今朝白町の家 防水チェックと梁の断面係数

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間違ってフィルター加工撮影し4隅が暗くケラレした写真となってしまったが、この日差しは春。

数日間、春の日差しが降り注ぐ新潟県だが長岡市ではまだ雪が残る。今朝白町の家では、敷地内の雪処理を特にしていないのでまだ1.5mくらいの山になっている。

家が大きいこともあり、先日3度目の気密と防水検査に現場に伺った。本来なら今月完成だったが、ご覧のとおりまだまだで、完成は5月となる。

久し振りに一本柱のある家族の間。

内部でも多数の大工さんがはいり、急ピッチで作業をしているが、進みはまずまずとなる。

白矢印は光庭のFIXがあるところだが、ガラス割れ防止でベニアの養生のためこの町屋の中心となる光庭が見えないのは残念。

防水の方はほぼOKで今後は中間気密試験にむけて細部の施工を行なう事になる。さて一発で0.4cm2/m2以下となるとよいのだが・・・。

次に少し専門的なことを書くので、難しいと感じた方は読み飛ばしてほしい。

梁が上下に重なるのが普通だった木造住宅の構造。この古民家では3重になっているがその部分に欠損が殆どない。

最近、木造住宅の構造で梁を上下に掛け断面欠損を防ぐ昔の軸組構造の良さを改めて実感している。上下に組ませることで、梁の全断面にちかい力で受けることができるので、梁背が比較的小さくできる。下は国の強要応力度設計のマニュアルにある断面係数の低減表である。

下側に短ほぞがあれば更に断面低減率は大きくなる。住木センター監修発行の許容応力度設計から抜粋

上の表で緑色に塗った断面形状を持つ部位と多いのが、跳ねだしバルコニーのような箇所である。多分木構造の設計で梁伏せ図を自分で作成し構造計算した経験がないと上の図は何のことかさっぱりわからないと思う。または大工さんでも自身で墨付けし加工した経験がないとわからない。通常の梁の全断面が1とすると、跳ねだしバルコニーのような梁(せい360を想定)の根元は、このような断面形状でプレカット加工され、その断面係数は何も加工されない断面形状の1に対し0.39となる。一方「緑の家」で使用しているHSS金物では下の通り

HSS金物の低減は0.6とプレカットの1.5倍の断面となる。

0.6となりこれは上の一般的なプレカット加工の1.5倍となる。1.5倍も差が出来るわけは・・・跳ねだしの梁の根元には、最大の曲げモーメントが発生するので材の上下端に残る断面が大きいほど有利になる。形状を比較するとプレカットした梁は上端の断面がほぼ無くなるのに対し、HSSはより多くの断面がのこるので有利になったのである。

左がHSS金物の断面欠損状況で、右が一般的なプレカット時の断面欠損。

極端な形状としているのがよく見るH型鋼材である。このような断面形状であれば、無垢の長方形全断面に近い断面係数を最小の断面積で得られる。

梁だけを考えれば上下に多く断面が残ることが理想形。H鋼材はそのような形状となる。

一方HSS金物でも0.6くらいに耐力が落ちるわけであるが、昔の大工さんはこの部分の断面欠損を嫌って梁を上下に組み合わせる加工を行なっていた。それに近いような跳ねだし梁構成が以前設計した「笹越橋の家」の2m持ち出した梁となる。

地回りより240下げている跳ねだし梁(910ピッチ)。右からの梁がかからない方が更に良いが、耐力壁の関係でやむなく設けている。

最近は巷でも構造計算ソフトで許容応力計算をする方も多いと思うが、実はこの断面係数は計算ソフトには通常デフォルト値しか入っておらず、HSS金物を始めクレテック、テックワン、et c は自身で判断し手入力するしかない。その組み合わせは相当数あり、設計を専門にしている当事務所でも大変な作業になっている。その一方近年はユーチューブを始めDIY感覚で住宅を設計施工するような動画や事例も見られるが、餅は餅やと言われるように、資格の無い方や専門外の設計者がこの事を網羅しているとは思えないが・・・いかがだろうか。

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