査読論文 自然系(天然系)塗料とDIY

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このブログの図は特記を除き全てこの論文からの転載

今回の紹介は木材に塗る天然塗料についての査読論文で、状況としてはDIYを想定している。多分家を建てたあとでも木に天然塗料(オイル)を塗っている人は多いと思うが、その際の揮発性有機化合物の影響と評価の論文となる。

執筆者は上の通りで、面白いのは自然塗料と自然系塗料に分けていること。私たち建築士を含め天然系素材を主成分に石油由来の素材を添加した塗料と天然系素材だけで構成された塗料を分けてはいなかったので少々驚いた。たとえば自然塗料は「米ぬか」だけとか「クルミ油」だけのオイルということになる。またエタノール添加は石油由来ではないので自然塗料ということになる。当事務所で標準として使用しているオイルは「リボス カルテット」と「アウロ」であるが、リボスは石油由来の「イソアリファーテ」を使用しているので、本論文の分類では「自然系塗料」に該当する。一方誤解のないようにリボス社のHPから下にそのイソアリファーテの見解を載せておく。

リボス社のHPから(この画像だけ本論文からではない)

さてまずは本論文の目的であるが・・・

となり明確に自然塗料とそうでないもの定義してスタートしている。これらのオイルは無垢材を床に使う住宅において、よく日常的につかわれ、またメンテナンスとしても追加でオーナー自身が塗布されることもあるので、その意味では身近であり、建て主さんにたいして参考になると思われる。塗料の条件は下の図である。

影響と評価方法として、杉の素材に塗料を塗ってガス分析器(クロマトグラフ)で科学的に分析する評価と、人の嗅覚で感覚的な評価(影響)としている。このとき人は全員大学生であり、この点がいつも思うのであるが、「ホントにこれで良いのだろうか、本来子供をもつ親を被験者にいれたい」と私は思う。家を建てる人の多くはその親としての環境になった時なので、多少評価が変わる気がするのでなんとかならないかと思う。また住んでいる環境(都会や田舎)も影響があると感じる。その他、木材への塗布の比較対象に無塗装の木材、及び無機質のアルミ板への塗布としている。アルミ板への塗布は、オイルを塗ることで木材自体から発生する揮発性有機化合物因子を除く意図がある。

下が実験時の温湿度と結果である。

人による評価をみると、やはり石油由来の溶剤をつかった自然系塗料の評価は少し他より悪い。また不思議なのが、無塗装よりもアルミに塗料Ⅳを塗った時の評価が全体的に良いところ。このⅣの塗料にはオレンジ系オイルが入っているので、その匂いが大学生に評判がよいのであろうか?一方近年杉自体の匂いがなれていないので嫌いな人もいるはずである。この点はやはり広い年代と住んでる環境を広げて評価したいところである。下のまとめでも塗料Ⅳのテルペン類の影響があるとなっている。

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下にこの論文の結果があるが、特に3)の塗った直後には国の指針値をこえる放散物質があったされており、入居後にメンテナンスとして追加で塗る時は、窓が開けられたり、24時間不在のの時がよいかもと思う。また作業中と作業後24時間程度は換気量を多くすることは重要である。一方糠だけの塗料Ⅲは常に中庸であり、塗ったときに何が良いのか(塗ったメリット)を考えなければ、無塗装とほぼ同じかそれよりよい評価になりそうである。糠は毎日の食事で常にさらされているとても日常的な匂いであるためこのことは最もであると感じる。そもそも糠は古くから床の無垢材につや出しとして使用されていた。現在糠を使用しなくとも木の床に艶が出るのは、水拭き掃除がなくなったことなど室内環境の変化で有る。そもそも昭和初期は道路舗装率も低く、窓開けをはじめ気密性が少ない家だったので、室内に容易に侵入する砂埃を掃除するため濡れぞうきんがけが行われていたことであり、それがなくなった今は、糠を塗って油を補給する必要性がなくなったと推察できる(「緑の家」では糠塗りがなくとも艶が出ている事実がある)。

この論文もとても面白く、自然系と自然塗料とに定義しているところがとても私にはなじむし、過去なかったことだと思うので研究者らに感謝する。

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