この図は「緑の家」のAsグレードの一般的な基礎と壁の付加断熱120mm。時折この付加断熱をどのように支えるかとのご質問を受ける。よってまずはこの解説から行う。
簡単な力の流れは上の図通りで、木外壁の荷重約100N/m2は通気層内の胴縁に釘せん断力でだけで伝わる。その胴縁はパネリードⅡ(シネジック)135mmによって二層目の断熱材60mmを貫通して一層目の断熱材の部分にある付間柱60×45に固定される(せん断&曲げモーメントがかかる)。この付間柱はの最下部は基礎の上にのり、付加断熱と外壁部分の全荷重200N/m2(木の外壁)が基礎から地面へと伝わる。基礎は立ち上がり巾が180mmあり、外周部は外側に60mm偏心するように張りでるので、付間柱を全断面を受けることになる。これで付加断熱がある外壁の鉛直荷重を支えることになる。この付間柱が座屈や本間柱と緊結し一体となるように釘N90程度でめり込ませて打ち込めばよい(2-N75斜め打ちでも、一般ビスでもよい)。いずれも下地固定の釘やビスなので図面では特に記載がないが、もしそれでは不安があるという場合にはパネリードⅡで本間柱に固定すればよいが、本来鉛直荷重は基礎で支えるのでパネリードではオーバースペックであろう。これでも外貼り断熱の外壁に不安があるという考えは少し力学的な視点が欠如していると思われる。
さて・・・「緑の家」では基本的に高基礎がゆえに防腐防蟻剤を一切使用しないのであるが、このAsグレードだけすこし考慮が必要な部分がある。
上図のように基礎高が1050(地面から)あり、地面から1000以内に主要な木材がないので、仮に長期優良住宅の劣化防止等級3であっても防腐防蟻材の塗布の必要が一切ない。基礎が低い場合は下の写真のように外壁下地となる胴縁まで防腐防蟻材を使用するのが劣化防止(劣化の軽減)の最高ランク等級3での規定である。
ところがずいぶん前から指摘されているが、防腐防蟻剤は2次防水の要である透湿防水シートに悪さをする。特に雨に打たれると薬剤がしみ出て透湿防水シートの撥水性を阻害し、時には成分劣化まで引き起こすことが知られている。
よってメーカーは下のとおり各対策を行っている。
実際雨にうたれたあとの透湿防水シート(メーカー不詳)をみると・・・
やはり晴天時にはなかった「しわ」がよっている。こうなると製品自体劣化をしていることになる。防腐防蟻剤と透湿防水シートの相性が悪いのは今も変わりない。
一方このような油性系化学薬品の防腐防蟻剤にかわり、近年は水性系ホウ酸の防腐防蟻剤があるが、これは雨にうたれると薬剤が流れてしまう水性の欠点をもつので、雨にあたると良くない結果は同じ。但し防水性は維持できるので一般には水性系の方がよいか?と思っている。
「緑の家」Asグレードに戻るが、長期優良住宅を取得するにあたり主要構造木材の箇所ではないところが地面から1m未満となるので、その指摘がなければこの部分については主要な下地とは見なされないと判断している。つまり土台より下の下地材木は、耐久性に寄与する割合が殆どないので、防腐防蟻剤の部分塗布まで行っていない。但し審査機関の指摘や建て主さんからの依頼があればその部分にはホウ酸系の防蟻剤を部分塗布することもやぶさかではない。
で、問題はここからである。「緑の家」では基礎が高いので主要な木材に接する木材(外壁胴縁、付間柱、下地等)が無いので、劣化防止主旨から外れないと思うが、一般の基礎の場合は、付加断熱部分の下地は全て主要な木材に接する位置となる。よって防腐防蟻剤は必須(長期優良住宅において)なるはずであるが、付加断熱材の多くは薬剤に弱い樹脂製の断熱材で作られ、また繊維系なら透湿防水シートも大切な防風材となるので、防蟻剤のへの雨がかりは厳禁になる。さて防腐防蟻材と雨がかりをどのように対策するのか、少々やっかいな問題となるだろう。