業界の反発ありか?超高気密住宅の換気計画とその実測。

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「緑の家」ダクト換気の新鮮空気吹き出し口。
寝室には45m3/h以上の新鮮空気が吹き込まれる。

超高断熱高気密の家の換気はとーっても大事です。

断熱性能に並び換気も重要な温熱環境の計画ですからしっかりした設計が必要です。

シックハウスの法律から見る換気量

現在の住宅は機械による24時間換気がシックハウスの法律で規定されております。先ずはその解説をします。

居室のみか、家丸ごと(非居室を除く)の換気量

※居室とは長時間人が滞在する部屋。リビング、寝室、キッチンなど。

住宅で且つ居室※の換気は法律で定められており、殆どの家がこの換気を必要とする建物です。その基準は、換気該当空間の気積が、1時間に半分以上入れ替わる換気量となります。

例えば、居室(寝室)だけを考える換気では、仮に8畳で天井高2.4mの換気量は約16m3/hになります。また一戸建て住宅では部屋ごとの換気計画するより、家丸ごとの換気計画をする方が多く、「緑の家」も家丸ごと(物置き、懐、床下は含まず)の換気量を計算します。

例えば、30坪の家の物置を除く床面積が26坪なら=86m2となり天井高が2.4mだと
86×2.4=207m3ですからその1/2が換気量で104m3/h以上の換気が法律で義務づけられております。

非居室(床下など)まで含んだときの換気

もし非居室(床下空間やお風呂、収納)を換気する空間に含むと、その気積もプラスされることになります。

例えば、30坪の家の全てと床下を換気経路にすると、床面積が30坪に床下が15坪で高さ0.5mとしたときは

30坪=100m2と床下15坪=50m2でそれぞれの天井高が2.4mと0.5mだから

100×2.4+50×0.5=265m3 よってその1/2が法律で定められた換気量で133m3/hになります。上と比べ3割増えましたね。この量は法律規定のため勝手に減らす事はできません。つまり床下などを換気に含めない方が換気量は減らせます(=光熱費が安くなる)。

法律で定められた換気量の低減はない

この換気の法律の目的は、人以外の建材類から発する揮発性有機化合物の希釈です。所謂シックハウス症候群にならない為の換気量です。よって使用する建材類や、窓がサッシなら低減措置はありません。

トイレは換気量の規定がない

法律では窓のあるトイレに換気扇自体の必要はなく、無窓のトイレだけ換気扇設置が義務づけられており又その換気量の規定はありません。つまり窓があってもなくても24時間換気の必要がありません。使った後だけ換気すればOKです。

超高気密からみる計画換気

目的はシックハウスでなはい

同じ24時間計画換気であってもシックハウスのためだけでない計画換気が、30年前から設けられている24時間換気です。その目的は

  1. 湿気の希釈
  2. 酸素濃度適正化
  3. 揮発性有機化合物等(所謂匂い)の希釈

です。法律ではこの中の3のみが基準として取り扱われております。

湿気の希釈

冬期人が住む住宅内では湿気の発生が6から15L/日もあり、換気によってその湿った空気を乾いた外気による希釈をしないと、結露などの障害が起きます。よって家のRH(相対湿度)が50%以下になるように換気します。なぜ雪が降っていても外気を取り入れると湿気の希釈になるのかはこちらをご覧ください。湿気の発生源は人、洗濯、調理、観葉植物、水槽など。

酸素濃度の適正化

人が住んでいる家は多量の酸素を消費します。これは説明を省いてもわかると思います。

消費減は人、調理(ガスの時)、観葉植物、酸化する有機、無機物。

匂いの希釈

目的3の中でシックハウスに関わる建材類からホルムアルデヒド類は希釈しないと障害が発生する事はおわかりだと思いますが、ここでは匂い・・・人の息、人の汗、料理腐敗臭、洗濯物の香りなどを指します。実はこれが換気の一番の目的になります。

CO2の濃度は指標として考える

労働安全衛生法・ビル衛生管理法では「職場(又は多数の使用するビル)の望ましい空気環境はCO2が1000ppmを超えないこと(平均値)」に決まっておりますが、住宅においてCO2の濃度の法律規定はありません。

それは二酸化炭素はその濃度が10倍になっても危険性はないのに対し、酸素濃度は数%少なくなると生命の危機に直面します。従ってCO2濃度よりO2濃度を測る方が大事なのですが、一般の住宅において、酸素濃度が変わるほど狭い空間且つ高気密性はありません。また職場のような集会場にありがちな人の超過密状態になる事もありません。ではなぜCo2濃度を気にするのかと言えば・・・

