中高層建物ではバルコニー出入禁止が必要なのか?

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ある建築専門誌が行なった実測調査によると、3才から5才までの子供が手すりを乗り越える事が出来る割合が次の表のとおりであったとのこと。子供の転落死亡事故の3/4はこの年齢である。

一年に数回から十数回ほど中高層建物のバルコニーから子供が転落して亡くなる事故がある。現在の建基法では足がかりがないバルコニーの最低高さは1100mm以上と定められている。足がかりがあればその構造に応じて1450mmまで引き上げなければならない。落下事故が報じられる度に手すり高さに対し、もっと高さを厳しくしなければならないような法改正の議論がおきている。

しかし手すり高さの変更だけで解決すると思えない。

日経XTECHの記事にあったデーターを当方で再構築1.4mでもその気があれば、足がかりが無くとも乗り越えられると謂っても良い。

それは上表のとおり、4才になれば身長も高くなり半分の子どもが高さ1.3mの手すりの乗り換えられる。1.4mでも5才の子供なら73.2%が乗り越えられる。これは大半の子供といってよいだろう。一方事故は3才から5才に集中しており、この年齢の人口数は国内で約300万人。一方共同住宅は230万棟数があり、このうち半分が2階以上の住まいとすると115万棟数。これは一戸建ての全ての棟数3494万戸にたいし1/30程度となる。これを仮に300万人の3才から5才までの同じ比で当てはめると10万人の3才から5才が2階以上建物に住んでいると仮定できる。ここで年に10件で死亡・重症事故があるとするとその確率は0.003%となる。

先ほどの3才から5才までで1.3mの手すりを乗り越えられる確率を50%とすると、1/15000程小さい数値。つまりこの事故は手すりの高さより他に大きな原因があるのが一般的と考えるのが妥当。

私はこの数値を見る限り・・・もし建築的にこれ以上の高さの規制が必要なら、基本的に火災などの非常時に開閉できる構造且つ通常はバルコニーの出入り禁止が良いのでは無いかと思う。これはホテルでも同様な構造を見かけるが、故意ならば高さ1.4mでも超える事ができる子供に、これ以上の手すり高さだけの基準は実態にそぐわない。仮に現在の手すりを1.3mまで引き上げても事故は無くならないだろう。仮に1.4mにも手すり高さが引き上げられれば、景観・室内照度からみたバルコニーの優位性はほぼ無くなる。しかしバルコニーは中高層建築物での火災非難では大変有効な部位になるので、バルコニーが自体が敬遠されることはあってはならない。

「緑の家」では2階以上の階において積極的にバルコニーの提案はないが、バルコニーでの事故防止において合理的ではない結論は避けたいと思う。

例えば新築で殆どを占める2階建て住宅では必ず階段がある。階段でも危険な乗り越えは出来るし、最近は開放的階段をはじめ吹き抜けやそれに面した廊下もある。また2階個室には窓もあり、4才以上の年齢では2ロックでも大人が操作するのを見てしまえば開けることができる(錠が堅いときはむり)。しかもバルコニーと違って窓高さや室内手すり高さの法規制(建築基準法)がない。「緑の家」でも室内手すりなら高さ900mmの実例はあるし、2階の窓に至っては床から700mmから始まる窓もある(ドレーキップ※のみで引き違いはない)。引き違いの錠は基本的にクレセント式であり、その殆どが軽い操作。2重ロックはあるが、操作は覚えることで子供でも解錠ができる。ドレーキップの錠は堅いので、調整が不十分で無ければ4歳児では開けることは出来ないが6歳児では開けることが出来るだろう。やはり開けることを防ぐことは出来ない・・・。ではどのように家庭で防ぐか?・・・基本はやはり親等の「保護愛」と「約束」しかなく、例外が「約束」と「保護愛」の概念が通用しない場合のバルコニー出入り口の物理的閉鎖であり、手すりを高くすれば良いとは思えない。
※ドレーキップ窓は最大幅が740mm程度しかとれない。一方引き違いだと一般的な開口幅は850mmを超える。740mmなら大人なら手が引っかからないうっかり落下がまず起こらないので、窓下高さを700mmからとしている。

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