昨日の続き・・・
昨日東京で山辺先生にお会いして(講習会の終了後)スラブ下の断熱材をどう思いますか?と単刀直入に伺った。
講演会には同じ木構造の大家「大橋好光先生」もいらっしゃるのに、山辺先生のところへ一直線。
これには理由がある。
大橋好光先生にもホントはお聞ききしたいのであるが、大橋先生は著名な研究者ではあるが実務者ではない。研究者は自分の専門は無論、関与する分野についてはマスターであり大変詳しいがすこし専門分野からずれると途端に専門外的お言葉になる。これは仕方ない。
この点、山辺先生は実務が本業であり机上の空論にはならないことが一つ。また経験と実勢がものをいう経年変化(生物劣化)は経験豊かな実務者が一番しっている、そして技術者として最も大事なこと・・・住宅業界のしがらみがないこと。大変失礼ではあるが、山辺先生くらいに経験を重ねると自分の信念を他のしがらみで変えるようなことはしない。しかし先日もこのブログで申し上げたとおり、最近は業務上のしがらみに縛られたり(多くの構造実務者は顧客が建築同業者)、過去の自身の業務のしがらみに縛られたりする。よってはっきりとした見解を避ける・・・。
山辺先生はその点がないと直感で思い、この講習会には2か月前から申し込んだ。ホント私は手前味噌だが直感が優れていると思う。
さて・・・
山辺先生と何で意気投合したか?
もうおわかりだろう。
それは・・・
「べた基礎スラブ下の断熱材は使わない方がよい(無難)。」
ということ。
つまり、石油系発泡樹脂で作られた人工製品の断熱材が、石と石を材料とする無機質素材のコンクリートに挟まれて建物鉛直荷重を受ける構造材として使われたときに、石とコンクリートと同じ耐久性があると言えない(60年以上)ということ。
まず誤解がないように条件を整理したい。以下は私が考える使わない方が良い条件である(地域や諸条件は重要)。
- 北海道と東北北部は除く。
- 地面下に水路(みずみち)等が有ったり特別な条件は除く。
- スラブヒーター、蓄熱など積極的にスラブを温めるときは除く。
- 上2~3でも厚さは最大50㎜程度にする(普通の一戸建て)。
である。
1は本州と違って気温が低く地中内の生物活動が低いので生物劣化のリスクより断熱材無しのリスクが高いため。
2は特別な条件、例えば基礎下に水道(みずみち)がある場合は1と同様にリスクを勘案して決める。
3は蓄熱という特殊条件であれば、周囲環境の総合的判断で採用するメリットが大きい。
4は、
地盤の圧密沈下における長期沈下量の評価だが、山辺先生によると50㎜までは許容してもよいのではないか?(山辺の基礎講演から)
となると地盤と同様の条件であるスラブ下断熱材も50㎜まで許容してもよいと判断できる(浅間)。
これは私の考えだが・・・
4でスラブ下段熱材を50mmとしたときは、地盤の圧密沈下の量はできる限り0近くで抑えたい。そこで新潟県では殆どの家で地盤改良されるので、止む得ない条件の場合は50mm 入れてよいのではないかと考える。さらに一般的な一戸建て住宅の建物外形短編寸法を7000mmとした場合、断熱材が生物劣化などで片側だけなくなった時の最大で建物の傾きが
50/7000=7/1000の傾き
となり何とか許せる不同沈下ではないかと考える。これは10年くらい前からそのように考え、8年前に案内している。無論建物短辺が5000mmであれば5/7の比率で断熱材の厚さは減らさなければならない。
また山辺先生は構造的問題点ではなく環境的の次の指摘をされた。
「もしスラブ下に断熱材があっても、水が容易に基礎下に侵入しやすい敷地なら意味がない。水は断熱材の接合隙間から入り、その水の熱伝導率が高いので断熱材の効果は薄い場合がある」・・・一部浅間が修飾しているのでこのようなことをおっしゃっていたと思ってほしい。
このことも周囲環境による。実測ではスラブ下の断熱材の効果が覿面にあったとの論文も昨年ご紹介している。また水はけの良い土地はスラブ下水平に広がることはないのでこの問題はないとおもわれる。しかし水はけの悪い土地や崖地下では起こりえる問題である。
さらにI社さんのFさんもこの話題に参戦。
「現在すごい勢いで床下暖房が増えているが、そのためべた基礎スラブ下に断熱材を敷きたいとの要望が多い。」
