先日業界紙に積水化学さんが建築した築30年経た木造アパートが当時の建築基準法を満たしていない事が発覚し、その後の調査6棟全てで同じ違反があったため同型で今でも現存する147棟の再検査を行なうことが報道された。記事は下のリンク先↓
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00154/01741/?n_cid=nbpnxt_mled_km
記事によると1987年4月から2001年3月までに建築され現存している木造アパートであるから、本当に30年以上前の建築である。それでも当時の建築基準法に合致していないことがわかれば、直すことになる。民法的にはどのような事になるかわからないが、30年以上前の違法建築物で報道され直すことになる。施行者および設計者は大変重い責任を社会的に背負っていると改めて認識させられる記事である。
ここで重要なことは当時の法律(1987年)に沿っていたかであり、当然現在(2023年)の法律ではないが、構造関連や今回のような防火関連の法律は大きくかわる事はない。当時からのその法律はあった。
構造関連では1995年におきた阪神淡路大震災がきっかけで2000年施行の新新耐震基準ができた。この基準に沿って建築されていれば、概ね安心できるが問題はこの基準どおり設計施工されていない住宅が2001年以降も多く建てられている。
そこで今回のブログになるわけだが、2001年以降建築された木造住宅において構造的な不適合があれば、それは直さなければならない可能性があることになる。それに該当するのが生命や身体への危険がある不適合になる構造関連。これは最高裁平成19年7月6日;別府マンション事件差戻前上告審の中で示されており、
「設計・施工者などが建物としての基本的な安全性が欠けることがないように配慮すべき注意義務を怠ったために
建築された建物に建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵があり
それにより居住者等の生命,身体又は財産が侵害された場合
設計・施工者などは,これによって生じた損害について不法行為による賠償責任を負うというべきである」
となっている。これは建築基準法違反ではない不法行為での賠償責任でとなり、時効は不法行為が発生してから20年と一般的に瑕疵担保責任10年の2倍となる。このことから言えば今回の積水化学さんは法的に義務がないのであるが、それでも全棟対応すると言っているので流石に大手メーカーさんである。
さてこの不法行為での損害賠償は、施工者、設計者、工事監理者に対するもので、仮に施工店が廃業倒産していれば施工者は無し。一方設計者と工事監理者は個人にかかるので、会社がなくなっても、離職しても関係ない。その20年間はその責務が発生するのであるから大変な責任である。下は2011年に紹介したその一例である。「士」のつく仕事は社会的責任が重いのである。