堺市における行政の中間検査は、通常では行政が実施しない構造の確認がされる。
普通小規模の木造住宅であれば構造のチェックは設計者に一任され、行政はまったく関与しない。
ところが堺市における中間検査は、耐力壁の根拠の図面や計算書などを求められる。つまり実質の構造確認がされるようなことになる。更に梁や柱の接合金物位置と新潟県内の建設会社で着工前にこのような図面を作成することはなく、殆どが外注先が作成しているプレカット図に頼ることになる。その点、緑の家なら建設会社さんと契約前にこれらすべての書類がそろっていることになる。これが世の中当たり前の設計スキームなのだが住宅は施工の契約をして初めてこの図面が提示されることが普通・・・。
近年は他県で緑の家の設計や工事監理の仕事が多くなってきており、新潟県独自の解釈や少々簡略的な基準にどっぷりつかることなく、設計の仕事ができることはよいことである。
さて肝心の工事監理であるが、堺市の堺市の家の地区条件は「準防火地域」であるため、防火構造にする必要がある。そこで今回はモイスの外貼りによる防火構造として外壁に木を貼る計画。モイスは以前2棟で使用したことがあり、その時にそのデリケートな材質(合板に比べ粘りがないので割れが発生しやすい)のためその後使用していなかった。今回は内装もモイスであることと、価格面で安価になることで採用することにした。
モイスは大壁構造であると3.8倍の壁倍率となる。この時の釘ピッチは@75㎜でめり込み許容範囲は1㎜未満と大変シビア。
緑の家は筋かいと合板を使った耐力壁が多いが、これは施工が簡単で工事監理に行っても間違い指摘が少ないから・・・。これを話すと多くの関係者が不思議がるが実際そうなのだ。
筋かいは釘の本数が少なく(1P全部で45本程度)しかもすべてビスなので一本一本を確実に打つ。合板は1Pが66から75本にもなり且つ釘なので、いわゆる釘鉄砲撃ちが普通。この鉄砲撃ちが曲者で打ち込み過ぎや位置がバラバラになって知らずうちに規定を満たさないことになる。
この時耐力壁の素材が合板なら多少の打ち損じでもよいのだが、モイスの場合は粘りがないのでヒビや割れが簡単に発生する。工事監理が甘いとここを見逃すことになる。
実際に過去にあった写真を下に置く。
これが合板なら割れなかったはず・・・。
またモイスはめり込み許容が1㎜未満なのでこれも厳しい。釘の鉄砲を使った人ならわかるが、下地の素材が変わるとめり込み量が変わる。米松、米ツガは固いので空気圧を上げないと入らない。一方スプルースやホワイトウッド、杉は柔らかいところがあるのでめり込みやすい。だから加減して打ち込んでから手で打つことになる。最近の現場ではこの手で打つ=ゲンノウを使って打つ音が聞かれないぐらい使う機会が減っているのだ。耐力壁が合板である師匠のツバイフォー工法では、日本の軸組工法と違い、合板の下地が統一されていることが多い。一方軸組工法では、柱は杉で間柱が赤松、土台が米栂、ヒノキで梁が米松、赤松と全ての樹種が違う。めり込み量も変わるのである。
このように現場を正しく見ないとそれが本当にそれが簡単な施工方法であるといえない。