先日、長岡の家が上棟した。
耐雪2.5mで耐震等級3の極めて強い耐震性を確保するため、3階や小屋裏もないのに2階の桁上に厚さ28mmの合板を敷き込む。この時注意する事が湿気の処理である。
私達の世代で古くから(30年以上前)高気密高断熱住宅を建築してきた人は、気密シートとタイベックが何故必要なのかをしっかり勉強してきている。これらは全て湿気の処理であり、湿気の流れを常に頭に描きシミュレーションしている。
そのため、このような桁上合板を貼るときにも気密シートの施工位置で合板にわざわざ穴をあけることになる。
気密シートは本来湿気を遮断するが、気密シートを留めつけるときに使うタッカー(大型ホチキスのようなもの)や、配線、釘貫通部分からわずかに湿気が通過する。一方厚さ28mmもある合板は釘のみでしっかり保持されているために、このような貫通穴はほぼ無い。気密シートの透湿抵抗が合板の数倍有ったとしても、このような貫通穴が沢山あれば、28mmもある合板の透湿抵抗が上回る事がある。そうなると最も怖い内部結露が起こり、断熱材内部でカビが生え、最終的には木を腐らせてしまう。つまり机上では良質な気密シート(住宅用プラスチック系防湿フイルムB種)は透湿抵抗は0.144(m2・s・Pa/ng)で、合板28mmは0.025(m2・s・Pa/ng)で6倍抵抗が高い。しかし実際の現場を見れば気密シートには沢山の穴があけられてしまうことがわかる。穴の面積比が1/1000であったとしても、穴は透湿抵抗がかぎりなくなくなり、セルロースファイバーの透湿抵抗0.00035(m2・s・Pa/ng)だけになると考え、その面積抵抗比率で考えると施工穴の空いた気密シートは2/3程度まで透湿抵抗は落ち6倍が4倍程度に縮まる。ここで仮に施工にミスがあると(貫通穴の処理)透湿抵抗が逆転することになる。そのため、仮に施工ミスが起っても事故にいたらない設計が「緑の家」の考え方である。この考え方はクロス通気工法や土台の樹種がヒノキ、窓の庇、軒裏換気の比率なども同じく当事務所設計の基本的考え方となっている。
このため桁上合板には構造上支障が起きない程度の穴径で4個/m2以上が設けられ、このような状態になるのである。無論、気密シートの位置がこの合板上の場合はこの穴は必要無い。このように湿気を常に考え気密シートの位置によって変えなければ湿気による障害の確率が高くなる。
建物の物理的長寿命化は雨漏りを防ぐ事と湿気の早期拡散排除にある。ここであえて物理的と断わったのは、建物は住まい手から愛されないと物理的に全く問題なくとも簡単に破棄されるから。それは世界的有名な建築家が設計した建物でも同じといえる。
このブログで紹介している日経ホームビルダーさんの記事では、雨漏りや湿気の記事がとても多い。これは建物の蝕む多く理由がこの2つであるし、特に湿気のコントロールは近年の意識しない高気密化によって複雑になっている。
最後に・・・無事に棟が上がった事でホット一息、頂いたビールで乾杯でもしよう。