新潟市で建築中の松浜ヒルサイドの家で一昨日棟上げ(上棟)が行われた。そして次の日(昨日)屋根合板が貼られると言うことで、タイムリーに現場に伺ってきた。
建て主さんのご希望でスッキリした勾配天井の家族の間とのことで、今回は登り梁による勾配天井を計画した。本格的な登り梁による勾配天井は、本事務所では初となるので、注意深く計画している。特に間取りが大凡決まってからの勾配天井への変更だったが、通常の和小屋感覚でのプランに壁優先の勾配天井が合致するように厚物合板で高倍率の水平耐力を担保することで難なくクリアーしている。このため合板への釘打ちは重要となり、その釘の確認に伺ってきた。
釘は青色のCN75で@100で打ち込む。2階床に使う時には24mmより4mm厚いことで多少のめり込みを許容しているが、今回は詳細計算で算出しているため、28mmは28mmの耐力として考えるので、めり込みは最小にしなければならない。現場で確認するとめり込みはほとんどなくあっても若干斜め打ち箇所の部分だったり、耐力に関連ないところだったので規定内。安心して全体を見ることが出来た。流石にいつも行って頂いているヨシダハウスさんの親方大工さんである。
現場名は「松浜ヒルサイドの家」であるが、屋根の上に登って改めて周囲を見ると、ここより高い場所はわずかであり、これなら「松浜ヒルトップの家」でも良かったかもしれない。阿賀野川を見渡す景色は秀逸で、2階家族の間を最初からご指定頂いていた理由が、この屋根上で実感できる。
こんな景色を見て、この土地に設計させて頂ける事を改めて建て主さんに感謝する。私は住宅の気持ちよさはそのロケーションでほぼ80%は決まると思っている。当然これは価値観なので人によって違うが、私を含め「緑の家」の建て主さんはその価値観を優先している人が多いと感じ、それに対してもありがたいことと感じている。
そんな条件下のためあまり「無難」とは言えない大型バルコニーも計画する。その張り出し距離は1.82mと大きい。でもこのくらいないと使えるバルコニーにはならないので、この大きさは必要と思っている。それは拙宅でよくわかる。
さて話は勾配天井に戻るが、今回本格的な登り梁による小屋組だがスラストの処理はしておきたいと思い鉛直負荷のないスラスト防止のためだけの梁を設けている。
写真の通りこの水平梁は、上からの屋根荷重を一切受けないので必要無いと思われる考えもあるが、積雪1m時のスラストを想定し計画している(たわみが少ない場合やクロス、合板などラフな仕上げ時に必須でない)。
厚物合板28mmは断熱材の防風層の役目も担いつつ垂木の固定下地として、またその垂木は90mmの厚さをもつ通気層となる。
その後更に屋根下地となる合板12mmが貼られ、更に更に結露防止用のシージングボードまで貼られる。シージングボードは雪国では積雪時の屋根下の結露を防ぐことと、温暖地でも夏の蒸し返しによる結露から屋根合板を守ってくれる効果をもつ。あればよりより効果をもつので使い続けている。
このように登り梁による勾配天井は和小屋の水平天井より格段に難易度は高いのでコストもかかる。
さて・・・廃盤になった筋かい金物が既に現場に運び込まれており、一安心。来週上棟が行われる現場分も既に確保したとのことで今後はどの金物にするか思案中である。
今回のように屋根に重要な水平面が計画されるとき、釘の打込みはとても重要であるとお伝えした。この上に間髪おかずに垂木や合板が貼られ見えなくなるので、タイムリーに現地で検査をする事になるが、あくまでも手順通りに進めれば、30分くらいの余裕は生まれるので検査は可能である。しかしこの多重構造が私の目の届かないところで行われた場合(例えば下小屋、工場など)、あっという間に多重施工が完了して検査ができなくなる。現場作業より工場など室内作業が増えたとき、工事監理者としての検査はますます簡素になる事はよいが、法で定められた工事監理者の責任はどのようになるのであろう。今後はあらかじめ組み立てられた住宅(プラハブを代表とする工場製作)などが増えていくのであろうか・・・。