仮にこの断熱材が将来建築学会で「ある厚さ以上の断熱材は土と同じ地盤とみなされない」と判断された場合、数多くの断熱材を既に採用された建て主さんがとても「残念」と思うはず(ここはそんな雰囲気だったので私の想像もある)。
そのとおりである。構造部材は慎重のうえ慎重を重ねて選ぶ必要があるのだ。
所で山辺先生から
「最近、浅間さんと同じ事言っている人がいたような・・・」
と言われた。
えっ・・・私は今までネット検索しても一切そんな事を言っている設計者はいなかった。もしかして当ブログを読んで誰かがこの疑問を広めているのか?ならこの「緑の家」のブログの価値はある。
確か私が基礎スラブ下の断熱材を憂慮しはじめたのは8年くらい前で、当時は国の地面の熱貫流率がドイツに比べ低すぎるところから始まったと思う。私はそのころから温暖地においてスラブ下の積極的な断熱材の使用には反対であったが、世の中の高断熱施工される多くの人達が、床下暖房の使用とともにここ数年間で「スラブ下断熱材は必要」と言っていた状況だった。そこで一昨年はこちらで、昨年はこちらの当ブログでしっかりとその事の注意喚起を行わせて頂いた。でもどうして今まで誰もその事がわからないのだろう。XPS、EPSには防蟻剤が入っているのでまず安心とか、メーカー圧縮強度は倍以上の余力があるとか、高速道路の路盤として実績がある・・・との理由で採用したとの事。高速道路って家なのか?また住宅のように不均等な荷重なのか?
私は何時も言っている、設計の優先順位は構造の安全性が一番で断熱性などは次であると・・・。だから出来れば断熱材は0mmで、止む得ない時に50mmまでとなる。
今年はこの検討が建築学会で議論される事を願いたい。もしかしたら構造材として認められるかもしれない。だから「今のところ」とつけた題名である。
コメント
大変勉強になりました。
これから新築着工なのですが、スラブ下断熱材を50mmの予定でした。
断熱に不安だったので80mm、できれば100mmまで増やしたいと考えておりました。
しかしこの記事を読むと考えが変わってきました。
やはり今でも断熱材は最大でも50ミリとお考えでしょうか?
50ミリを100ミリにしてもやはり体感は変わらないのでしょうか。
耐久性等を考えるとやはりやらないほうがいいのかな、とも思うのですが、どうしても基礎の冷えが怖く厚さを増したくなってしまいます。
床下エアコンではないので余計に1F床の換気ガラリから冷気が上がってくるのでは?と思ってしまいます。
換気はルフロ400なので余計に真冬の床下の冷えがあるのではないか?と思ってしまいます。
なかなか断熱迷子なのですが、床下を暖かくしたい場合は断熱材は増したほうがいいのか、是非とも御教授頂けますと幸いです。
どうぞよろしくお願い致します。
新潟G2男様
コメントありがとうございます。
〉やはり今でも断熱材は最大でも50ミリとお考えでしょうか?
いいえ、最近では下の情報もあることから、新潟以南ではスラブ下断熱材は原則ない方が無難です。
https://media.dglab.com/2022/06/18-afp-01-4/
熱損失大の心配があるならべた基礎はやめて布基礎にして、土間コン下で断熱材を設置すれば解決すると思います。
〉50ミリを100ミリにしてもやはり体感は変わらないのでしょうか。
他条件により変わりますので一概には言えません。
〉床下を暖かくしたい場合は断熱材は増したほうがいいのか、
どんなに断熱材を厚くしても床の表面温度はその床の部屋の室温より上がることはありませんし、開口部に近いところはコールドドラフトで床表面温度は少し下がります。
床下を暖かくしたい・・・とのことは床表面温度を上げたいからだと思いますが、リラックスしているときの人の快適だと感じる床表面温度は25~27度と意外と高めです。
一方冬季の室温が24度だとすると床表面温度を上げるには床温に影響を与える暖房機器にしかできませんが、そのような快適性優先ではなく室温と同じになればよいとのお考えなのでしょうか。
御回答頂きありがとうございました!
大変勉強になります。
ないほうが無難なのはやはり害虫リスクが大きいでしょうか?
布基礎の場合の土間コン下ですが、こちらも土の上だと思いますが、ベタ基礎とリスクは変わるのでしょうか?
