3.11震災の津波に思う事。専門家・管理者の責任。

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大川小学校(宮城県)の高裁判断に対し市や県が上告したと聞く(学校や市には今回の津波が予見できず責任はないと上告した)。

その事を支持する声が多いのに驚く。

訴訟に踏み切ったご遺族は「賠償金ではない・・・本当の事、責任の所在を曖昧にしたくない」との想いで訴訟した・・・とのこと。

市や県がこの大津波を予見出来たかに対し、

「出来ただろう」

と思う。

私は三陸地域に住んではいないが、中学校の時に

「三陸のリアス式海岸は過去の津波によってつくられた。この地域は大地震時に津波がくる。」

と習ったことを今でも覚えている。

新潟県在住の私でもしっていたこと。

1000年に一度の大津波だから予見できないと言われる事があるが、過去の文献・記録では数百年置きに大津波はあった。もしこの数百年に一度の津波だから許されるとなると、我々建築士の仕事も変るはず。

そもそも建築基準法ギリギリにたてられた家の強度は数百年に一度の大地震でも倒壊・崩壊しない程度強度を持つ建物が要求されている。もしそれが予見不可能で必要ないなら法より相当弱い家でもOK。
※ここで言う予見とは地震が何時どこに来る(予知)のかではなく、日本では数百年に一度はどの地域でも大地震がくるということ。

そして地震がきたら数百年に一度の地震だから想定外といえば良い。

多分反論があると思う。

「数年おきに大地震がきているよ。だから津波とは違うのでは・・・」

いいえ。

各地域ごとに見るとやはり数百年に一度が殆どで、全国でみると数年おきに震度7クラスがきているが、ピンポイントでみるとやはり数百年に一度の災害となる。だから数百年に一度の地震であり3.11の津波想定と同じことである。直近の大地震の熊本地震も同じ。皆口を揃えてこの地域に地震が来る事なんて考えていなかったと住民は言うが、そこで業を営む建築士が建築基準法を守っていなかったかというと、数百年に一度ある今回のような大地震を想定した建築基準法を守っていた。

専門家は口を閉ざさずもっと声を上げるべき・・・。

ホントにこの津波を予見することが出来なかったのか?40分も校庭で待機させられたその時間は一体何の為だったのだろうか?何故古くからこの地域は山の近くにしか住んでい無かったのか?

全ての住民や市職員の皆が予見する義務はない。

専門家や管理者だけは予見できなかったとは言ってもらいたくない。何かがひっかるこの裁判。予見できたというと他に困ることでもあるのだろうか?

誰もが争いはきらいである。自然災害が多かった日本は、このような天災時の責任問題は昔から問われない事が多いが、今は時代が違う。情報を簡単に集める事ができるこの時代に過去の風習を持ち込む必要はない。特に義務教育で基本的に選択の余地がない小学校に対してはそれ相応の責任が行政に存在すると思うし、それを償う方法としての合理的代償がお金だけであり、その税金で憎しみと争いごとが消え、今後の指針となるならそれは生きたお金の使い道だと私は考える。

いま心配している事がある。

東京へ行ったときに何時も気になるのが、大地震の際の通行人への落下物である。古い建物の外壁や看板は無論、ガラスのカーテンウォールが落下してきたら・・・

実はこの事は都の防災ガイドブックに明確に書かれていない。もし東京で大地震が発生し、空からガラスの雨が降り注いだとき、それらを通行人は予見できなかったと裁判するのだろうか?これも専門家なら予見可能である。そのリスクを背負って私は何時も東京に行く。予見不可能と見えないふりをする事は全く違い、リスクを認め議論して皆がそれでも納得すれば良いだけのこと。ある程度対策の見通しが出来てから防災マニュアルやガイドブックに書くことでは遅すぎるのである。

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コメント

  1. Asama より:

    遅レスですみません。

    >ガラスのカーテンウォールや落下しそうな看板の近くを通らざるを得ない時には、注意力を高めるようにしています。

    おっしゃるとおりほんとに・・・怖いです。
    またそこに住んでいる人はその状況に慣れてしまって感じなくなっているのが辛いです。

    せめて歩道まで競りでている外壁・看板などは、耐震チェックと適正なメンテナンスをお願いしたいところです。

  2. ぴか より:

    全くその通りであると思います。石巻市長のみならず自衛隊出身の宮城県知事までもが、予見不可能とするのは行政の責任者として意識が低いと思います。自然災害及び火災などの都市災害の危機は常に存在するという意識を持つのは住民に対する責任です。
    私も東京などの都会に行くときには周囲に気を配っています。ガラスのカーテンウォールや落下しそうな看板の近くを通らざるを得ない時には、注意力を高めるようにしています。