
今日から実質業務開始となる。お盆中は予想外のことでスケジュール変更となり県外の病院に数日伺っていた。その時の病室の窓越しからみたその建物の窓写真である。建物は6階建てではあるが、2階から上の窓には網戸があり、その網戸が万一サッシ枠から外れた時のために落下防止用ワイヤーのフックが全箇所取り付いていた。

通常は網戸はサッシ枠から外れにくいような構造になっているが、これは想定された条件である台風などの時である。つまりその想定した条件を外れた時の万一の安全対策としてこのワイヤーが全てについているのである。
このようなビル建築で網戸があるのは大変稀な仕様。まず網戸があればそれは外観上のデザインがよくないので避けられるし、機能上空調だけでよいので窓開けしない。しかし病院では病室の窓が開けられるか開けられないかは、入院患者の感情的には大きな違い与える。開けると気持ち良く感じる人には必須だし、季節にはよるが、空気を一気に取替える効果も絶大。よって開けた時に衛生上容易に虫が入ってこないように網戸が必須なのである。このところは一般のビル建築とは違う。そして網戸がある以上メンテナンスは必要であるため(網戸が破れること)、取り外しもできるようになっている。取り外しできるという事は、予期せぬことで外れることもあるのでその時のためにワイヤーがついているということ。このような思考は安全性のために大変重要な考え方。住宅でも時折網戸脱落を耳にするが、一戸建て住宅では敷地内落下になり被害はほぼない。
更に窓上に目を向けると窓上に不思議なパイプがある。

これは万一外壁の一次防水が切れてALCの外壁内部に水が浸入した時の水抜きパイプである。本来このようなALCの外装ではシーリングを確実にすることで防水性が担保されているが、何らかの理由でメンテナンスサイクル前にシーリングが切れたりしたときに、水が内部に侵入し、それがサッシ上の水平になっているところでダムとなりサッシつばを超えて内部に水が浸入しないように、水抜きパイプが差し込んである。この外壁の構造はこちらの設計図を見たことがないので確定できないが、ALCは下の写真のように穴が開いておりまるで通気工法のようになっていると思われる。ALC+シーリングで完全防水されてはいるが、万一の時に通常はこの縦通路で水は一番下部で排出されるのであるが、窓上だけは水が溜まるので水抜きパイプがある。このように万一の想定をして設計されており、やはり緊急時の避難施設となる無難な思考の建築であると思わせる。

一方木造住宅ではパイプでなく下の写真のようにスリットが一般的である。

この違いはビル建築が地上から数十メートルに達し、そこの風速が住宅のような地上10m足らずの風速より著しく大きくなり、この風速での暴風雨のALC外壁内侵入を一次防水であるALC面でのブロックを優先しているので、スリットではなくパイプ穴になる。

もし一戸建て住宅でも暴風雨が強い海沿いの家では(拙宅)窓上は全て隙間を塞ぎ一次防水を確実に行った上でさら二次防水となる通気層と防水シートを設けている。今後は今回の建築を参考にして水抜きパイプを設けたい。このように環境条件を想定した無難な思考で常に「緑の家」は設計されている。