先日、日精プラスチック+BB研究会主催の講習会に行ってきた。
HEAT20のG3とは
まずG3についての詳しい説明はこちらで。
今回は民間団体(事務局はIBECだが)ではあるが最も断熱水準に影響力のあるHEAT20で、新たな断熱強化水準の案としてG3の説明があったとのことで、そのメンバーである住宅技術評論家の南雄三氏による解説を講演で拝聴した。
HEAT20のG2水準では全く興味が無かったがこの度のG3水準には興味がある。というもの新潟県の地域のG3水準値はUa値で0.23w/m2kという「緑の家」のAsグレード同じ数値となっているからだ。
G3では温暖地の関東でもUa値は0.26w/m2kと「緑の家」Aグレードと同じ超高断熱の水準値となっている。これは世間から見れば驚異であるが、11年前にこのHEAT20の代表である坂本先生がそれを匂わせる事を発表していた。下は10年前(2009年のブログ)↓。
旧Q値1.0w/m2kは現在のUA値では0.29w/m2K以下のことであり、その性能で東京なら日射だけで内外温度差20度になると読み取れる。東京において目指すところはここであろう。
しかしそう単純な理由ではなく下の2つの評価がこのG3の意味づけとなるらしい。
それがNEB水準とEB水準であり、表にある想定される暖房を行ったときに4から7地域において体感温度が15度未満になる割合が3%くらいとなっている(但し想定代表都市のみ)。一方省エネ基準と比べたEB水準時の全館連続暖房において暖房の負荷削減率が5から7地域で40%であるともされている(但し想定代表都市のみ)。しかしNEB水準及びNB水準の間欠暖房時の想定では新潟県のような日射が少量でしかも斑日照では、とても実現不可能な環境であるためこの2つの理由は意味がないと感じる。そのため地域補正の式も用意されているがやはり全館連続空調時の冷暖房費用につきる。
※NEBとはノンエナジーベネフィット、EBはエナジーベネフィットとのこと。
G3水準と「緑の家」の性能比較
新潟県では冬期日射が望めないのでNEBの水準はあまり意味が無く、断熱性能q値がそのまま暖房負荷に比例すると考えらる。つまり換気負荷に変化がなければUa値と暖房負荷は比例するとしてもよい(UA値が0.2以上において)。となるとG3水準のUa値と「緑の家」の家Ua値を比較するしか評価はできない。
「緑の家」のAグレードで一般の条件であればUa値は0.23w/m2k以下になるが、窓の大きさ如何ではAsグレードにしないとUa値は0.23w/m2以下にならない時もあるはず。上は大野町の家のUa値0.21の計算シートでAsとAグレードの比較。通常であればわずか0.01w/m2Kしか変わらない(しかし枠の防露性能はAsの方がランク上となる)。この結果なら・・・
実質G3=As(A)グレードとなる。
つまり時代がようやく12年前(2007年決意)の「緑の家」に追いついてきた。
となると常に時代を見越すのが「緑の家」。12年前に設定したAグレードUs値0.25w/m2k以下を見直す必要があるかという問いに、この一年間の間で答えを出すことになるだだろう。
超高断熱Ua値0.23W/m2k以下の「その先」
ヒントはこの講習会でも説明があったとおり、
全館暖房+熱交換換気の条件で暖房負荷だけをみると、
Ua値0.87w/m2kを2倍の断熱にして0.46w/m2kにすると年間暖房負荷は30GJ減る。更にその倍の断熱性能の0.23w/m2kにすると11GJ減るが、0.23W/m2Kの倍の0.12W/m2Kにしても4GJしか減らない。しかし0.23W/m2Kから0.12W/m2Kにするためには断熱材厚を倍にして更に窓性能も倍以上にする事になる。なぜなら熱交換換気は既に温度変換効率で90%以上が一般的で現時点以上に効率は上げることが不可である。このため0.12w/m2Kでは全体の1/2~2/3を換気負荷が占めることになるからそれは減らしようがない。よって他の部分でこれを補うため損失の最も大きい窓Uw値を現在の0.8w/m2kから0.3w/m2K以下にしなければならないが、こんな超高性能な窓は現時点で存在しないし開発の見通しもない。つまり0.12w/m2k は現実的でないUa値であるといえる。つまり0.23以上は当面ないだろう。
