夏の低RH(相対湿度)を改めて考える。

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最初に・・・夏の住宅内は低湿度が絶対条件とは思っていないのでカビが生えないような概ねRH(相対湿度)65%(一時的70%)以下を維持出来るならあまり気にしなくても良いと思っている。

そんな中、全館空調※の特集がいつもの日経ホームビルダー10月号に載っていた。


※この場合の全館空調とは各部屋にダクトなどを用いて冷気や暖気を換気をまとめて各空間に送り込み、半自動で家中をセントラル空調管理する方式。「緑の家」でははあまり行われない。

最近は夏期の室内RH(相対湿度)に関心が高い。益々真夏の通風無しが主流になる気がする。

特集は10ページくらいあるがその中の一つの見出しに全館空調で満足度は高いが「湿度が課題」とあり、巷の高性能住宅において温度制御は当たり前で次は湿度コントロールといわれ、特に昨今では低湿度空調に人気があるのでこのような見出しになっていると思う。「緑の家」でも24時間家中空調は行うが、ここで示す全館空調ではない。

低湿のためにはどのくらいの排湿が必要か?

新潟県の真夏である8月前半の露点温度は24.2度くらいで、この時の屋外空気の湿気量は19g/kgだからこれと室内空気の27度のRH(相対湿度)55%の差が6.5g/kgであると、30坪くらいの家の120m3/hの換気では24L/日の湿気が換気だけで入ってくる。更に人が生活すると4人くらいで一日あたり10Lの水蒸気を放出すると合計で34L分の除湿を行わないと真夏はRH55%を維持できない。34L/日→1.4L/hとなり、再熱除湿が強力な日立のエアコンでも通常1.2L/h※なので一台のエアコンでは無理と言うことが計算で普通にわかる。故意に換気量を半分に(60m3/h)下げれば何とかなるが、それでは法に触れることもあるので勧めない。
   ※除湿量は室内環境によって変わる。

全熱交換換気でエアコン2台必要

そこで全熱交換タイプの換気扇を使う。すると換気で室内に入ってくる水蒸気は概ね10~15L※にへり、RH(相対湿度)55%にするための合計排湿量は20~25L/日→0.83~1L/hとなんとかエアコン1台で再熱除湿(又は定格冷房)すれば可能なくらいなる。但しこれは全熱交換換気でもお風呂にCFを使用した場合である。お風呂の換気を局所排気とし全熱交換換気をしないとすると、やはり1L/h以上の除湿が必要で実現がむずかしい。つまり風呂CFを使用しない状態で安定的にRH(相対湿度)55%以下にするためには、冷房期にエアコンは2台(再熱除湿搭載)必要になる。   ※機種によって変わる。

何故低湿度に人気があるのか?

室内がRH60%以上でOKとすればエアコンは1台でもよく、「緑の家」では何が何でもRH(相対湿度)55%以下としなくても良いと思う。しかし私を含む大半の「緑の家」のオ-ナーさんはRH(相対湿度)50%台を好んでおり、除湿にかかる追加電気代もあまり気にしないで再熱除湿もする。なぜかは何度も申し上げたとおり、低湿度で高温の冷房空調のほうがより多くの人(家族も含めて)の好みに合うことを体験しているから。
この低湿度の先駆けはビル空調であり、6年くらい前にその大手ダイキンさんから家庭用デシカが発表され一躍話題になった。当事務所でも何回かデシカで空調設計を行っている。

