改めて・・・面材耐力壁の難しさを知る。

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両方とも「緑の家」であるが、合板主体のときと筋かい主体の時がある。

木造軸組構法の耐力壁(地震に対向する壁)は、上のように大きく2つの種類がある。

巷の評判では「面材耐力壁」の方が良いとされているが果たしてそうだろうか・・・。

私が現地で実際工事監理するにおいては、

構造用合板やモイス、ダイライトに代表される「面材耐力壁」の方が工事監理は大変である。

これについては過去何回も申し上げているが改めておさらいをする。

構造用合板は木で出来ている。所謂ベニヤ板の接着剤が強化されたもの。

まず多くの先進国で使われる世界標準である「構造用合板」を使った面材耐力壁であるが、

1から29種類の構造用合板で作る壁があり、壁倍率は10種にもなる(貫合板貼り1.5倍は除く)。

合板の厚さ、釘のピッチ、合板の位置によって耐力壁の壁種は知っている限りでは29種以上になる。耐力壁として使う壁の強さを表す壁倍率は29種類で2.5、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.8、6、4.0、5.0と10ランクある(なぜ10ランクと細かく分かれているのか、また使わなければならないかは後述する)。

29種類もある施工方法を果たして現場で間違い無く施工出来るのか?しかも真壁の場合は受け材の種類も異なる。更に・・・大壁の場合は非耐力壁と耐力壁の釘ピッチも変えなければならない。

特に非耐力壁と耐力壁の釘ピッチの件は殆どの木造住宅実務者が現場で注意を払わないと思われる。

なぜ非耐力壁と耐力壁の釘ピッチを変えなければならないか?

これは木造軸組の基本的構造の考え方である。
柱と梁の接合部は、一番最後に破壊されること・・・にある。

ご存じ木造軸組構法は柱が梁から外れると突然耐力がゼロになり簡単に倒壊にいたることが知られている。よって接合部より先に耐力壁が破壊されないと計算上の耐力は絵に描いた餅になる。

そこで許容応力度設計では、耐力壁の強さを上回る柱と梁の接合金物を選ぶ(引き抜き金物)。この引き抜き金物を最終的に支えているのがアンカーボルトと言われる基礎に埋め込まれたボルトである。

一方耐力壁にかかる力は均等ではない。耐力壁の配置バランスによって、より多く力が伝わる耐力壁とあまり力が伝わってこない耐力壁位置があり、そのバランスを同じくするように耐力壁量、壁単体の緒差を調整するように設計をする。

つまり設計に反して予想より強い壁ができあがるとその柱と梁の接合部には規定外の大きな力が加わり、その接合部が他の接合部より先に壊れそのためその耐力壁の耐力は0となりバランスの崩れた構造は偏芯が大きくなり倒壊に至りやすくなる。最も接合部の柱が土台から外れてしまえば建物は傾く可能性が高い。

ようは耐力壁の強さは強すぎてもいけないのである(弱いより強い方が良い時が多いが)。設計どおりの強さでないと問題が起きるので、非耐力壁で設計した合板を貼る壁は、耐力壁になってはいけないのである。このところが普通の木造実務者にはわからないところである。これは許容応力度設計を自身の手で行った設計者にしかわからない。

例えばある片方位の耐力壁が強すぎて剛芯と重心の偏芯が大きいときには、耐力壁を故意に弱くすることがある(上図も同様)。また床の水平剛性が弱くて床が先に大きな変形をすることで、特定の接合部位が先に破壊されそれによって建物が倒壊しないように、床両端の耐力壁の強さを弱くして均等に変形させる事もある。壁は強すぎてもいけないときがあるのだ。

だから設計者は・・・

多種の壁倍率(耐力壁の強さの指標)が2.5、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.8、6、4.0、5.0と細かくあると助かるのである。同じ壁の長さであっても壁倍率を変えることで耐力壁として弱くも強くもできる。しかし現場では種類が多いと間違いが多くなり大変になるのでできる限り統一させて少ない壁倍率種類で運用する事が基本。

さてここまでは世界基準の構造用合板の話である。

実はここからがやっかいな話で、日本には大手建材メーカーさんが独自に開発した建材合板があり、これで耐力壁を作る建設会社さんが大多数を占める。例えば「緑の家」でも時々使う「モイス」や一度も使った事がない「ダイライト」、既に廃番になった「かべ震火」だったかなど・・・。これら建材合板は構造用合板の欠点であった高透湿抵抗を低透湿抵抗としたことで、しっかりとした防湿層がない木造住宅でも内部結露をおこさない構造用合板の代わりとして普及した。ただしっかりした防湿層があれば構造用合板を外に貼っても問題ない事は言及しておく。

この建材合板は国で認定した試験方法でその強さが決められており、

ダイライトでは3.0、2.5の2種類(N50、SFN50、木ねじ)があり、モイスでは2.0、2.5、2.7、3.8(釘N50、CN50 )4種類がある。

壁倍率種類が少なくて合板より施工間違いが少ないのがメリットだが・・・問題は材料のもろさである。ダイライトもモイスも主成分中にケイ酸カルシウムでありそのもろさを繊維で補強している。つまり強いたたき衝撃に対し割れるのである。

細かくヒビの入ったモイス。木材でできた構造用合板はハンマーでたたいてもヒビなど入らないが、建材合板は簡単にヒビがはいる。

ここが構造用合板との大きな違いであり、何しろヒビはよく見ないとわからないくらい細い。遠目やぱっと見では見過ごしてしまう。30cmくらいに近づいて確認しないと見過ごしてしまう。これが釘のめり込みなら1m先からでもわかる・・・。

このような合板より脆い材料は釘のめり込みによる耐力低下も大きいと言える。つまり多少たりとも釘のめり込みが有ってはならないのである。世界基準の構造用合板は、一般的に打ち込まれる釘の本引き抜き破壊で耐力が決定するが、建材合板の場合は、このヒビで合板自体の破壊(パンチングアウトや縁端破壊)によっても耐力が急低下する特性が高いと私は感じている。

さて釘のめり込みに話を移す・・・

最近の業界紙の報道で、釘が4mmめり込んだ耐力壁は規定値の半分の強さになったとの事。

最近の釘打ちはエア釘打ち(空気圧で噴射される釘)で打ち込まれるが、なぜめり込みがない釘打ちが難しいのか?

これは大工さん(自分でトンカチを打った人)なら簡単にわかる・・・。

「下地の木材が違うからだよ」

なのである。

一般的な木造軸組構法は下図のように柱は杉やSPF、胴差しは赤松や米松、土台はヒノキや栂、ヒバなのである。この中で一番柔らかいの木は杉であり、女性でもトンカチで釘(N90)を打つことができるが、米松となると女性ではまず無理で、慣れていないと男性でも厳しい(万一生き節にあたったならとても打てない)。

施工上面材合板の釘打ちは4周一斉に行う。柱だけ、胴差しだけ先に打つ事はしない。そこでエア釘打ちは、打込み強さを決定する空気調節をイチイチしていないので柱下地には最適でも胴差し下地には釘がういたまま・・・そこで胴差し下地に最適化すると今度は柱に打ち込むと釘がめり込む訳である。最初からある程度エア釘打ちで打った後に手で打ち込むと覚悟を決めれば全く問題ないのだが、面倒なので釘のめり込みが発生するのである。

その点、筋かいは楽である。最初からエア釘打ちは使えないし、電動ドリルドライバー(エア-ネジ締め機でもOK)で行うのでほぼ間違い無く正しく打ち込んである。筋かいで難しいのは・・・断熱材の入れ込みの時である。

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