いまいち違いが理解できておりません。
そしてなぜこのような話しになったかと言うと、以前G2グレードの完成見学会に行った際に、1階床下の換気ガラリから冷気が若干上がってきていました。
基礎外断熱と基礎内の立ち上がりのみを断熱している家でした。
そこで考えたのが、基礎断熱をさらに上げて、気密はもちろん0.5程度にしますが、そうすれば寒冷地エアコンの壁掛けでも床面を暖かくできるのではないか?と思いました。
床下エアコンが採用できない為です。
そこで重要になるのが基礎の土間面になるのではないか?と。
基礎の断熱仕様は、
外張り50㎜
基礎内立ち上がり80㎜
基礎内外周土間上80㎜
の予定で、さらに土間下も50㎜、それ以上にしたら床ガラリから冷気が上がってくる事が軽減されるのでは?と思いました。
どうしてもイメージとして、基礎の土間面が冷たいのでは?と思ってしまいますが、考えるほどにわけがわからなくなってきました…
壁掛けエアコンの場合で、基礎からの冷気を防ぐにはどうすればいいのか是非とも御教授頂きたいです。
どうぞよろしくお願い致します!
浅間です。
>壁掛けエアコンの場合で、基礎からの冷気を防ぐにはどうすればいいのか
まず前提に?がつきます。一般的に考えて、冬期床下の換気ガラリからの冷気が上がってくることはありません。冷気は下にたまりますので動力がなければ上昇しません。もし見学会で床下の換気ガラリから冷気が上がってきたと感じたならその近くの窓からのコールドドラフト、もしくは床下の冷輻射との勘違いではないでしょうか。一方ルフロ400で新鮮空気の給気口が床下にあり、床下ガラリをとおして室内に入ってくる換気方法なら冷えた空気が上がってきます。しかしこの方法は私的に論外なのでアドバイスは難しいです。
>基礎の断熱仕様は、外張り50㎜・・・
新潟県内で白アリ予防対策の無い外貼り基礎断熱方法なら私的NGなので、スラブの断熱有無などにもコメントはあまり意味がないと思います。有効な白アリ予防があれば、その時はスラブ下ではなく、スラブ上に断熱材を厚く敷けばそれで解決するのではないでしょうか。また床断熱でもよいと思います。
御回答頂きありがとうございます!
そうなのですね…
ルフロの給気口は壁についていたと思います。
2階は確か床に排気口がありましたが。
冷輻射ですか…
とても勉強になります。
そうなのかもしれません。
ただ、確かにあの時1階のガラリに手をあてると冷気を感じました。
それが上昇気流だったように思えたもので、てっきり基礎から冷気が上がってきてるのだと思っていました。
ちなみに室内のルフロ排気口に床下の空気が吸われている、という事はないのでしょうか?
確かにスラブ下より上に敷いたほうが、とも思うのですが、基礎空間が狭くなったり浅間様が書かれているような踏んだ時のデメリット等ある点、そして工務店の仕様だったりと、色々と考えてしまいます。
ただ、東北や北海道などの寒冷地で、スラブ下断熱100㎜等で施工している工務店さんがいるというのは、やはり害虫リスクよりも電気代の削減が大きな理由なのでしょうか?
私はてっきり寒さの軽減だと思っていました。
厚くすれば寒くなりにくい?のてばないのかと。
>ちなみに室内のルフロ排気口に床下の空気が吸われている、という事はないのでしょうか?
可能性としてはあります。しかしそれなら基礎断熱のどこかに給気口同等以上の大きな隙間があって外気が入ってきていることになり、高気密住宅としては失格ですので、手の打ちようがありません。
>ただ、東北や北海道などの寒冷地で、スラブ下断熱100㎜等で施工している工務店さんがいるというのは、やはり害虫リスクよりも電気代の削減が大きな理由なのでしょうか?
そのとおりだと思われます。高湿を含む表面結露等と暖房費が主の理由で、断熱の部位、考え方は地域によって変わるべきだと思っております。但し、北海道でのスラブ下断熱材敷き込みは少数で、通常は布基礎に土間コンでその下に断熱材やスカート断熱で床下断熱材省略です。これは全域で凍結深度があってベタ基礎では高額になるからです。
また北海道では床下内に新鮮空気を入れていると言う理由もありますが、床下内を暖めることが多く行なわれており、基礎周囲に断熱材を多くつかっても室温以上は上がらないので何らかの熱源を床下に設置する方法が多くあります。
御回答ありがとうございます!
