井岡の家 上棟とスラストの事

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やはり既存母屋より基礎高の分だけ高くなる新棟。

今日、実質上棟となった井岡の家は、当初長期優良住宅の取得は行なう予定は無かったが、政府の施策の補助金が急に決まったので耐雪1.7mで耐震等級3で長期優良住宅を取得している。突然の取得でも当然変更が一切無く耐震等級3で認定されるのが「緑の家」の標準仕様。

雲筋交いはまだもう一列施工するが、桁上合板はがあると足場があるのでチェックも施工もしやすい。矢印はいつもの結露防止用湿気抜きの穴。

通常和小屋と言われる小屋組架構は、地回りといわれる2階の桁上である小屋組が一体化することが原則である。よって上の写真のように内部は木の加工物で混み合う。その時にとても有効な構造材がこの穴の空いている部材である水平合板である。本日はこの合板の釘(N75@150)の施工チェックに伺った。

一方地回りで固め一体化させない構造加工として登り梁を使用した小屋組がある。地回りのこのような目障りな雲筋交いや合板が無いのでスッキリとする。しかし登り梁の小屋組は、繊細な構造計画に似合った2階の間取りが必要になる。先日の構造EXを販売しているホームズ君で有名なインテグラルさん主宰の実務者セミナーがネットで行なわれたが、その時の講師さんの使った説明パネルがとてもわかりやすいので下に載せる。

構造EXのセミナー資料からの転載図。青い線とピンクの矢印は私が加筆させて頂いた。青い線は水平梁でこれがあればスラストを押さえられる。無ければ開く力がどこで負担できるか検討する。

スッキリした勾配天井などつくるために使われる架構は、前述の登り梁による小屋組であるが、その時注意しなければならないことに、スラストの検討がある。これは木造がまずピン構造である事を認識するとわかりやすく、地回りに水平材がないと、三角形の頂点から受けた鉛直荷重で端部は開こうとする。ある条件ではこの力を棟木と登り梁の接合金物(金物接合工法)でバランスさせ受け止めることができるが、棟木を中心として左右の荷重バランスが崩れたときには(対称形でない切妻屋根のときや積雪時の不等分布荷重時)、棟木を支える耐力壁がその応力を受け止めることになる。仮にそれが妻壁耐力壁の許容応力内でも、積雪荷重で登り梁および棟木がたわむことで、登り梁が変位して地回りの桁にスラスト(開く力)が働く。この時に1820ピッチで水平抵抗材のつなぎ梁があれば難なくこの力を処理できる。つなぎ梁のピッチが3640くらいになると桁に働く水平方向の曲げモーメントが、仕上げ材に対して影響が出ないかのたわみ検討は必要であろうと考えている。つまり積雪地域は屋根の積載荷重が大きい(雪)ので、雪の降らない地域よりこのスラストをしっかり検討しなければならない。特にこのスラストはホームズ君の構造EXでは計算していないので、手計算になる。講師さんはこのスラストを審査機関に指摘されると思い、先に構造計算書に検討を追加添付していたとのこと。雪国の豪雪地帯(不等分布荷重)に和小屋組が多いのが納得できる話である。

水平の梁は何故単純梁だけで検討しても良いかは、地回りにスラストがかからないからである。矢印は「緑の家」独自仕様である結露防止用の湿気抜きの穴となる。

和小屋も垂木部分でスラストが発生するが、細かく入り込む雲筋交いや小屋筋交いで対処しているため個別検討は不要。そして小屋組のみでスラストの処理し、桁組には鉛直方向の荷重のみが働く。これを水平で設置される梁で受け止め、その力が梁内部のせん断力として端部に伝わり柱へと流れる。同時に水平の梁はたわみによる逆スラストとなるが、その力は小さく無視できるのでローラーのついた単純梁又は連続梁の検討だけで構造計画をしても良いことになる。

井岡の家では吹き抜けに大きなコーナーサッシが計画されている。その雰囲気は既にわかり上の写真のとおりである。中央柱の左右に開口部があり丘と空のみのコーナーサッシで素晴らしいロケーションとなる。

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