家の中でも熱環境は違うし、人の感覚も違う

人の感じる夏の快適性は多種多様であり、同時に家内でも場所によって実質感じる温熱感も結構違う。室温27度RH(相対湿度)55%でも窓際などに近い人は窓からの輻射熱で暑く感じやすい。一方じっとしている人、冷え性の人、窓際から離れている人は暑く感じない。このような違いを少し緩和許容してくれるのが低湿度(50%未満)の良いことである。汗ばむと服についた汗で気化熱が大いに働いて急激に体を冷却できるし、静止して汗が出ない状態なら気化熱は少なく室温は比較的高く冷却は穏やかであるので40%台の低湿度に不満をもつ人はすくない。つまり低湿度は「家族のバラバラな要望」をうまく許容できる温湿度環境となりやすい。だから支持され人気がある。
一方過去に人は湿度に対し敏感でないとの研究報告が多数あるが、夏期の快適さは人の活動量、着衣量、脂肪率、性格、年齢、性別、人種(民族)、育った地域、その他諸々によって多種多様と日常で感じており、研究室内の恒温環境やサーマルマネキンではなく、実際の家で比較する事においてはまだ研究半ばであるかもしれない。

風呂CFを採用した全熱交換型換気

お風呂CF設置が真夏の低湿度環境に有効だとのことは何度も説明しているのでここでは割愛するが、「緑の家」が全熱交換型換気扇を採用する理由は、

  1. 冬に換気扇の近くでも寒くない事
  2. 夏の低湿度化に有効な事

でありそのため諦めた事は・・・

  • 設備の複雑化
  • メンテナンスの煩雑さ(衛生維持管理)

である。冬に換気扇の近くが寒くても許容でき、夏の低湿度化は再熱除湿を大いに利用するので良いよ・・・ならば「緑の家」で12年前の標準で使用していた機外静圧がある(花粉フィルター設置可能な機外静圧)セパレート型第一種換気扇が単純でベストに近いと思う。

しかし1と2が大事ならやはり風呂CFと全熱型熱交換換気扇の組み合わせがよいだろう。その中で、ダクトの有る無しは建て主さんの判断としている。

風呂CF+全熱換気+再熱除湿ACでRH45%以下が可能

3年前に測定した「緑の家」のオーナーさんから夏でも床下暖房を使う事や、CF+全熱+再熱の方法で25度RH(相対湿度)45%程度をデシカ無しで実現した結果を頂いた。ここまで低湿化すると除湿にかかる電気代は流石に大きいが、低湿にしなければならない環境なら、簡単に低湿が実現できる家の構造と設備計画が重要である。

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コメント

  1. Asama より:

    阿武隈高地様
     
    コメントありがとうございます。相変わらず思考・実施していらっしゃるみたいですね。その熱意はすばらしいです。

    本文中にあるとおり「緑の家」は特別な低湿度に拘りませんから、低湿度が好きな人が再熱除湿運転で直ぐに実現可能な家の性能なら今のところ問題無いと思っております。

  2. 阿武隈高地 より:

    ご無沙汰しております。
    工夫で低湿度は比較的簡単に出来ます。
    エアコンを換気装置にします。
    換気空気120m3/hを全量エアコンを通して除湿させます。
    例えば10℃に換気空気を冷却すれば、
    顕熱=(24.2℃-10℃)x0.34w/m3x120m3/h=579w
    露点温度10℃絶対湿度9.4g/m3
    潜熱=(19g/m3-9.4g/m3)x0.68w/m3x120m3/h=783w
    全熱=579w+783w=1362w=1.36kw
    室温にするための最大の熱は(27℃-10℃)x0.34w/m3x120m3/h=693w
    内部発生水蒸気=10000÷24時間÷120m3/h=3.5g/m3
    9.4g/m3+3.5g/m3=12.9g/m3 室温27℃では相対湿度50%になる。
    一応は内部発生水蒸気を薄める形で計算しましたが実際はもっと下がると推定出来ます。(換気風量は少なめですが実際に夏は室内50%以下に出来ています)
    デシカは室内の空気を除湿してません、換気風量も少ないです(最大200m3/h)。
    少ない換気風量で内部発生水蒸気を追い出し換気して50%以下の湿度にしてます。
    室内空気を除湿するより換気空気を除湿して除湿した空気で換気する方が室内湿度をより下げる事が出来ます。
    機会が有りましたらデシカもどきのエアコン換気装置の試験をして見て下さい。