先日、2009年に竣工し床下のスラブ内にヒーターを敷設した床下暖房の「緑の家」に10年目メンテナンスをかねてトップライトの不具合の確認ために伺ってきた。
新築を検討するときに過去の家(10年経過)を見ることが一番の新築勉強となる。この事は建築業者でもユーザーでも同じ。
お伺いした「緑の家」は床下エアコン暖房でなく床下のスラブの大部分にヒーターを埋め込んで深夜電力を使って床下暖房をするシステム。これは当時(2009年)建て主さんの希望で取り入れた暖房方式であり、次の年(2010年)に「緑の家」では床下エアコン暖房が標準化されているので最後のスラブヒーターによる床下暖房である。
スラブヒーターはシーズヒータ方式による床下暖房であるため、床下内は空気加圧する事が出来ない。従って床のスリットはこのような格子で大きな面積として上昇気流を促進するようにしており、エアコンによる床下暖房とは正反対の吹き出し口である。
その吹き出し口をアップで見ると、
このように蜘蛛の巣があるのが見える。断っておくがオーナーさんは掃除好きで床下のこの部分以外はとても綺麗である。
普通に考えれば当たり前の光景で、10年すれば床下内はそれ相応に汚れるのは考えればわかるはず(考えなくとも経験でわかるかも)。このような事を目の当たりしているのでこの床下内に新鮮空気を入れ、家中の空気の最初の取り入れ口とする換気方法には賛同は出来ない。そんなことをこの光景をみて換気のことを思い出した。
それは数日前に電話で問い合わせがあり。床下内を使って新鮮空気のチャンバー空間として各部屋に新鮮空気をおくる有名な換気方式に対し意見を求められた。
以前もブログ内で説明しているが、新鮮空気は人にいる場所にダイレクトに入るのが正論。例えばトイレ・洗濯室に新鮮空気を最初にいれ、その空気をリビングに送ってから外に排気しますか?・・・しないはず。綺麗な空気は居住空間に最初にいれるのは換気の原則。
とはいってもそれでも床下内に空気を入れたい、または床下内の空気を使いたいと思うだろう。その時にどうするか。そう、「緑の家」は床下内に簡単に人が入れる高さ1mが最低の基準があり当然照明もついているので明るい・・・。つまり床下内を常に綺麗にできる。これは床下内空気を使う最低条件である。
仮にそのような条件であっても新鮮空気は居室にダイレクトに入れる。
特に近年の論文でも、2階建て家は1階居室より2階の居室がRH(相対湿度)が高くなることが報告された。それが原因で2階の窓の結露も起こりやすい。これは・・・普通の高気密住宅で仮にC値が0.6cm2/m2位の家があるとしよう。すると30坪の家には60cm2の隙間が家中に分散しており、内外の温度差がある冬期では1階部分の隙間から外気が入り、2階部分から排出する一定の漏気がある。このため2階の方が数パーセントRH(相対湿度)が高くなる・・・事を明らかにした論文だった。この事からも2階居室に新鮮空気を多めに入れた方が2階のRH(相対湿度)が下がることは自明。
「緑の家」では新鮮空気の2/3以上は2階の居室に入れる設計方針。論文が発表される前から利にかなっている換気方式だと自負できるし、床下は10年という歳月で汚れるから床下内掃除は必須なのである