一方暖房だけではなく冷房負荷を見ると全館冷暖房で行う冷房負荷は暖房負荷にせまる勢いである(上図右のグラフ)。全館冷房をしないと様々な弊害がでることは以前このブログで申しあげたとおり。私は全館冷房が超高断熱時の標準的な冷房方式になると思うが、冷房負荷を減らさないと暖房負荷より問題が生じることも考えられる。冷房負荷を減らす・・・つまり通風による冷房負荷低減を考えるのが一般の考えであるが・・・。
冷房負荷低減は通風では無理
今後の冷暖房のエネルギーを減らすには、真夏(7,8月)は「通風ではない!」と考える。
なぜなら通風では絵に描いた餅となるから(無論5から6月と10月の通風は行いたい)。
現在のほとんどの住宅地では夜間通風はおろか日中の通風も防犯的観点から行うことは不可能である(これは私の考えでなく多くの居住者のヒアリングから)。共働きが普通になれば日中窓の開け閉めは難しいし、昨今の不法侵入等犯罪多発からみると夜窓を開けたまま寝ることは普通の神経では出来ない。では窓の代わりに通風装置を新たに取付けるであろうか?否、それよりも日射遮蔽が最も重要であると気がつくはず。冷房負荷の7~9割は窓から日射進入と換気負荷となる。換気負荷は当然全熱交換型換気を採用しないと減ることはない。しかし現時点での換気機器ではほぼマックスに近い熱交換率であり向上は望めない。このため窓からの日射遮蔽が冷房負荷の最も重要な改善ポイントである。その一方この性能を高めると冬期の日射取得が不利になるため、ガラス特性での日射遮蔽よりも外部装置をつけて夏だけ低減できることが必要。さらにいえば要らない日射があるときだけ日射を遮る装置がよい。それが「緑の家」では「簾」や「ターポスクリーン」そして外部ブラインドとなる。
そう考えるとサッシメーカーさんは樹脂サッシの次ぎに何に投資をおこなうか?そう外部ブラインドの安価安定供給に重きをおき、投資するのである。
そうか、外部ブラインド開発にいち早く手をつけコストダウン出来るメーカーが今後大きく成長するだろう。早速株買いをおこなわなければ(笑)・・・。
現在最も安価で確実な日射遮蔽
無論それは「簾」と今回お勧めする「ターポスクリーン」である。簾についてはその日射遮蔽性能については連載したブログをご覧頂きたいし、その3も現在準備中である。
しかし・・・
簾の日射遮蔽は省エネ基準では認められておらず外付けブラインドと紙障子は評価方法があるが簾は現時点ではない。しかし簾の効果は外付けブラインドに匹敵するほど大きいことを実感しているし、この後予定している「簾を科学する その3」でも詳しくご紹介する予定である。是非簾を日射遮蔽装置に加えてもらいたい。
G1でもOK!多様な考えは民主主義の基本
さて今回の主催であるBB研究会では、
関東に限り、関東に限り・・・
G1レベルの断熱とプランと窓による工夫、そして間欠居室暖房使用でG3レベルの暖房負荷と同じくなる実例をシミュレーションで示している。つまりG1レベルでOK。もちろん最低温度である15度以上なども踏まえている。
一方その手法は新潟県では実現不可能であるが、環境条件が違う地域ではそこに根付いた価値観と文化が生まれる。それによって多様な断熱の考えがあること、そしてそれを理解することは民主主義の基本である。よってこの関東でのG1レベルの断熱性能と窓、間取り、仕切り、縁側、開けたり閉めたりする間仕切り+間欠暖房による生活でもOK・・・それは声を大きくして主張したい。この関東と同じような地域が占める人口の割合は7割以上になるとも聞いているから、上のようなG3性能でかつ全館暖房をする新潟県的解決方法は大変少数派となる。しかし仮に少数でも地域重視は建築学の根幹となる考えであるためこれも声を大きくして主張したい。そして多様な思考を尊重するためにも2020年断熱義務化は見送られて良かったのではないだろうか。
コメント
埼玉県で生活していて、外付けブラインドを使用しているお宅を見たことはありません。
浅間さんの仰るように国内メーカーが頑張ってもらって、メジャーなものになると良いなと思います。そして私が新築する際に導入しやすい価格まで下がっていることを期待します(笑)