今回の論文紹介は、主旨・中身の解説ではなく実測もしくはシミュレーションによって得られた結果から「緑の家」の換気に対する考え方を説明する。
何度か紹介しているとおり「緑の家」の換気に対する考え方は、
寝室となる個室にフレッシュエアーを一人あたり16m3/hから25m3/hで計画する。よって法律※で定められた最低基準の0.5回/hを大きく上回る1回/hとなることもある。
それには理由があり、長時間密閉される空間こそ換気が特に重要と認識しているから。その根拠となりそうな実測結果がこの論文にあるのでご紹介する。
寝室に上図のようにCO2を0.03m3/h発生させ4パターンの換気方法によってどのような違いがあるか実測を行っている。この0.03m3/hは大人2人分(就寝中)のCO2発生量である。
上表の実験1が一般的な換気システム(22m3/h)であり、その結果は・・・
実験1の建築基準法で定められた最低基準でおこなうと数時間後にCO2濃度が1500ppmとなる。出来れば1000ppm以下にしたいところである。1000ppm以下にする為には法律基準より1.5から2倍程度の換気量が必要で、それを実践したのが「緑の家」の換気量割り振りに対する考えかたである。この法定換気量(シックハウス法に定められた最低換気量)※は、一般的に気積に対し0.5回/hの換気量が求められる。8帖の寝室であれば気積は32.8m3となりその半分は16m3/h。
※・・・シックハウス法では壁・床・天井などの建築材料から汚染物質の希釈が目的で、人の吐き出すCO2の希釈ではないため、一般的に気積に対し0.5回/hの最低換気量の要求となる。
この論文は民間系のためウエブでの全文公開は差し控える。ほしい方はメイルを頂ければお送りする。
コメント
水野様
コメントありがとうございます。
空調、換気に関わる業界の研究者内では、人にとってCO2濃度より酸素濃度が確実に影響を及ぼす事は明らかなのですが、少しばかり濃度が上がったCO2が直接健康に害を及ぼすことについてまだわからない事が多いとの認識です。つまりCO2濃度が大気中に濃度に比べ高いと言うことは、他の物質濃度(所謂揮発性有機化学物質で「おなら」も含まれる)も高くなる事は良く知られており、その希釈の目安としてCO2を指標とするとされております。
体調の変化がCO2だけでもたらされたのか、それとも他の成分なのか、はたまた窓を開けることで外音(風のざわめき、虫の声)が影響するのか・・・人の体はまだまだわからない事だらけです。しかし大気成分が最もふさわしい空気質との認識は間違いないので、換気量は許す限り多い方がよいと思います。
浅間様
ご教授いただきありがとうございます。
>CO2濃度が大気中に濃度に比べ高いと言うことは、他の物質濃度(所謂揮発性有機化学物質で「おなら」も含まれる)も高くなる事は良く知られており、
浅間様が紹介されていた研究室の
「築年数5年以下の住宅で隙間開口面積が小さい住宅では、ホルムアルデヒド濃度が高くなる傾向がみられる。」
(新潟県の住宅における室内化学物質汚染に関する調査研究)
という一文を読んでから換気量を少し増やしました。厚生省のホルムアルデヒドのガイドライン(0.08ppm)を超える濃度が約30%の住宅で測定されたという事に驚いてしまいました。
浅間様
論文の参考文献 3)
The effects of bedroom air quality on sleep and next‐day performance
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/ina.12254
を読むと寝室の二酸化炭素濃度の違い(平均2395ppm(1620〜3300 ppm)
と平均835ppm(795〜935 ppm))で、翌日の眠気や心理状態、ロジカルシンキングのテスト結果等が変わってくるようで、
>出来れば1000ppm以下
という理由が分かったような気もします。
論文のご送付ありがとうございました。