アルミ既製品カーポートの事

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1月10日13時 以下と未満が間違っていたので修正

「アルミの既製品カーポートを囲ってガレージっぽくしたいのですが、問題ありませんか」

のような質問があった。そこで返信メイルで書けなかった詳細説明をする。

下の写真矢印がよく見るアルミ既製品カーポート。

新潟県では新築建物の99%以上がこのような屋根がスチールで平らになったこのタイプ(折板の耐雪型)でないと法的に建てる事ができない。

わかり易くする為に一言で答えると・・・

アルミの既製品カーポートを壁を取付けて囲ったり太陽光パネルを屋根に載せることはNG。法的に問題がある(構造的に問題がある)。

安価なアルミの既製品カーポートを構造体として使えば確かにコストダウンできるような錯覚に陥るが、それは構造的、法的裏付けがない。

なぜか?

仕様規定で確認申請をおこなう

アルミのカーポートも床面積が10m2以上超えるなら確認申請(行政への届け)が必要な建築物。これは1台用が10m2以下で適用外製品もあるが、通常は4本足のカーポート1台用で10m2を超える。つまりアルミのカーポート全部に確認申請が必要と考えたほうが一般的。

一方平成14年まではアルミ建築物の確認申請は特認の必要があった(38条特別認定)。しかし平成14年に法律が改正され、アルミのカーポートも床面積が50m2以下なら一般的な確認申請が可能となった(特認でなくともOK)。その中でも木造住宅等に付属した延べ床面積30m2以下のアルミ既製品カーポートの場合は、アルミ合金構造でも基本的に構造計算書の提出ではなく国交省告示第410号の仕様を満たす確認書類を提出することで可能(50m2以下でも一般的ならOK)。

一般的に車2台用のアルミのカーポートは延床面積が30m2以下である事がおおく、「緑の家」でも下の仕様書を行政に提出する。ここまでは普通に行われる。

こちらがメーカーの根拠となる仕様規定確認適合書の表紙

壁を付けたり太陽光発電パネルを設置できるのか?

今回のご質問の

「アルミカーポートを壁等で囲った場合や戸をつけた場合は?」

の答えは、下の「国交省告示第410号」の告示内容が重要となる。以下にその告示を載せる。

ここからわかるように、告示には

1.50m2以下

2.付属したカーポートで且つ延べ床30m2以下ならその下の仕様を守らなくともよい

とある。つまり住宅に設置される場合、法的根拠はまず30m2を超えるか以下で変わり、50m2以下であればこの上の仕様規定を守れば通常構造計算書は求められない。

例えば30m2以下ならこの410号の第4の柱脚の仕様 三において、

「ロ」の仕様にしなくともOKである。「緑の家」が計画するカーポートでもこの「ロ」は採用していない(メーカーの仕様書によるから)。

しかし30m2以下であっても構造計算書が必要な場合がある。それは・・・

壁を付けるとその構造計算が原則必要

↓はアルミカーポートメーカー最大手のリクシルさんの仕様規定適合確認書の詳細内容である。

こちらがメーカーの根拠となる仕様規定確認適合書の2頁目

これによると柱の柱脚の仕様は確認は、メーカーが行った「保有水平耐力の構造計算」が前提でこのメーカー仕様規定適合確認書が有る。つまり法的仕様規定合致根拠はメーカーの構造計算が前提となる。

構造計算の前提条件は?

その構造計算で重要な事は、その計算を行った条件で有り、その条件の中でも耐震性に重要な事は自身の重量である。つまり壁があれば壁の重量を条件に算入し構造計算する必要がある。また耐風性の確認では、壁があるかないかで風力係数や壁面積も風力に影響する重要ポイントになる。

そこでこの条件をメーカーのリクシルさんに問い合わせしたところ・・・

「テリオスポートⅢの構造計算では、柱と屋根だけの標準形でのみの安全性の確認を行っており、壁がある場合は該当しない。設計者で計算しなおすなりの何らかの確認をして安全性を担保してほしい」

ような旨の回答であった。多分・・・YKKさんも同様であろう。

つまり・・・

新潟県のほぼ全域が積雪1m地域に指定されているので、実質アルミ既製品カーポートはこのような平らなタイプの車庫しか建築は出来ない。3本足カーポートやポリカボネートなどの勾配屋根は不可である。

このようなカーポートに「壁」の設置や「太陽光発電」を載せると、自分で構造計算をおこない安全性の確認をとらなければならない事になる。はっきり言ってアルミ既製品という特性上、普通の設計者ではそれは困難なこと。メーカーにお願いして新たに計算書をつくってもらうことが考えられるが、その個別対応は大変難しいはず。
元々カーポートメーカーでは、このようなアルミのカーポートに現場で手を加えて囲うことを想像していない(私も想像していなかった)。構造計算を自身で行う人はこういったことが、必ず身に染みこんで無意識にに判断するが、自身で構造計算を行ったことが無い場合は、このような想像が出来ないのでつい壁設置や太陽光発電パネルを載せてしまう事もあると思われる。

カーポートの構造計算は・・・

「えっでも確認申請時に『壁はありますか?』と言われたことがないよ。しかも元々構造計算しなくともよいのでは?」

床面積が10m2以下ならそのとおりで、行政はそのくらい設計者が知っていると思って聞かないだけ(聞くとやぶ蛇ともおもっているのかも)。但し100歩譲って行政へ構造計算書の提出義務がなくとも、安全性の確認は設計者が行うことが建築基準法の主旨。これは一般木造住宅でも同様に構造計算書を行政に提出しなくても良い規定になっているが、構造の安全性は設計者が法に則って必ず確認することになっている。これと同じ。そう考えると、メーカーの構造計算時の条件に逸脱したカーポートなら、自身で構造計算し安全確認の必要があるし、国交省告示第410号の仕様規定に合致しなければ構造計算書の添付が必要になる。しかし私には出来そうもない位、手間と知識が必要なのでアルミ既製品カーポートには壁や太陽光発電パネルを設けない・・・。

但し、メーカーが用意しているオプションの簡易な囲い、雪止めの金物などであればそれは法的に問題ない可能性が高い(つまり仕様規定に合致する可能性がある)。

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