新たなる古い民家のリノベ-ションを・・・準備

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住宅の玄関部分は過去何回か増改築が行われており、この玄関は使用されている建材から50~60年ほど前に増築されたと思われる。一方内部の主部分は 築120年とのこと。

8年前から行われ現在も続いている築100年の「て・こあ」のリノベに続いて築120年前の古い民家のリノベ-ションが始まる。

白く見える塀(土留め)は中越沖地震で修繕されたため、ここだけが新しい。奥に見えるのが築120年の古い民家。

リノベーションで一番大事なことは耐震性の確保である。その点この建物は14年前に発生した中越沖地震では、震度6弱の地域であったにも関わらず建物はほぼ無被害。一方外構の塀は被害を受け大規模補修した。なぜ建物が無被害であったか・・・これはこの建物が平屋であったことが大きい。また地盤がよいところだったため地震での入力周波数が少し高くキラーパルスが発生し難い土地であったことも大きい。実際無被害だった事を考えるとこの古い民家の耐震性はあると判断できる。

この部屋は天井以外大きく手が加えられていない部分。奥に見える畳上の白い部分はカビ。可動している大時計は精工舎製の大正の頃でなないかと思われる。また近年修繕された囲炉裏は木が燃やせるくらい大きい。

耐震性の確保が出来たら次ぎにすることは耐久性・・・それは雨漏り防止と湿気によるカビの抑制である。
新潟県の古い民家はカビ・湿気との戦いであり、その上寒さまで加わると最悪の居住環境となる。このため若い世代に引き継がれたとたんに手放されることになる民家が多い。無論田舎で職、娯楽が無いことが最も大きな理由であるが、歴史が刻まれた建物を壊すまでに至るのは・・・建物が「古くなったから」であると私は強く思う。

当然こちらの建物もやはり湿気で相当痛んでいる。湿気の原因は当然床下からの流入である。畳を剥がし床下地板を取り払うと、カビだらけの大引が目に入る。更に床下をのぞき込むと、地面の上にはかつての土間の三和土の跡がくっきりと残っている。当時の三和土ならそこにカビは生えないだろうが、上に床をつくり畳を置けば必ずと言って良いほどカビるのが新潟平場の土地。

コストを抑えつつカビの生えにくい床をつくることがリノベーションの第一歩であると私は考える。それが可能になってはじめて他のことまでできるようになる。つまりカビの生えにくい家は超高断熱高気密化よりも大切な事になる。今回はカビの生えにくい床構造とするが高断熱高気密は予算の関係上行わない。オーブルデザインらしくないと思われる読者さんがほとんどであると思うが、「緑の家」は様々な個性がある。

さて・・・古い民家というと大きな曲がりくねった梁を想像するだろうが、この民家では一切そのような梁は見当たらない。そう全て天井で覆われている。

差し鴨居は3本が松で一本がケヤキとなる。大黒柱はケヤキだと思われる。

以前も説明しているが、昭和初めまでは裕福だった家ほど天井がある。天井がない家は冬や夏の温熱環境が大変不利になる。また天井があるのは、囲炉裏で焚いていた燃料は「炭」であり「木」ではない表われ。いまでも同様で炭は木や灯油、電気と比べると超高級燃料であるから「天井=裕福なつくり」ともいえる。

天井板は目透かしの無垢の木と珍しい高価な仕様。煤けていないので囲炉裏で煮炊きを止めてから天井を貼ったと思われる。

使われた梁などを見ると、旧オーナーさんが言われるとおり築120年ほどではあるが、ここ60年以上は囲炉裏を煮炊きで使っていないらしく、柱や梁は煤けているが壁や天井は煤が全く付いていない綺麗なままである。囲炉裏は炭で使うと綺麗なままなので、天井はこのままここは剥がさずに使いたい。

この古い民家は内部の什器もそのまま置いてあり、下の茶箪笥と桐箪笥の新旧品もそのまま残されている。

奥の茶箪笥は素材(南洋材)から戦後の昭和中期のものであると推測できる。手前は新しい桐箪笥。
この茶色の古いタンスは外箱は杉のようだが引き出し部は桐のようである。大正か明治の頃のものであると思われる。

虫くいもすくなく程度の良い古い桐箪笥は竹か木の釘で留め付けられている。

この建物ではこれら家具もそのまま使い明治後期のころを雰囲気を残す建物にしたいと考えていると・・・ 新しい住人(オーナー)が 言っていた。

限られた予算の中、新たなリノベーションがスタートする。

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