という事は基礎断熱空間の中に穴がない状態、C値0.5以下で気密のバランスが取れている状態の場合は、どんなに寒くても床のガラリから基礎の冷気が上がってくる事は考えられないという事でしょうか?
布基礎に土間コンでその下に断熱材やスカート断熱という構造がいまいち理解できないのですが、浅間様の過去の記事等で解説されているページはありますでしょうか?
ベタ基礎のスラブ下断熱材との違いがどうも理解できません…
それと基本的な考え方として、基礎断熱の厚みをかなり薄く、もしくは断熱材がない場合(但し気密は取っている状態)、基礎内の温度は下がると思うのですが、どんなに冷えても基礎の冷気が床のガラリから室内に上がってくる事はないものでしょうか?
真冬に暖房で1階の室温が25℃だとして、基礎内が16℃だとすると、1階の床表面付近の温度は何度位になるものでしょうか?
どうしても基礎が寒いと床ガラリ付近が寒いのではないかと思ってしまいますが、その辺りの空気の流れはどういう動きをするものでしょうか?
>どんなに寒くても床のガラリから基礎の冷気が上がってくる事は考えられないという事でしょうか?
理論上はないです。スーパーでよく見かける冷凍食品が入った箱は蓋もないのにマイナス20度を維持できるのはその理由だからです。
もし床下から空気が上がってくる例外があれば、床から伝熱で暖められた床下空気が室温(床表面付近)より高くなった時だけとなりますが、窓のコールドドラフトが直接影響する場所以外はそのような条件は揃いません。
なお、次の今回の件は検索方法で調べられますのでググってください。このほうが精度良くブログ内を検索できます。
site:https://arbre-d.sakura.ne.jp/blog/ ベタ基礎 断熱材 スラブ
をコピペ(リンクでは検索語彙が入らないので)してください。
そこをお読み頂きそれでも難しいようなら文字では伝わりにくいので県内の方であれば来所頂ければご説明します。
たびたびすみません。
それともし床下エアコンを使わず壁掛けエアコンの場合には、真冬の土間下断熱の熱の逃げはあまり気にしなくても良いものでしょうか?
というのも、土間下の断熱材を増す理由としては電気代の削減が一番?
であるならば、床下を暖めない普通の壁掛けエアコンの場合には電気代の削減は関係のない部分なのでしょうか?
また、壁掛けエアコンの場合には、土間下の断熱材があってもなくても、基礎内の温度は変わらないものでしょうか?
ありがとうございます!
冷凍庫はとてもわかりやすかったです。
過去記事の検索もありがとうございました!
全ての記事を読ませて頂きました。
布基礎ベタ基礎スラブ下の違いだけがやはりどの記事にも違いが見つかりませんでした。
しかし熱移動の計算などとても勉強になり大変ありがたいです。
何回も読ませて頂きます!
それともう一つ教えて下さい。
床下の気温が低くても上に冷気が上がらないとの事であれば、
壁掛けエアコンの場合で、基礎断熱の場合には、床下が寒いから足元に寒さを感じる、という事はありえない、という事でしょうか?
もし足元に寒さを感じる時はコールドドラフトの場合で上から下に冷気が落ちてくる時に足元が寒くなる、という事でしょうか?
もしそうなると床下エアコンを採用しない壁掛けエアコンの家の場合には、基礎の中の断熱レベルを高くする必要はないものでしょうか?
床下エアコンのように基礎内を暖めるなら熱を逃がさない断熱が必要だと思いますが、壁掛けエアコンならそもそも基礎内は寒くても問題はないのでしょうか?
