事務所移転と「緑の家」が目指すものはS造も その4 優しい空間

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机の設計図。移転したさいの新たな打ち合わせテーブルは新設するがその素材は・・・

「緑の家」の家の中をご覧頂いた方のご意見を募ると、多くは内装が優しいといわれる。私もそう思う。そしてこの度この「優しさ」に更にもう一方踏み出すことにし、10年前から提唱していた「緑の家」が目指す「無難さ」と共に「優しい空間」も追加したいと考えている。

間口4mの米ヒバの机は8人掛け。足と天板を別々に運んで窓からいれて室内で組み立てした。

現在使用しているテーブルの大きさは間口4mで奥行0.9mと巨大だ。材質は米ヒバで無塗装。すでに22年くらい使用している年期が入ったもの。これはこれで針葉樹なので優しい素材の机。しかし移転する事務所ではもうこれを使うことはない。なぜなら壊さないとこの3階から大きすぎて移動できないからである。移設先の事務所の打ち合わせ室が少し狭くなるので、この間口4mを切るのはやむないが、そこまでするなら新たに造ることにしたが、その樹種に悩む。

最初に候補になった樹種が机の王道の「楢」である。楢で図面を引いてみたが、何かひっかるものがある。この時点では床も楢だったので楢のテーブルしか頭になかったが、どうもしっくりこない。そこで事務所関係者全員で議論していると、「なぜ杉にしないのか?」と真顔で聞かれそこで気づいたのである。私生活ではこんなに杉が好きであれもこれも杉材なのに、「緑の家」の事務所の床とテーブルが楢という正反対の樹種が不自然であることに。

針葉樹の天板で米ヒバテーブルは「緑の家」だけといってよいほど珍しい樹種のテーブル。笹越橋の家 2020年。

一般の家具屋さんで販売される机の樹種は楢やタモのような堅木に塗装されるのが殆どである。時折パイン材に塗装があるがそれは稀。ましてや杉やヒバ、ヒノキのような柔らかい針葉樹は机の天板になることはほとんどないが、今まで使用してきた机は針葉樹の米ヒバ。過去にもこの樹種が気に入って机としては柔らかいこの樹種で十数回作っているが、柔らかくてクレームがあった事はない。このことから「緑の家」のオーナーさんたちの過半は私と同じで一般的でない柔らかい樹種が好きである感覚をお持ちだと改めて気づき、新たな勧める机の樹種はさらに柔らかい「杉」にする迷いはなくなった。杉の天板はotomo vie centで自身で製作して、現在3年過ぎたがその柔らかさで問題となったことがない・・・というより食器を直接置いた時の音がとても柔らかいこと、また手が天板に触れているときの触感の気持ちよさは、堅木の塗装(オイルふき取り)では味わえないほど優しいことに驚かされる。

このように新たな打ち合わせ机も「杉」の無塗装に・・・しかしこのような針葉樹、それも特に柔らかい杉の机は住宅業界では多分掟破りの暴挙だが、いたって真剣なチョイスである。そう「緑の家」の目指す家づくりは「無難で且つ優しい家」にしたいことが、今回の事務所移転をきっかけにはっきりとわかった。確かに柔らかいこの素材は、手荒に扱うとすぐに傷ができる。だからこそ優しくしようと体が動く。この気持ちが常に生活の中で育まれるととても優しい空間が好きになる。

こちらは21年前の米ヒバの机を作ったばかり頃のショット。米ヒバの黄色みがかった色と淡い木目が美しく、当時は超仕上げ無塗装のその肌触りに感動したことを思い出す。その気持ちよさに思わず子供が上で寝そべる。

そもそも無塗装の床を勧めてはや27年。当初はすべての人(大工さんから現場監督、施主さんのご家族)に無塗装では汚れるからやめたほうが良いといわれたが、今では一定数の方からよいと評価される。このように過去を振り返った場合、「緑の家」では一般常識、通常とは違うことを行ってきた仕様に今でも胸を張れるし、何しろ今現在も無塗装の床を勧め使い続けている。

事務所の机の設計図には「天板は杉の無塗装赤身勝ち」と書かれている。

新たな事務所の床材は当然杉で、壁以外の手で触るところが殆ど杉の無塗装。普通は机の天板にむかない柔らかい樹種をつかい、まさしく杉LOVEの仕様である。一般の常識にとらわれる事なくこれがこれまで以上に優しい「緑の家」の仕様なのである。是非事務所が移転完了したらその優しい肌触りに触れて頂ければと思う。下のリンクは無塗装、仕上げのことについての記事である。

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