業者は教えてくれない、耐震性と垂直積雪量(設計積雪量)の重要なこと その2

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このブログに掲載する図は東京都市大学の大橋先生のセミナーから抜粋させて頂いた。

上の図は構造計算で用いる地震力算定時に使用する地震地域係数である。これを見ると新潟県は0.9となり関東、中部などの1.0に比べると10%も少ない力で計算してよい事になる。

建築基準法で定められた地震力の算定方法

少し専門的なことであるが、一般的な木造の構造計算で地震力に対し安全であるかを評価する地震力の算定式は上の通りである。Qiが地震力で「建物の重さ」×「そこに加わる力」となるが、この力は式にあるとおり地震地域係数に比例する。つまり新潟県は関東・中部に対し9割の地震力で評価していいよ・・・となるのであるが、近年のデータでは十数年前に起こった中越地震の地震力は、冒頭の図で紹介した地震地域係数が1の近畿地方で起こった、阪神淡路大震災(兵庫県南部地震)よりも大きいことがわかる↓。

この図で右上に近いほど地震力が大きい事を示す。すると×印の新潟県で起こった中越地震が上位を占める事がわかる。

これをみると新潟県の地震地域係数が0.9との評価がおかしいと感じるのではないだろうか。実はこの地震地域係数は地震の大きさを示す係数ではなく、比較的大きな地震が来る確率を表す係数である。新潟県は過去の事例から関東・中部に比べ大きな地震が発生する確率が低いとの認識で決定されている。しかし新潟県は上の図でもあるとおり中越地震では国内最大に近い記録的な揺れが観測され、また数年前に震度7が2度発生した熊本県の半分は、地震地域係数は0.8と更に地震が起こりにくい確率であった。このように地震の大きさは発生確率も因子となって評価されるので、発生した時には住人との感覚とのずれが生じる。

これと同じ仕組みが雪の加重と地震力である。先回のその1では耐雪性能と耐震性能は同時に考えることが重要と申し上げたが、実はその耐雪性能100%時(垂直積雪量100%時)に地震は発生しない想定で構造計算されている。これも確率に基づいて減じて評価しているといえる↓。

地震力の構造計算は短期の力として計算するので多雪地域では垂直積雪量の35%があると仮定して算出する。つまり100%ある状態ではない。

この表に示すとおり、地震力の算定時には

垂直積雪量の0.35倍=35%の雪が載った状態

で地震力を算定してよいとの法律の建付けである。三条市なら垂直積雪量が2mなので70cmの積雪時の地震力に耐えることができればOKである。積雪が2mの時に地震は発生しない事を前提に安全性の確保する事になる。つまり2m積雪時に地震が来たら耐震等級3の評価であっても倒壊する可能性が高い。

えっ それは大変、やっぱり積雪地の耐震性は良くないのか?

と思われた方、実は雪のない関東・中部地域だって同じような考え方である。例えば関東・中部地域でも雪の積もる日は一年で一日くらいはある。しかし関東・中部地域での地震力は雪の荷重を一切考えずに計算する。これはまだ許せても、もう一つ・・・台風が来ているときに地震は起きないとの考えで、地震時の台風力の加算は通常行われない。台風が襲来する時間は一日以上あるときはなく、その瞬間に地震が来る確率は限りなく少ないという理由である。台風の襲来確率と数十年に一度の豪雪確率と同じなのかもしれない。それでも不安だからと言ってもし新潟県で垂直積雪量のまま地震力を計算すると、木造住宅ではほぼ窓計画は出来ないと思われるし、関東・中部地域で台風力+地震力とした場合も同様である。必ず割り切りはある。

ただ気持ちしてはこの図を転載させて頂いた大橋先生の考えと同じく、地域係数は全国同じくしたほうが良いと思うが、多雪地域での積雪の荷重35%、台風襲来地域での不同時計算はやむえないと思っている。もし積雪100%での地震耐力を望まれる方は、木造住宅の選択はやめ、壁式RC造などを考えたほうが良いと思う。

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