美幸町の家  デシカの問題

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床下に設置された重さ160kgもあるデシカホームエアー。その問題点とは?

常時換気設備としてデシカホームエアーをもう何回か使っているが、先回に続き今回も問題が発生した。先に伝えたいが、デシカは最も快適性に特化した24時間換気システムである。

デシカの操作盤はエアコンのリモコンより単純な盤面

デシカの操作は上の写真のように一般のエアコンのリモコンより簡単、単純である。オーナーさんは基本的に「弱」か「標準」か「強」の3つのうちどれかを押せばよい。弱ならRHで大凡冬30%後半、夏60%前半、標準なら冬RH40 %、夏50%、強で冬50%、夏40%を維持しようとする。

こんな簡単な設定のためか逆に機器の初期設定はメーカーのダイキンさんが行う。初期設定とは設計風量をデシカが出すように勉強させること。よって30分~60分かけて機械に教え込むとのこと。

見学会の前日にこの設定をメーカーに行ってもらったのだが、どうもSAの風量が設計図通りにならない。RAの方は設計風量をより少し多めに、SAの総風量は設計風量より10~15%くらい少ない。おかしいが確かめる時間も無かったので、とりあえず各SAへの按分だけを正確に設定して(これはメーカーでなく浅間が行う)見学開催中に行う工事監理検査で再チェックする事にした。

そして再チェックすると・・・

やはりおかしい。SAとRAの総量が合わないと言うことは、OAとEAの総量があってなく、多少の違いなら問題ないが玄関扉に少し抵抗がかかるくらい室内側が負圧になっている。当然デシカは第一種換気システムだから屋外と屋内の圧力差は無しになるのであるが・・・。

そこで昨日ダイキンに連絡して今度はSE(サービスエンジニア)さんから来て頂き、現地で会話をすると・・・

デシカの通常設定は定風量換気(圧損が変わろうとも風量は一定のこと)であるが、一般的な定風量換気システムと違い、結構頭が良い制御をしているらしい。つまりデシカだけで換気が完結出来れば問題ないが、通常はトイレの換気と浴室の換気、そしてキッチンのレンジフードが別経路換気として存在している。特にこの中でお風呂の換気とトイレの換気が常時運転する家もがほとんどで、この別経路換気が同時に作用した時を想定し、何らかの対策がされているようだ(例えば浴室とトイレが運転していれば、過剰な排気過多にならないように何らかのことが出来るようである)。そのために初期設定では30分~60分かかって最適化を機械が勝手に行う。しかし今回は「緑の家」であるためトイレは一時スイッチで5分で自動OFFにするし、当然お風呂は風呂CFなので排気はない。つまり全体の9割以上常時デシカさんの換気運転だけだからこの校正は当然必要無い(初期設定時には風呂換気はOFFだしトイレ換気もOFFだった)。そう考えると「緑の家」の風呂CFはデシカに最適だろう。しかし・・・もう一つの落とし穴があった。それは・・・

ダイキンさんの技術資料より。ピンク部分が大事である。

高気密住宅の場合、同じように窓開け中と全窓締め中の給排気にかかる抵抗が大きく違う。特に0.2cm2/m2の超高気密だとその影響は大きい。つまりデシカが初期設定でSA、RAの片側づつ調整しているまさにそのときに、その窓開け条件が変わると、機械が誤認定して正しく設定出来ない。そういえば見学会前の最初の設定では、頻繁に人が玄関から出入りをしている中で初期設定をダイキンさんの社員さんが行っていた。そのため通常30分くらいで終わる設定が1時間でも完了していなかた。これでは正しく初期設定ができないはずである。つまり校正が出来ていない設定だった可能性が高いのである。最初からこれがわかっていれば、初期設定を行うためにの注意が出来たのであるが、そこはダイキンさんを信用していた・・・。

美幸町の家 デシカを含めた空調図1
美幸町の家 デシカを含めた空調図2

最大手のダイキンさんでもこのような知識不足のヒューマンエラーが起こる。今回は「緑の家」であり自身で換気設計して施工後に換気風量を測ることが出来ること、及びデシカのシステムを少し知っていたのでこのエラーに直ぐに気付いたが、一般的な人がこのエラーに気づくことは難しい・・・というよりメーカーに「これで設定は間違いない」と言われれば気づくことはない。そして引き渡してお住みなってからなにか変だなとオーナーさんが気付くことになる(それでも気付けばよいが)。それだから空調換気はメーカーに任せっぱなしでは・・・と思う。

空調に限らずどんなことでも同じであるが、高機能機器を発売しているメーカーの社員さんは操作マニュアルどおりだけを行うのでは無く、そこに書かれた機械の仕組みを含めた真の内容を理解しなければ、このようなエラーに気付くことはない。大事な事は「そのこと」である。

そして製造メーカーさんの矜持であると思うが・・・

「商品でわからない事は、わからない・・・といえる勇気が必要」。

これは当事務所では徹底している。設計および工事現場ではわからない事をわかったふりをすることで取り返しのつかない大きなミスにつながる。よってわからないときは「わからない」とはっきり伝えることが技術者や物作りメーカーには必要な事である。ただし当初の設定時に「デシカについてはあまり詳しくない」と言っていたのでその点はよかった。ダイキンさんには良い物を作っているのだから是非正しく理解する事を徹底してほしい。

またダイキンさんは今回の令和6年能登半島地震が原因と思われることで壊れたエアコンの無償修理を行うように指示がでているようである。この地震で壊れてしまったものは直ぐにダイキンさんの修理窓口に聞いてみるとよい。

当然デシカは再設定で正しく風量設定され現在は設計図通りの風量でSA、RAとも運転している。

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