事務所移転と「緑の家」が目指すものはS造も その14

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S造の倉庫をリノベして超高断熱の「入り子構造」で模様替えした新事務所の天井は、コストを重視しほとんどが構造用合板のままで、重要な打ち合わせ空間は壁と同様に桐の無垢板無塗装のボードである。

当然ビル建物なので火災予対策(消防法)として火災報知器がトイレにまで設置されている。

トイレの天井にも煙感知機がある。

内部の写真から一瞬木造建築に見えるが、主構造はS造で内部に「入り子」状態で断熱材でできた箱をつくっており、その断熱材を支える部材として木を選んでいる。

入り子構造の新事務所。耐震、耐風、雨風をしのぐことはS構造が受け持ち、快適性のみ断熱材だけで囲われている室内がある。このように分担すればメンテンナンスがより簡単になる。

そして細かい部分にも今回は従来と違う納まりを採用している。

巾木無しでも掃除機などがあたった時の痛みがほとんどない桐の壁。

巾木をできる限り取りやめている。これは壁がボードなので、掃除機が当たっても傷みにくいためできる仕様。巾木をやめればすっきりとするが、施工する大工さんには面倒なのでとても嫌がられる。今回の大工さんは「カツヤマさん」と「アダチさん」と「オカさん」であるが、皆さんこのような無垢材の加工をいつも行っている強者ぞろい。最近は組立屋さんみたいな施工が多い中、こちらの皆さんには大変お世話になった。

杉の赤身で無塗装、超仕上げ。

次に杉はできる限り赤身色で統一している。これは耐久性でなく単に色味で赤色が好きだから。杉の白も好きだが時間の経過とともに赤身と同じ色になるので、それならば最初から色があまり変わらない赤がよいと思っている。

「緑の家」の壁の出隅には必ず木が取り付く。20年経過した時に美しいように考えての仕様。

また窓枠、戸枠、壁の出隅は全て「木」。近年の住宅はすっきりと見せることが流行しているようで、このような出隅には壁と同材のPBで仕上げることをよく見るが、このようにPBのようにもろい材では長期使用時(20年後)に傷んで見っともないことになることを経験している。そのため「緑の家」では窓枠、壁出隅、戸枠には「木」を使って傷みにくい素材を選んでいる。

桐ボードの場合は出隅材がなくとも無垢材だから痛みは少ないし、見栄えもよい。

そして仕切り壁になる「什器」には無垢で厚さ30mmの杉板で構成。貼り物でない本物の什器としている。

什器の箱は杉の無垢板で厚さ30mm。本物の良さが伝わる。

そして打ち合わせテーブル・・・。

杉材なのに細い足や小さな力板に拘って線を引く。各製作加工図は家具屋さんに任せ、見た目のデザインと細工部分を描く。

これもスタッフMがその細部寸法にまでこだわって設計した無垢の杉のテーブル(いたはぎ)である。普段は長さ方向が2400mmだが、つなぎ合わせのテーブルを窓枠に掛けることで3345mmにまで延長できる。そして当初は床が「楢」だったので「楢」で机を考えており、楢らしい少し重厚になるデザインで線を引いていたが、床が「杉」に変わったことで繊細にまとめ上げている。そして普通杉無垢材といえば、面皮がついた厚さ100mmもあるような想像をしがちだが、杉なのに華奢にして可能な限り薄い天板、3345mmを支える細い足、2400mmのスパンを補強する最小の力材としている。材料も一般流通している材寸で、可能な限り材料で特殊なことはさけ、杉のテーブルの設計は初めてだったこともあり製作工場まで足を運んで板材を確認した。

スパンに対する足の繊細さが好きで、これ以上スパンがあると力板ももう少し必要でギリギリのバランス。左にサブ天板をのせると950mm程伸びて3345mmになる。小ぶりの華奢なAZUKIと相性もよい。

床が杉など針葉樹系では足の断面は大きいほうが床を傷つけないが、武骨になってしまう。当然アイアン(スチール)などでは足を細くできるが逆に小さすぎる断面で床に跡が残る。そのため足も天板も杉とするのはごく自然な流れであった。出来上がってみると、想像どおりでとても柔らかい机ができた。以前の事務所のテーブルも針葉樹の「米ヒバ」だったが、やはり事務所設立以来、オーブルデザインは針葉樹が好きなのである。但し針葉樹は丁寧に使わないと痛むことが特徴なのでおいそれとは勧めることができない。

木目がはっきりとする杉材。
板はぎのためごく普通の汎用の杉板材を使っている。

無塗装の杉の木目が素敵な天板である。天板の裏にはボルトが通されていて、板はぎの隙間ができる限り抑えられるように細工してある。

引っ張りボルトで5枚の杉板を貫通している。
延長テーブルを設置して間口3345mmとしたところ。サブの天板の寸法も吟味され、一人が確実にゆったりと足が動かせる寸法となる。この状態で8人掛けとなる。

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