これは目的の3が達成される指標として使われるからです。つまり匂いの成分は極めて多種である事と、匂いの元は人である原因が多い事と考えられるので、

人が多くいる部屋=匂いが多くなる→人の吐く息CO2を匂いと置き換える

と言うことになったのです。よって換気は人の人数分でその換気量を決める事が目的に添うことになります。

狭く長時間隔離されやすい空間の寝室

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実際の空調計画図 2階寝室付近

これは実測された家の寝室付近の換気計画です。寝室の広さが約15m2(9畳)、天井高が2.6mなので法律で規定された換気量は20m3/hとなりますが、この部屋の換気量はその2倍以上の45m3/hで計画します。これは寝室使用者は2人であり、一人あたり20~25m3/hの換気でCo2濃度を1000ppmくらいに抑える事ができたため換気量は45m3/hとしております(一時的に1500ppmでも良いと思うが)。

一方この家のリビングは25m2(15帖)あり、平均天井高4.5mですからシックハウスの法律で決められた換気量は60m3/hが必要です。しかし「緑の家」の換気量はその2/3程度の45m3/hとしております。

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実際の空調計画図 1階リビングキッチン付近

えっ・・・法律違反をしているの?

違います。一番上で説明したとおり家丸ごと換気の算定で行うので(家中が境なくつながって使用する)、家全体の換気量を守りつつ、寝室及び個室の換気量を多めに、そしてリビング等の換気量を少なくしているのです。リビングの換気量が少ないと言っても、気積が大きいので1.2.3の換気効果は同じくなるのです(建材類が無垢材が多いので3は匂いの希釈)。

「緑の家」の換気実測 CO2濃度にて

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全てがこのデータに表われている。人の滞在時間が多い所、狭い空間ほどCO2濃度が高くなる。
寝室の戸は開いていて、出入り自由な部屋でもこのような濃度差が出来る。
実はこの実測日時も重要で、この実測時期は家の内外温度差がなく且つ戸の開け閉めも少ない。つまり換気が少なくなる条件の悪い時期。

こちらが「緑の家」の実際のCO2濃度です。

青い線が寝室で、赤がリビングです。就寝中は寝室のCO2濃度が800ppmくらいになりますが、労働基準法の1000ppm以下です。またリビングで人が集まる夕方でも600ppmを少し超える程度の濃度に抑えられております。ほぼ理想的なCO2濃度=匂いの希釈ができております。ただ寝室を閉め切ると1000ppmを超える事もあるので、もう少し寝室の換気量を多くしてリビングを少なくしてもよいと思われます。それほど寝室の換気量は多い方がよく、リビング換気量は少なくて良いのです。更にいえば、寝室に新鮮な空気が一番に最初に入る方がふさわしいこともわかります。床下内に最初の空気(新鮮空気)を入れる方法はあまりお勧め出来ません。

殆どの設計者がリビングの換気量を多くしたがる

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「緑の家」のRA(室内空気の吸い込み口)は脱衣所にある。この事で洗濯物も乾きやすく、且つリビングが換気経路になりやすいので、リビングの換気量を減らせる。

シックハウスの法律では、気積によって換気量を決めているので世の中の多くの設計者は、リビングの換気量を寝室より多く計画します。しかしリビングは上の実測結果からも換気量は少なくて良いのです。特に「緑の家」ようにRA(換気の室内空気吸込口)を脱衣所に配置すると、換気経路は一般的にリビングを通るので基本的に0でも可能です(デシカのような除湿された換気空気は別)。ですので私はリビングに直接吹き込む新鮮空気を0にする事もあります。このように設計者が目的に合った調整しないと、やたら換気量が多くなり光熱費がかかったり、湿度が下がらない家になります。しかしこの設計手法を世にはっきりと宣言すると・・・業界からの大反発がありそうです。しかし事実は・・・上のグラフのとおりで理想に近い換気なのです。

換気はまだ過渡期

建築基準法とシックハウスの法律からいえば、窓のあるお風呂とトイレに換気扇の設置義務はありませんし、ましてや換気量の規定すらありません。そこでオーブルデザインの「緑の家」は数年前からお風呂場はCFで、トイレは局所換気(都度換気)にしております。日本において法律による換気概念が導入されてからまだ10年ちょっと・・・。これからようやく始ったアクティブ(機械)換気・・・今後どのようになっていくのでしょうか。

今回は寝室の換気量が優先でリビングには直接吹き込み口(換気量)は0で良いとも言いました。この事が新たな提言になるか?微妙なのでもう少し様子をみて提言11に加えたいと思います。

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