昨日、
「生命に危険を及ぼすような建物の不具合は不法行為となり、20年間は時効にならず責任を負う」
とお伝えした。住宅でそれに該当する一つが耐力壁の不具合である。
過去下のように3度に渡って面材耐力壁の不具合をお伝えしてきているが、木造住宅の業界はまだまだその大切さを理解していない風潮である。この面材耐力壁は30年前から世の中に多くなり、現在は木造住宅の新築工事において新建材の面材耐力壁を入れると過半にもなるのではないだろうか。それでもこのような釘の施工ミスは大小はあれど誠意ある建設会社さんでも必ずある。しかしもしこのような耐力壁の施工ミスが多数あったなら、20年間は賠償責任を負うことを肝に銘じてほしいし、私も同様。
上のように面材の耐力壁は釘でその耐力を担保しているため、釘の施工ミスは耐震性の低下となり、多数ならば生命に危険を及ぼすような建物の不具合=不法行為に該当する。もしそのミスの棟数が多数なら業界から退場しなければならない自体もある。また建て主さんからみても当然耐久性をはじめとする温熱環境やデザイン、云々の前の大前提性能が生命、財産の保全性能である。つまり耐力壁の釘は他の部位の釘と違ってとても大切な建築の主要部分となる。
上の写真のように隅の釘がない部分が多数あり、これは施工した大工さんが基本をわからず釘を打っている場合である。責任は大工さんでなく工事監督にあり、作業を行なう前に正しい打ち合わせや、施工後のチェックが行なわれていないので施工の手抜きとなる。
私たち工事監理者は、このような釘の検査時には釘を一本一本確認する義務はない。通常の工事監理では、もしこのような箇所が数カ所見つかったら、「他の箇所も全てチェックし直してからまた見ます」でよく、状況により抜き取り検査でも問題ない業務である。但し監理後にこのような間違いあったことを見過ごした責任はあるためどこをどの程度確認すれば責任がとれるかを判断しながら行なっているのである。このため殆どの工務店さんにおいては一本一本見る事が基本となる。
そして工事監理者の業務をよく把握されていない方がいらっしゃる。工事監理とは「その者の責任において、工事を設計図書と照合し、それが設計図書のとおりに実施されているかいないかを確認すること(建築士法第2条第7項)」であり、もし違っていた場合で是正に応じないときは建て主さんへの報告でよく、直させる権限はない。そして建て主さんが「その件は工事監理者の指示に従ってください」と施工者に伝えたときに、工事監理者は建て主さんの代理として直してもらうように指示できる。であるため、現場でいちいち「ここが悪い」と施工者に伝える必要がない。耐力壁のミスなら一言「耐力壁の施工が図面通りになっていない」と伝えればよいのである。しかしそれでは流石に合理的でないため、現場で細かく伝えているが、原則は「耐力壁の施工が図面通りになっていない箇所がある」でよい。そしてそれを施工者さんがどこがミスっているかを自身で把握し、また図面が読めない場合は設計者と相談することになる。つまり当然施工者さんが請負契約完遂のため施工者としてチェックし、その後法で規定された工事監理者の立場としてとしてのチェックをすることでダブルチェックとなるのが原則である。よく第三者工事監理というが、これは建築士法上の工事監理者でなければ、当然だれが依頼したかにもよるが通常は施工者側のチェックである。