建築は経験より歴史から学ぶ事・・・
これはよく言われることわざ「賢者は歴史に学び愚者は経験に学ぶ」でもあります。
このブログでも再三申し上げているとおり、
「軒の出の無い屋根はリスクが高い」
と申し上げておりますが、
最近は行きすぎた流行の省エネの方向の思考により、過去の歴史を活かさない施工や計画がこの屋根以外でも見受けられます。
30年ほど前のこと、大工さんと話しているときに「今までそんなことはしたことがない」
といわれて、高断熱高気密施工を拒否する大工さんが殆どでした。そこで普通の職人さんは経験則で物事の判断をする事を知りました。これは慎重になるというよい面もありますが、新しい事は理屈がどうであれ受け付けないという悪い面もあります。
逆に机上の仕事する人は、慎重さが薄くなる(というより思い浮かばない)事があるようで、特に自身で責任を取らない企業の設計者さんは、最初だけよければその後はどうでも良いとの傾向が強いです。
最近目についたのは、
「通気層の熱を室内で再利用する仕組み」
なんてものが?と思います。これを歴史から学べば・・・
30年以上前に壁体内に積極的に室内空気を送り、熱のロスを防ぐ工法や、同じく30年前に通気層内から第三種換気システムの新鮮空気を取り入れ、熱ロスや予熱する考えがありましたが、今は「長期的に見ると不衛生だから新鮮空気は通気層内から取り入れない」との結論に達しております。
つまり・・・歴史が新鮮空気は清潔が維持できるところ(メンテナンスできる所)から取り入れることと教えているのです。
ですが最近は行きすぎた省エネでそこが見えなくなってしまっている考えが多くなっております。特にメンテナンスという最も大事な部分が抜け落ちてしまっている・・・。住人が行うメンテナンスの基本は常に見えるか、目視出来るところである・・・ということです。
科学的な知見は最も重要ですが、住宅のような長期間使用し且つ人生の1/3を過ごす場所では、それ以外に過去の歴史(文化も含め)をしっかり認識する事も必要です。
私は幸運にも「て・こあ」という築100年の建物に出会ってから、「建築は経験より歴史から学ぶ事」・・・この言葉の重みを改めて知る事になりました。その事では「て・こあ」の管理者さんにとても感謝しております。