間柱のこと

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今月号の日経ホームビルダーに耐力壁として貼る合板の施工方法の注意点が記事としてあった。

日経ホームビルダー11月号の記事からワンショット。

その中で間柱を留めつける釘についても「誤り※」として記載があった。
※「誤り」との表現は「正しくない」との強い表現。

白い矢印が間柱でピンク色が柱。「緑の家」の間柱は45の巾で奥行きは12mmと一般的な間柱より1.5倍大きい。

・・・

耐力壁として使う合板止の留めつけで、間柱の留め付け釘で規定があったか?

と疑問に思い少し調べた。

「緑の家」は許容応力度設計で行うので何時ものグレー本を見る。

すると、告示1100号では間柱の留め付け釘まで指定はない。

合板による耐力壁は実験で確かめられた数値を使う他、このグレー本にある許容応力度設計の詳細法である合板の釘のせん断耐力から計算された方法でもOKとなっている。その詳細法をみると・・・

このように間柱への釘打ちは計算上の釘本数にカウントは出来ないことになっている。つまり間柱へ打ち込まれた釘はせん断耐力として見ることができないとの解釈になる。

また更に・・・

壁の耐力を決定する実験方法においても・・・

間柱を上下横架材への留め付る方法の規定はない。ただし実験に当たってこの留め付を限定していたなら、条件として間柱への留め付方法が規定される。

つまり・・・

告示で示された耐力壁を用いる場合において、間柱への釘の種類と本数は規定がないということになる。とは言っても留めつける釘がなんでも良いとは限らない。間柱の耐力壁での役割は、面材の面外座屈を防止する事である。一方耐力壁ではない部分の間柱の主目的として、内外壁材の保持と壁の耐風力の伝達となる。外壁力の保持は鉛直方向であるから留め付釘への負担はないとすると、風圧力が伝達できるかを判断する事になる。

住宅金融支援機構の標準施工瀬では間柱の留め付はN75を4本斜め打ちであり計算によって検定をしてみる。

間柱の横架材間の距離を余裕をもって3mとし、間口方向への負担は0.455mとする。2階の風力が高く、引き抜きの釘保持力は杉、スプルスなどが低いのでその条件で計算する。

2階間柱:杉30×105、桁・胴差し:スプルス、(fb:21N/ mm2 、 fs:2N/mm2)
l:3m、負担巾:0.455m、基準風速:30m/s(地表面粗度区分3)、耐風等級2、鉛直力:0 C(風力係数):0.8(→0.96等級2)

とすると間柱端部に働くせん断応力は

Q=642.2N(65.5kg)となる。

釘N75の短期せん断力は558.6N/本(57kg)なので4本の内3本が正しく施工されていると1675.8N(171kg)となる。ここで仮にFN釘とした場合、N釘に比べ80%の耐力としても1340N(136.8kg)であり安全率2倍でOK。

続いて
N75の引き抜き耐力は73.5N/cm(7.5kg/cm)であるが斜め打ちにすると耐力が0.83になるので、61N/cm(6.2kg/cm)とし釘深さ4cmで3本が有効に働くとすると732N(74.7kg)となる。

642.2N<732N・・・OK

となる。

ここで仮にFN釘を使うとせん断検定では問題ないが引き抜きで判断すると、

732N×0.8(FN釘低下分)=585.6N
642.2N>585.6N・・・NG

釘の引き抜きでNGとなる。上数値から間柱は釘の引き抜き力で決定される。

しかし実際は天井・床面材でも間柱せん断力が支えられるので、仮に釘だけでNGとなったとしても間柱と桁、胴差しの接合部分の耐力としてはまず問題はない。

間柱の接合部で注意しなければならないのは、耐力壁の間柱ではなく吹き抜けや階段室の足元と、勾配天井のような野縁が斜めになって水平力の伝達が出来ない構造の間柱上部の施工に気をつける必要がある。また引き抜き力で端部耐力が決定するなら、くぎより引き抜き力が大きいビス(許容せん断力の明らかな)の方がよいとも言える。

住宅金融支援機構の仕様書の冒頭には、
構造計算による場合はそちらを優先しても良いとの記載があるので、根拠があればOKと言える。

「緑の家」では吹き抜け部分の間柱施工(端部接合部)には注意が必要とおもうが’、床と天井がある耐力壁の間柱は特に「誤り」との強い表現とは思わない(本文中アンダーラインがないのでフラット35を使っていても強制ではない)。当然、住宅支援機構の標準的仕様に従うことが基準であるが違うからと言って誤りでもないと感じる。

ただ・・・FN釘は本来建築用の釘ではないので建築現場からの排除は好ましいと言える。

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