どうやらまた意味不明になってきてしまいました…
浅間様
以下の条件で計算してみました。コメント長いです。そして、間違っていたらすみません。
【地盤の条件】
① 地盤が全て砂(含水率0%)
② 地盤の深さ1-2m部分に重量含水率23.3%の砂の層がある。その他は含水率0%の砂。
③ 地盤が全て砂(重量含水率23.3%)
④ 地盤が全てローム質
【地盤の物性値 熱伝導率(W/(m・K))密度(kg/㎥)比熱(J/(kg・K))】
砂(含水率0%) 0.256 W/ (m・K) 1313(kg/㎥) 1000(J/(kg・K))
砂(重量含水率23.3%) 1.89 W/ (m・K) 1590(kg/㎥) 1787(J/(kg・K))
ローム質 1 W/ (m・K) 1500(kg/㎥) 2300(J/(kg・K))
【その他計算条件】
Therm3D(黒田英夫著Visual Basicによる3次元熱伝導解析プログラム(2003)CQ出版社)の解析部分を使用した非定常計算で、2004年6月1日~2007年5月31日までの1095日分の平均外気温を気象庁のWebからスクレイピングし、非定常解析の計算打ち切り時間を1日に設定し、1095回繰り返す。
床面積 8m×8m=64㎡(壁芯8.15m×8.15m=66.4225㎡)の1/4モデル
水平方向の分割(X軸とY軸) 0m,2m,3m,3.5m,3.9m,4m,4,15m,4,25m,4.7m,5.7m,8.7m
鉛直方向の分割(Z軸) 0m,6m,8m,9m,9.5m,9.75m,9.8m,9.85m,9.9m,9.95m,10m(外壁1mがある場合+1mの11m)
外壁 高さ 床から1m
外壁 幅 0.15m
コンクリート厚さ0.15mのフラットスラブ
外断熱材厚さ 基礎立ち上がり100mm
地盤の深さ 10m(スラブ下9.85m)
室内温度 25℃で一定
外気温変動 北海道北見 2004.6~2007.5の3年間
[材料物性値 熱伝導率(W/(m・K))密度(kg/㎥)比熱(J/(kg・K))]
コンクリート 1.6W/(m・K) 2300(kg/㎥) 880(J/(kg・K))
基礎立ち上がり断熱材 0.034W/ (m・K) 27(kg/㎥) 1450(J/(kg・K))
室内側境界条件 熱伝達境界 熱伝達率は9W/(㎡・K)で一定
外気側境界条件 熱伝達境界 熱伝達率は23W/(㎡・K)で一定
モデル切断面の境界条件① 底面は温度固定境界 6.85℃(2004.6~20011.5までの7年間の平均気温)
モデル切断面の境界条件② 底面以外は断熱境界
初期値 2004年5月31日24時の外気温14.2℃(室内温度も14.2℃)で計算した定常解析の値
【結果】
3年目の冬季(2006年11-2007年3月)5か月分の床からの熱損失(kWh)と同期間の外気温と室内温度の温度差の積算値で割り返した値(W/K) 、その値を壁芯の床周長(32.6m)で除した値。
① 798kWh 7.86(W/K) 0.241W/ (m・K)
② 983kWh 9.68(W/K) 0.297W/ (m・K)
③ 4051kWh 39.89(W/K) 1.224W/ (m・K)
④ 2365kWh 23.29(W/K) 0.714W/ (m・K)
【地盤条件③の断熱による違い】
3年目の冬季(2006年11-2007年3月)5か月分の床からの熱損失(kWh)と同期間の外気温と室内温度の温度差の積算値で割り返した値(W/K)
❶無断熱:5606kWh 55.2(W/K)
➋基礎立ち上がり外側断熱:4051kWh 39.89(W/K)
❸基礎立ち上がり外側断熱+スラブ下にスタイロ50mm:1644kWh 16.18(W/K)
❹基礎立ち上がり外側断熱+スラブ下にスタイロ100mm:1106kWh 10.89(W/K)
【地盤条件③の断熱による違い~省エネ赤坂式の場合~】
計算の前提となる基礎断熱モデルが違い、式の適用範囲外だと思いますが変数に値を入れて計算してみました。
単位温度差あたりの熱損失(W/K) (省エネ赤坂式の値/シミュレーション値×100%)
❶無断熱:65.66(W/K) (119%)
➋基礎立ち上がり外側断熱:35.04(W/K) (88%)
❸基礎立ち上がり外側断熱+スラブ下にスタイロ50mm:20.42(W/K) (126%)
❹基礎立ち上がり外側断熱+スラブ下にスタイロ100mm:15.22(W/K) (140%)
