その1で紹介したこの表。ダクトレス換気以外のダクトタイプを使った換気システムではこのような計算がされる。この計算が無ければ換気扇本体が法律に決められた風量を満足するかわからないため、設計者は図面をひいて圧損を計算する。もし図面のどこかにこのような表がないときは、要求すれば見せてもらえるはずだ。
この圧力損失計算は換気経路図がないと計算できない。その換気経路は設計者で無いと判断できないところがある。特に住宅の場合は、天井懐にダクトを配置するため、天井懐や階間空間の把握が必須となる。住宅は天井懐や階間が大変狭いためこれを把握するためには構造梁の位置、大きさを確認することになる。つまり・・・
木造住宅において空調計画は一般的に構造計画を終えたあとに書くことになる。と言うことは・・・構造計画を設計者自身で行うことは空調設計の観点からも効率がよい。だから「緑の家」では構造から空調設計まで全て事務所内で行う。
さて今日の本題であるが、
第三種換気は難しい・・・とテーマとした。
その1ではダクト式換気の圧力損失であるが、その2では外部要因による圧力変位がもたらす影響を考えてみたい。
第3種換気がよいとの考えでは
1.機械(ファン)が少ない
2.排気ファンのみで単純、省エネ
3.メンテナンスが比較的楽
4.1から3で無難な換気
となる。
築30年の高気密高断熱の拙宅も第三種換気である。その換気で30年過ごした体験でデメリットを申し上げると
1.個室の給気が寒い(冬期)
2.給気口に目の細かいフィルターがつけられない
3.卓越風に給気量が左右される
となる。
熱交換しないため、1の解決策は空間の狭い寝室に給気口を設けないことである。しかし寝室こそ最も多くの換気を必要とする空間であると言える。8時間も戸を閉めてわずか8帖くらいの部屋に2人で籠もるのだから当たり前である。
下は第一種熱交換型ダクト式換気を行ったある「緑の家」のCO2濃度の実測である(常時居住者2人)。
このようにリビングで団らん時にはCO2濃度が上がらない。これはリビングの気積(空間の容積)が大きいので容易にCO2濃度が上がらないため。一方10畳ほどの寝室は2人で寝ると800ppmまでCo2の濃度が上がる。この実測時には寝室出入り口の戸が開いている状態であり、換気はダクト式で寝室SAは約45m3/h、リビングSAも同じ約45m3/hとしている。
次ぎに寝室の出入り口戸を閉めたときのCo2濃度である。
つまり寝室への給気(SA)は45m3/h以上を供給しないとCo2の濃度は1000ppmを超えることは普通にある。一方第三種換気で仮に45m3/hもの給気をすると、熱交換されていな生の空気が入る。45m3/hの空気を実際体感するとわかるが・・・寒いのである。仮に冬期なら300W以上の冷房機が部屋にあると思ってほしい。現在のエアコンの最低冷房出力が100Wからが多いのでその3倍冷房している事になる。では直接寝室にSAをいれないようにすれば良いのでは?の返答には・・・「そのとおりである」といえる。例えば廊下などから新鮮空気をいれ暖めてから寝室に引き込むという方法なら可能である。しかし新鮮空気は居住者のいるところに直接が、換気のセオリーであり特にこの考えはCOVID-19 に対する換気考え方でも同様で、共用部分の空気をわざわざ個室に引入れることは良いとは言えない。
次に3の卓越風によって給気量が左右され安定しないことについて以前紹介した本の内容を再掲載する。
第一種、第二種、第三種換気を同じ家のプランで比較した結果が下のグラフである。
上図から第三種換気は卓越風を考慮しないと有効な換気ではないことがわかる。
一方第一種換気の場合は、卓越風が吹いても有効な換気であることがわかる。
風が吹いたときに第三種換気では40%が有効に換気されているが、過換気度と不満足度を合わせると60%が適正とは言えない。一方第一種換気と第二種換気ではほぼ90%で適正な換気がされている。つまり第三種換気では風上の正圧帯に給気口があると過換気になり、主に風下側の負圧帯にに給気口があると給気不足(入ってこない)になる。上はシミュレーションではあるが、過去に行ったトレーサーガスによる実測もほぼ同様の結果になる。
上のシミュレーション条件その他内容は下のブログをご覧頂きたい。
このとおり第三種換気システムを計画する場合は、卓越風や建物周囲に吹く風向を把握して給気口の位置を決める必要がある。その点、第一種換気の場合はそれを考えなくとも有効な換気が行えるので設計がとても楽になり間違いも少ないため無難と言えるのである。