熱材が維持出来るとは信じる事ができません。これが・・・
羮に懲りて膾を吹く
といわれても私は構いません。今は土木工事での断熱材地中内埋設使用実績も増えており、これが建築分野でもある程度実績が出てきたときには使用すると思いますが、まだ未知数な素材ですから慎重になっても良いと考えます。なぜなら生物は進化するから生物なのです。
尚、伊達の家は東北地方で且つ取り壊した建物の状況から、地中内生物活動や白アリが少ない地域と見受けられますので、このように断熱材を敷き込みました。
コメント
完成後に修復不可能な部分については、「気にしすぎ」の設計者さんが嬉しいです。
住宅建築が好きで30年ほど雑誌などを見続けており、いろいろ本も読んだりしたのですが、建物を長期に保全する設計という教育がまったくされていないという事を知りました。自分が建築主となって、深く設計者さんと交わるようになって、初めて分かったんです。
そういうのは設計者さんとしてベースにあると思っていたのですが、一子相伝の世界のようです….
浅間さんの見識をなんとか次世代に受け継いでいただきたいと切に思います。
ホントにそうですよね!
私は、温熱環境を向上することに気を取られて、50年後のスタイロの状態に気が回りませんでした。スタイロが頑張ってくれることを祈るばかりです。(笑)
まあ・・・多分私が気にしすぎなのでしょう。
自宅内敷地に埋めて数年後に取り出したEPS(薬剤無し)はほぼ原型のままで殆ど問題なかったです。