【地盤条件①の断熱による違い】
3年目の冬季(2006年11-2007年3月)5か月分の床からの熱損失(kWh)と同期間の外気温と室内温度の温度差の積算値で割り返した値(W/K)
➋基礎立ち上がり外側断熱:798kWh 7.86(W/K)
❹基礎立ち上がり外側断熱+スラブ下にスタイロ100mm:551kWh 5.43(W/K)
【地盤条件①の断熱による違い~省エネ赤坂式の場合~】
単位温度差あたりの熱損失(W/K) (省エネ赤坂式の値/シミュレーション値×100%)
➋基礎立ち上がり外側断熱: 7.99(W/K) (102%)
❹基礎立ち上がり外側断熱+スラブ下にスタイロ100mm:6.58(W/K) (121%)
【地盤条件の断熱による違い】と【地盤条件の断熱による違い~省エネ赤坂式の場合~】の情報に抜けが多かった為、情報追加まとめコメントです。
【地盤条件①の断熱による違い】
❶無断熱: 2519kWh 24.80(W/K)
➋基礎立ち上がり外側断熱:798kWh 7.86(W/K)
❸基礎立ち上がり外側断熱+スラブ下にスタイロ50mm: 631kWh 6.22(W/K)
❹基礎立ち上がり外側断熱+スラブ下にスタイロ100mm:551kWh 5.43(W/K)
【地盤条件②の断熱による違い】
❶無断熱: 2593kWh 25.54(W/K)
➋基礎立ち上がり外側断熱: 983kWh 9.68(W/K)
❸基礎立ち上がり外側断熱+スラブ下にスタイロ50mm: 755kWh 7.43(W/K)
❹基礎立ち上がり外側断熱+スラブ下にスタイロ100mm:642kWh 6.32(W/K)
【地盤条件③の断熱による違い】
❶無断熱:5606kWh 55.2(W/K)
➋基礎立ち上がり外側断熱:4051kWh 39.89(W/K)
❸基礎立ち上がり外側断熱+スラブ下にスタイロ50mm:1644kWh 16.18(W/K)
❹基礎立ち上がり外側断熱+スラブ下にスタイロ100mm:1106kWh 10.89(W/K)
【地盤条件④の断熱による違い】
❶無断熱: 4012kWh 39.51(W/K)
➋基礎立ち上がり外側断熱:2365kWh 23.29 (W/K)
❸基礎立ち上がり外側断熱+スラブ下にスタイロ50mm:1243kWh 12.24(W/K)
❹基礎立ち上がり外側断熱+スラブ下にスタイロ100mm:910kWh 8.97(W/K)
【断熱・地盤による違いについて】
基礎の立ち上がり部分外断熱材の床からの熱損失削減効果(❶-➋=)は①1721kWh,②1610kWh,③1555kWh,④1647kWhとなり、地盤の熱物性値の影響はそれほど大きくないように思われました。❶−❸=は①1888kWh,②1838kWh,③3962kWh,④2769kWhとなり、地盤の熱伝導率の値が大きいときは、スラブ下断熱材の効果がやはり高かったです。
地域を変えて、厳しい地盤条件③で福井の外気温でシミュレーションを行うと、
❶無断熱:3373kWh 52.29(W/K)
➋基礎立ち上がり外側断熱:2384kWh 36.95(W/K)
❸基礎立ち上がり外側断熱+スラブ下にスタイロ50mm:951kWh 14.73(W/K)
❹基礎立ち上がり外側断熱+スラブ下にスタイロ100mm:641kWh 9.93(W/K)
北海道北見の6掛け位の数字になり、地盤の熱物性値が悪いときは、スラブ下断熱材50mmならあっても良いなと思える数字でした。
含水率による違いの大きさから、スラブ下や基礎立ち上がり外側地盤の実際の熱物性値が知りたいなと思いました。。。
【シミュレーション値と省エネ赤坂式の値】
プログラムと入力値の大きな間違いがないかを確かめる為、床高0.3mの布基礎から導き出された省エネ赤坂式の値と床高0mフラットスラブべた基礎のシミュレーション結果を比較してみました。
床高0.3mの方が外気の影響を受けるため、無断熱の場合の熱損失は赤坂式の方が大きくなりました。そして、スラブ下断熱材がある場合も断熱材の連続性がない(熱橋がある)布基礎モデルのため、こちらも赤坂式の方が大きかったです。
材料の物性値についてですが、鉄筋コンクリートをコンクリートの物性値で計算しているため、断熱材が不連続の部分からの熱の逃げを過小評価していると思われます。スラブ下断熱材がある場合の差が実際はもう少し大きいかもしれません。。。
