大変な疑問・・・基礎断熱の熱損失

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また事務所内では騒然となっている。

明日から改定される外皮熱貫流率UA値の計算方法。ところがその計算方法が一向に見つからないので、評価をおこなう確認申請センターなどに確認すると・・・

標準の計算方法はまだオーソライズされていない。ムキになって探すと建研のHPからリンクがあり、何カ所かたどってようやくたどり着く深い深い階層に隠されていた。確かに隠されていたというくらい見つけられないように意図的になっているようだ。

内容をみると・・・

確かにこれはできる限り密やかに改訂を行わなければならないくらい大きく変わる内容である。

簡単にいうと・・・

UA値0.25W/m2Kで長期優良住宅の認定を受けた「清五郎の家」で新たな計算でUA値を算出すると・・・0.32W/m2Kとなる。
基礎の熱貫流率は0.19W/mKから1.026W/mkと一桁あがり、つまり約7倍悪くなったのである。
このまま行うと省エネ基準からこぼれる家が続出するかも。

一体何が起こったか?少し説明をする。

まず今回の改定は基礎断熱時における熱の逃げ方が大きく見直された。

そこで読者の皆様・・・この4年前のブログを思い出してほしい↓。

驚き!スラブ中央部から逃げる熱を熱流計で実測。その5 補足   床下暖房は省エネでは無い!
今年の最初の連載・・・「驚き!スラブ中央部から逃げる熱を熱流計で実測」は4のまとめで終わりました。ただわかり難いとのこと...

この時に既に基礎断熱における熱の逃げ方は地中出は無く周囲へ向かって大きく逃げると私は言及している。それを図に表したのが下の図。

クリックで大きな画像に。地面が乾燥していれば熱は真下大地には逃げず、外周囲に向かって逃げる。

まさにそれを解析して数値化したのが今回の改正と言える。

さてこれから一つずつたどっていく。まず最初に新たな基礎断熱計算方法はIBECのHPで改正省エネのテキストの5章の47ページに少し記載がある。

これによると3つのいずれかの方法で基礎断熱の熱貫流率を算出する。
まず一つ目は全ての基礎断熱にあてはまる熱貫流率である。つまり断熱材が有る無しに係わらず当然断熱材の厚さも無視してよい数値。なんて乱暴な決め方と思ったが、実はこのあとで出てくる標準の計算方法(表から選ぶ)でも多少よくなるだけであまり変わらず、詳細なWebプログラムでも変わらないらしい。つまりそれほど悪い数値を当てはめるのである(実際悪かったということだろう)。

さてではその数値だが、このIBECには計算方法はなくなんと建研のHPにしかない(と思う)↓。

https://house.lowenergy.jp/

ここから時期更新版をクリック

すると次の画面で黄色い矢印の住宅・住戸の外皮の外皮性能の計算プログラムをクリックしないで、小さく書かれたピンク色の矢印をクリック。間違ってもWEbプログラムをクリックしてはだめ。そして資料の方をクリックする。

ここまでで既にいやになった方もいるだろうが、これからまだまだ続く・・・

さてめでたく2021.4とまだ来ない明日の期日が書かれた資料に到達する。

このマニュアルの1ページ目のリンク先をクリック

すると下の建研のHPに行くが、ここからが更に難しく、このページをあけただけではわからない。

ここまで開いても目的の場所にはたどり着かない

ずプルダウンを何回かクリックすると下の方に・・・ピンク色で示した

「4.2技術情報」の項目で「次期更新版」をクリック。

ここまでプルダウンして初めて目的のリンク先が見える。

この時点で既にどうのようにここにたどり着いたか頭が混乱しはじめる。

・・・がようやくそれらしい所にきた。

赤い矢印の第三章三節の熱貫流率及び線熱貫流率をクリック

この中の・・・3-3-10にようやくその計算方法等がある。

明日の日付の資料

しかしあるのは3つの計算方法の内の一つである決められた数値で断熱材の厚さや基礎の形状を問わない熱貫流率である見慣れた1.57W/mKのみ。まぁだから悪い数値だけど仕方ない。他の方法ならもっとよいと思い次のページをめくると 

あれ他の2つがない・・・あきらめずにページをめくると・・・

20ページも離れた3-3-30に「付録D」として解説があった。

そして3-3-32に基礎形状と断熱材の位置と厚さによる表が用意されている↓。

これで「緑の家」のBグレードの基礎断熱に当てはめると・・・

熱貫流率は1.20W/mkなる。先ほどの断熱材が全くない基礎断熱の熱貫流率が1.57W/mkだから・・・1.3倍だけ熱が逃げにくくなっている。

あれだけ厚い断熱材120mmが立ち上がりにあり、スカートも60mmを水平方向に800mm敷いてたった1.3倍しかよくなっていない事に驚く。

次ぎに「緑の家」の基礎の立ち上がりには厚さ120mmのネオマフォームを設置しているが、これを60mmと薄くした方が熱貫流率が下がる(つまり断熱性能が上がる)ことに驚く。わずか0.01W/mKではあるがよくなっているのだ。

これは4年前の私が書いた冒頭で紹介した図のとおりで

熱はスラブを熱橋として外周部に逃げているので、立ち上がりは放熱フィンのような役割にもなる。この時に内側の断熱材が厚いとリターンする熱が少なくなり外部に放出される熱が多くなると理解できるので納得。それほど土と比べるとコンクリートを通して熱が逃げやすいのであろう。

さて次ぎに驚いたのが、この3-3-32はベタ基礎で内断熱に限定している点である。

ではベタ基礎で外断熱はどうなるのだろうと探すが見当たらず、外断熱は布基礎限定、しかも(寒冷地の参考)となっている。

そう・・・

そう・・・

これを見る限り・・・

基礎断熱の熱の逃げる場所は、外周部がほとんど中央部からの熱の逃げはほとんど無視できることに変わりないという改訂前と同じになっている。

つまり当ブログで4年前に実測し低減したスラブ下は原則断熱材を入れてもいれ無くとも変わりないのである。外周部からの熱流出を抑えれば十分であるとの見解と見て取れる。ただし、地中に水みちや常時湿っているような環境では地中にも熱は逃げやすくなる。

そして・・・今回一番腹が立つのは・・・

さらっと書いてあるこのピンク色の文。

これって私の記憶では、以前のつまりこの3月31日まで使っていた基礎周囲の熱貫流率の式ではないか?ということはこれだけ大騒ぎしたのに結局以前のままで当面行う・・・というオチである。

ここまでたどり着くのに多くの資料をみて、一日探して時間を使ったのに結局今までどおりで「当面」行うとのこと。

だから探しにくかったのか。明日施行の計算方法がこんな深いところにあるなんてどうもおかしいと思った。

ここまで探してくれた当事務所のスタッフMには感謝であるし、ホントお疲れ様と伝えたが・・・当人は憤慨していた。

この憤慨の続きはその2で。

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コメント

  1. 渡邊弘孝 より:

    はじめまして、非常に興味深い記事で大変勉強になります。 外注の外皮計算と住宅センターの見解が合わずBELS評価を施主に説明する際に苦しい言い訳のようになってしまうのが悩まし問題を抱えておりました。 今後とも勉強のつもりで拝見させていただきます。

    ちなみに当社の基礎断熱スペックはこのように施工しています。
    立上り ネオマフォームまたはスタイロフォーム100mm
    底板(全面)上記50mm
    サーモグラフィーカメラなどで確認すると全面施工したほうが温度コントロールしやすいのと場所ごとの温度ムラが少ない事に気づきましたので現在はこのような施工です。