千葉県船橋市坪井町の家 長期優良と床下収納

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木造2階建てこんなに必要あるのか・・・とも思える構造計算書一式。10年前に比べ倍の厚さになった。

先週千葉県船橋市で建築する坪井町の家の長期優良住宅の技術的審査が終わった。県外の場合はERIさんで技術審査をお願いしている。

地盤改良の資料や、HSS金物の資料を添付すると500ページを超える構造計算書。これでも必要以外は検討項目を減らし少なくしている。

長期優良住宅の場合は、近年は耐震等級3で全て申請している。等級3の場合は無難な建物形状が最も重要で、スキップフロアーや平面異形を出来るだけ避けている。よって審査側との見解の相違などなくスムーズに構造の審査も終わる。長期優良住宅の審査は新潟県内であれば民間で3社があり、県内は新潟住宅センターさんにお願いする事が多いが、建設地が県外の場合はERIさんとなる。ERIさんは全国に支店をもつ大手の審査機関であるため、仮に今回のように千葉県船橋市であると、新潟のERIさんに提出する事で千葉県のERIさんに図面や資料を確認して頂ける。当事務所は県外も多く手がけるようになり慣れてはきたが、各都市毎に審査の基準が細かい点で違う事がある。新潟県内では特に問題ない事が、船橋市や金沢市、高崎市では違う見解もあり、これらは構造審査のときにもある。県内だけに慣れてしまうと思わぬ事で審査がとまることもあるのでやはり審査がおわるとほっとする。

件数は少ないがERIさんとは10年くらいおつきあいしている。そんな中、最近の審査で2つの取り決めが行われた。

1.「緑の家」の床下収納空間とそれ以外の使用しない空間は何らかの区分けする。

2.常時床下へ空気を廻すような方式なら換気面積の気積に床下を算入する。

である。

1.床下空間の区分け

前も何回か申し上げたが、「緑の家」では法律厳守である。巷でよく見かける小屋裏収納(ロフト)と言いながら、最高天井高さが明らかに1.4mを超えている事や、床下空間を居室のように壁を仕上げたりTVコンセントまでつけている事は絶対しない。

そんな自負があるので審査機関から床下の収納部分とそれ以外を区切ってください、と指摘されれば素直に区切る。今回の船橋市坪井町の家からそのような指摘を受けた。

「えっ、明確に仕切っていなかったの?」

と聞かれればそのとおり仕切っていないことが原則で、それは・・・

長期優良住宅では、床下内は全ての箇所に簡単にアクセスできなければメンテナンス対策不十分で認可されない。だから床下内は人通口があり全てにアクセスするようにしてあるが、この人通口があると収納に使われるのでふさいでほしいとなる。この2つの相矛盾した法律に対し、原則メンテナンスを優先にする設計を行ってきた。

床下収納はメンテナンス通路があったり、狭いところも多々ある。

実際住んでいて床下が全部つながっていても「緑の家」のオーナーさん宅で床下一面を収納にしている家を見たことはない。これは1階にお風呂やトイレ、キッチンがあるとそれだけで1/3くらいのスペースは実際使えない。そして残りの1/3は通路となるので目一杯使っても1/2になる。

UB下や洗面台下はこのように配管があるので収納には実質使えない。メンテナンスのみ。

しかも床下収納は何回も申し上げているが、耐震性に影響を及ぼさない。床下スラブ上に置いた荷物は全て直接スラブに伝わり、家に対し水平力を生み出さないのである。ところが小屋裏収納や階間空間の収納は、そこに物があるとそれは地震力増になる。根本的に全く違うのが床下なのである。

2.床下空間の気積不算入

平成15年施行のシックハウス法により居住部分の換気設備設置が義務化され実質0.5回/時間以上の換気が義務つけられた(装置設置の義務づけ)。「緑の家」は床下暖房という空調方式をとっているので、床下の空気と居住部分の空気が混じり合えば床下内の気積に対する1/2の換気量を追加確保しなければならない。一方「緑の家」の換気は床下内にSA、RAともに設置していないので床下暖房を使わないときに床のスリットの蓋を閉めることで床下との空気の遮断が可能。従って通常の常時換気量は床下収納を含まない気積の1/2となる。これで設計審査を受けている。そこで審査機関から「スリットの蓋を明記してほしい」との要望があり記載している。実際「緑の家」では下の写真のように蓋がついている。ところが既製品スリットの多くが蓋がないことが多いのでこの場合は床下を気積に算入しなければならない。

「緑の家」の床下暖房用の床スリットには蓋があり、冬期以外は閉まっている。矢印は蓋を示す。

また「緑の家」では床下暖房を使っているときには、お風呂場の排気換気扇をONする事で床下面積21坪(71m2)までなら問題なく対処でき、それ以上大きい場合はトイレの排気換気扇を常時ONすればシックハウス法に合致する。「緑の家」の換気方式はそのように当初から考えられている。この換気扇をONするか否かは建て主さんの判断としているがONすれば換気量が増えRH(相対湿度)はさがり、排気によってロスする暖房エネルギーは増大し室内空気がより外気に近づく。

床下内に換気のSA(給気)やRA(排気リターン)を設置する場合は、床下暖房「する」「しない」に関わらず床下内気積を居室の気積に加算する必要がある。当然床下暖房を行う場合にも換気量を簡単に多く出来る換気システムにする必要がある。

さて話は船橋市坪井町の家に戻るが、建設会社さんが決まれば直ぐに着手できる状態まであと少し。船橋市役所に長期優良住宅の技術審査書を提出すればほぼおわる。

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