1年目メンテナンス 超高断熱高気密の換気設備の難しさ

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ヒメシャラがメインシンボルツリーで外構が決まると家が引き立つ。ロータリーできるようになっているカーポートもとても感じがよく、外壁も良い感じで退色をし始めている。

昨日1年メンテナンスで井岡の家に伺った。

東京電力さんの送電鉄塔。柏崎刈羽~関東まで電気を運ぶためその巨大さには驚かされる。

上は東京電力の送電鉄塔であるがこの大きさがわかりやすいのがこの足場のかかっているところ。私自身鉄塔のメンテナンス風景を初めて見たが、一基のメンテナンスに現場小屋が5棟くらいあり、ちょっとした建設現場なみである。そんな風景を横目で見ながら井岡の家に向かう。

井岡の家では先月すでに施工業者さんが大方のメンテナンスを終えていたため、ほとんど問題なく終了。ただ一点だけ問題が見つかった。それが「緑の家」でよく使うトイレの局所換気扇。

希望小売価格2.8万と決して安価ではないパイプファン。壁・天井両対応とあるが、天井付けは問題がありそうだ。

「緑の家」ではトイレは局所換気扇※で換気を行う。ここ6年以上は品番は変わらず上のタイプのセンサー式換気扇を直結で使用している。
※使用時だけ使う換気扇で24時間連続使用する計画換気には含まれない。
カタログにある通り、壁にも天井にもつかえるのであるが、メーカーのサービスエンジニアさんによると天井に使ったときに問題が生じるようである。

該当のシャッター部分のユニット。これ以上分解は禁止されている。

その問題とは・・・

この換気扇には外気侵入を防ぐ気密型電気シャッターがついているのだが、これが開いたまま戻らないことが断続的に起こり、最終的には開きっぱなしになる。根本的原因は機器設計のミスだと思うが、これが引き起こされるのが埃などの汚れとなるとのこと。

開きっぱなしのままで止まっている羽。白い粉が埃だがほとんどがトイレレットペーパー。本来ならバネの力で閉まりっぱなしになるはずだが隙間があるままで止まっている。

この換気扇には表面に埃がキャッチできるフィルターがあるが、これで埃のすべてが取れることはなく、逆にこの埃取フィルターでメーカー設計過程で安心してしまったのか、埃でスライドする抵抗が大きくなった時、微力なバネの力では閉まらなくなる。かえって埃フィルターがないほうがそのことを考慮してもっと強いバネにしていたかもしれないし、このシャッター機構自体にに埃防止措置がされていたかもしれない。

この突起に電磁スイッチでON、OFFするところが接してシャッターを動かす。このスライドが渋くて動かない。

壁付けの時にも起こることはあるそうだが、特に天井付けの場合このような現象が起こるとのこと。しかも今回は1階2階のトイレは2つとも天井付けにしており、その両方でこのような不具合になった。天井付けで故障確率100%となるこの現象は、戸外部環境の違いでも発生の確率は違うとのことだが、設置後1年で起きたこの不具合ではこの商品はもう天井付けではつかえない。不思議なことは「緑の家」では過去にこのような事例がなかったのに、直近の1年だけだが複数件ある。

メーカーにこのような事例があるかと聞くと、当たり前だが「ある」とは言わない。「ただ頻繁に起きていても一般の住宅のトイレなどは寒いのが当たり前で、換気扇が回る以上、シャッターの部分では換気扇の故障として認知されていないのではないか」・・・との見解を頂いている。つまり超高断熱で高気密住宅がゆえにトイレだけ外気が入り寒くなることで発見されたこととも言え、この問題の難しさがある。ただ3万もする換気扇が1年で壊れるようではこれは大問題である。

メーカーの取説より抜粋。今回の故障は偶発的ではないと思われる。

もともと製品のメーカー保証は1年だが、今や24時間換気扇として使えるこの機種の期待設計寿命といえる標準使用時間は15年(7時間/日)※との記載もある。1日7時間使ってこの寿命だから「緑の家」の場合2時間/日以下だろうから、緩い使い方でこの故障率は厳しい。
※換気扇は「長期使用製品安全表示制度」の対象電気製品で記載の義務がある。

このような住宅の設計者では何ともできない完成製品の故障については残念ながら対処できないので、製造メーカーの判断となる。だから海外品も簡単に入手できる昨今でもできる限り国内大手メーカー品を選ぶことになる。

メーカーの取説P8より抜粋。

この製品の取説マニュアルにもシャッター部品は破損の恐れがあるので分解しないで下さいとあれば、ユーザーは一般的になにも触らずメンテナンスできないことになる。

さて現在設計している家では天井付けの場合この製品を使うことを見合わせている。代替え品を使うとなるとさらに値段の高い製品を指定することになるが、現在住宅が高騰しているので、また価格が高くなることを心配する設計者である。

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