単位温度差あたりの熱損失(W/K) (省エネ赤坂式の値/シミュレーション値×100%)は以下のようになりました。(スラブ下断熱材50mmより100mmの方が熱橋の影響が相対的に増大してしまいます。。。)
【地盤条件①の断熱による違い~省エネ赤坂式の場合~】
❶無断熱: 30.97(W/K) (125%)
➋基礎立ち上がり外側断熱: 7.99(W/K) (102%)
❸基礎立ち上がり外側断熱+スラブ下にスタイロ50mm: 6.98(W/K) (112%)
❹基礎立ち上がり外側断熱+スラブ下にスタイロ100mm:6.58(W/K) (121%)
【地盤条件②の断熱による違い~省エネ赤坂式の場合~】
地盤条件により計算出来ず。
【地盤条件③の断熱による違い~省エネ赤坂式の場合~】
❶無断熱:65.66(W/K) (119%)
➋基礎立ち上がり外側断熱:35.04(W/K) (88%)
❸基礎立ち上がり外側断熱+スラブ下にスタイロ50mm:20.42(W/K) (126%)
❹基礎立ち上がり外側断熱+スラブ下にスタイロ100mm:15.22(W/K) (140%)
【地盤条件④の場合の断熱による違い~省エネ赤坂式の場合~】
❶無断熱:50.32(W/K) (127%)
➋基礎立ち上がり外側断熱:23.68(W/K) (102%)
❸基礎立ち上がり外側断熱+スラブ下にスタイロ50mm:17.34(W/K) (142%)
❹基礎立ち上がり外側断熱+スラブ下にスタイロ100mm:14.74(W/K) (164%)
水野様
コメントと解析について投稿頂きありがとうございました。
>含水率による違いの大きさから、スラブ下や基礎立ち上がり外側地盤の実際の熱物性値が知りたいなと思いました。。。
全くそのとおりで、そのあたりの知見が不足しているのが今の現状です。
また「緑の家」では特に基礎スラブの鉄筋量が多く1.5%に達する場合も有りその影響は大きいと思われますが、多くはコンクリートは熱伝導率1.6W/(m・K) で計算されるため、また鉄筋量のパラメーターはないるのでベタ基礎(特に内断熱)のような基礎については、この式があてはまるか・・・と感じることが多いです。
水野様
いつもコメント頂きありがとうございます。
仰せのとおり・・・基礎外周部を除くスラブ中央部から地中への熱の移動において断熱材の厚さの影響は大変少ないと思われます。これは大地という断熱材の分母が大きいので50mmや100mm程度の差が出にくいのだと思われます。問題は地中の水位でありこの位置が高い時に差が出ると思っております。そのあたりのパラメーターを変えてシミュレーションを行って頂ければと思います。仮に差が出たとしても100mm断熱で設計する事は・・・多分ないと思います。
>地盤に水みちがある場合のシミュレーションを見た事がないので・・・
私も見たことがないので知りたくそのようにお伝えしました。
>地盤にある水みちの鉛直方向の長さは何m位になるでしょうか?
状況によって変わると思いますが、私の近所の家では巾1000mmで鉛直方向700mmの現場を体験しました。当然もっと浅い場合もあるかもしれません。
>水みちの物性値は年平均外気温の水の物性値でよいでしょうか?
申し訳ありません。それが難しいので調べた事もなくわかりません。
ただその地域の地中内温度(上の場合は深さ700mm)だけはよいと思うのですが、熱伝導率がその水道(みずみち)の状況によって変わるのでわかりません。
ありがとうございました
べた基礎ではなく、布基礎で支持力を十分に得られる場合には(または杭支持の場合)、床下の土間コンクリート下に断熱材を敷いて、床下暖房採用の場合の熱損失を小さくするために断熱材を使用することを考えてもよいでしょうね。ただし、シロアリ対策を十分にできる方法を考えなければなりませんが・・・
浅間です。
>ただし、シロアリ対策を十分にできる方法を考えなければなりませんが・・・
仰せの通りです。
ただ白アリ対策は布基礎でも出来ます。ただしイエシロアリの生息している地域はべた基礎の方がやはり侵入防止には良いでしょう。つまりイエシロアリが生息しているような温暖な地域とヤマトシロアリしかいない少し寒冷な地域とでは、基礎を分けても良いでしょうね。「緑の家」はその地域の環境を重視して一番ふさわしい基礎を計画するつもりです。だからべた基礎だけでなく布基礎も行うようにしたいと今考えております。
実は・・・布基礎にする理由は、地面への熱の逃げよりもスラブ面状の水平方向の熱の逃げ遮断のためです。これは何回かブログで実測としてご紹介しました。