上山の家は「土間キッチン」がメイン。
見学会でも土間キッチンはどのような使い方をするのか?
と問われたのでお答えする。
日本式対話は食の時間 現代版囲炉裏
日本の文化として、リラックス出来るのは食事時である。お茶ででもよいが、食べ物で人をもてなす事をしているときに対話や談議は生まれる。これは古くから囲炉裏として知られている。
これには異論が少ないと思われる。
その食事を更に楽しくするのが現代版「囲炉裏」である土間キッチンである。
時間軸を考えた土間キッチン
家を造るにあたり多くの建て主さんは、今の生活を想像してプランの希望を私達に伝える事が普通。しかし・・・今の生活が同じ状態で長く続くことはない。
今の生活とは・・・
お子さんがいらっしゃればお子さん中心で考えるし、その時の友人関係も同様である。
しかし人は時の中で生きてゆく・・・。
つまり新築時お子さんがまだ小学生なので家族の間にはお子さん達との時間が流れる。
そして10年後お子さん達は大学または就職してその家から離れることも多い。となるとその家族の間にはご夫婦のみの時が流れる。ご友人も子供のママ友から他の友人関係に変化がおきるころ。
その時にその家の中心の「家族の間」はどのような使い方を想像するのか?
そして更に10年時は流れる。
家の主も社会での活躍も終盤になり、家でご夫婦など2人きりで楽しむ時間がおおくなる。その時の友人関係もかわるはず。再びママ友のご友人も同じ状況であるため再び再会することもあるだろう。また一方孫も来るかも知れない。ご近所さんとの繋がりも増えるかも・・・。
これら時間軸を考えた時、フレキシブルに対応出来る空間を目指したのが土間キッチンである。
土間キッチン 子供中心の時間
最初は子供中心なのでコンクリート堅い土間には絨毯やカーペットが敷かれている。この上で子供たちと床が傷つくことを恐れずに遊ぶことができる。また子供が小さいので休日はアウトドアーで平日はインドアーとはっきりとしている。
土間キッチン ご夫婦の時間
子供が親から離れると(高校生、大学生など精神的も含む)、ご夫婦が中心となる家族の間となる。この時土間に敷かれていた敷物はなくなり、本来の土間コンクリートが表われる。裸足から中履きのときになり、片付けが大変なアウトドアーはもう少なくなるこの時期。だから時には子供達と一緒に土間キッチンでお酒を飲んで焼き肉を家内ですることも・・・。
この時活躍するのが土間の独立性。
実はこの上山の家はプライベート空間と家族の間が換気システムが完全に分かれている。つまりプライベート空間は床下暖房や床下収納が有るので夏季でも空調は欠かせないが、土間キッチンは床下がないので通風の心地よさも味わうことができる。つまり開放的な夏窓開け使用ができる空間である。これって凄い事。
よって煙りが立ち上る焼き肉や焼き魚がこの土間でできる。換気システムが独立して空間も仕切る事ができるので匂いが移らない。
洗い物も普段のキッチンが使えるので後片付けも簡単。しかも冷房も直ぐに切り替えれば再び空調空間に直ぐに変る。床下空間をなくす事で温熱的に大変フレキシブルな空間となる。
キッチン土間上部には煙抜き窓もあり、速やかに煙りが抜けていくことになる。
土間キッチン 人生を語らう時間
新築後20年もなると子供達夫婦と一緒に食事もするだろう。またご近所さんや友人達とも再び集う事になる人生後半の時間。この時に・・・
土間キッチンは外ばき(土足)で使う事になる。
玄関から土足で入る事ができる空間はまるでカフェ・・・
気兼ねなくお菓子の持ち込み、料理の手伝いなど汚れる事、または汗まみれの作業中の一息でも靴を脱がないこの土間は最もリラックスできる空間。また、趣味の薪ストーブも良いだろう。半分室内で半分屋外的な土間キッチンでの生活は、最もゆとりのあるこの時期を満喫できる空間となる。時間にゆとりが出来れば管理が難しい薪ストーブも思い切り楽しむ事ができる。薪の汚れも気にならない。正に何事にも縛られることのない自由な空間なのだ。
超高断熱と冷暖房しない時を選択可能
この土間キッチンの断熱スペックはUa値0.23w/m2と超高断熱である。一方庭に出入り出来る窓と煙抜き窓を開ければ、家中に風がとおる。この時にプライベート空間である個室と仕切る事が可能なので、寝室個室は空調状態を維持できる。
上でも書いたが今までこれができなかったのは、床下空間を内包していたことと、換気システムがおのおの独立していない事だった。この二つを解決したのが上山の家の囲炉裏型土間キッチンである。
ここ丸6年。「て・こあ」で土間キッチンの素晴らしさと空調に縛られたくない住まい方を選択できること・・・
つまり冬型密閉住宅と夏型開放住宅で楽しむ事を両立させる家をようやくこの上山の家で成就出来たとおもっている。今後の「緑の家」の指針的存在となるだろう。